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仮面ライダーS/L 41話

Tale41:引き裂かれたWorld

・CR。エボルトを撃破したことと、これから破れた世界に行く必要があることを衛生省に報告する。ついでに
「回復の雨!!」
セル・カーチゴルフの力を使って雷王院が自身や将碁達の負傷を治療する。
「……こんなことまで出来るんだな」
「お前は頭がいいがいまいち固いところがあるからな」
「うるさい」
「何であれ君達が仲直りしてくれてよかったよ」
椎名がお茶を飲みながら言う。ちなみに椎名や瑠璃、利徳と春奈を元の人間に戻すことは出来なかった。
「改めて現状を説明するよ。この前のクイーンバグスターの件で日本だけにとどまらず世界人口の1割程度はバグスターにされた。しかも何故か現時点でも増え続けているって報告まで来ている」
「バグスターウィルスって他人に感染するものだったけか?」
「いや、バグスターウィルスとはバグスター怪人が肉体と共に誕生するための卵のようなもの。1つのバグスターウィルスから複数のバグスター怪人が誕生することはない。上級バグスターなら不特定多数の人間にバグスターウィルスを感染させる事も出来るみたいだけどね」
「……ってことはパペットの仕業って事か」
「可能性は考えられるよ。将碁によってパラドとグラファイトが、武君によってアイギスが、二人によってカイトが、雷王院君によってキングとクイーンが倒された今残った上級バグスターはパペットのみ。パペットは戦闘向けのバグスターじゃない事もあって恐らくかなり心細い状況だろう。春奈ちゃんのような存在を大量に生み出していてもおかしくはない」
「……見つけ次第始末しないとな」
「既に仮面ライダークロニクルを用いた武装警官隊が捜索中だよ。電子変換での移動が面倒だけどそう長い間逃亡は出来ないと思うから僕達はさっき君達が言ったように破れた世界とやらに行くことを優先しよう。……で、破れた世界って何?」
椎名が尋ねると将碁と武は雷王院を見た。
「俺が会った奴に依れば地球の歴史が旧世界から新世界に変わる際に、なんでも地球そのものの準備が出来ていない状態で無理矢理実施されたせいで出来た旧世界のバックアップみたいな世界らしい。宇宙連合が封印していると思われていたパンドラボックスもその破れた世界の中に保存されていたらしいな」
「桐生戦兎って人がその場所を知っていたみたいだね」
「ああ。あいつは旧世界で生存した仮面ライダーだが旧世界から新世界に変わった際には俺とは別行動をとっていた。その時に破れた世界の事を知ったのかもしれない。そのことを黙っていたのもパンドラボックスの現在地を誰にも知られたくなかったんだろうな。誰でも知りえる場所じゃないからエボルトの力の源を隠すにはちょうどいい場所だったんだ」
雷王院が将碁をにらむ。
「……仕方ないだろ、あの時は馨さんを生き返らせたくて仕方がなかった。その気持ちでいっぱいになったら何故かあの世界への入り口を開くことが出来たんだ」
「……旧世界で死んだ人間ももしかしたら破れた世界には保存されているのかもしれない。お前達はそっち側で保存されている自分の存在と無意識で繋がっていてそれでエキサイトフォームの、世界中とシンクロする力がうまくリンクした結果破れた世界にアクセスできた……と仮定できなくもないな」
「……待て。って事はもしかして破れた世界には馨さんも、旧世界の馨さんもいる可能性があるのか!?」
「分からない。けどその仮説を信じてしまうと非常によろしくない仮説も生まれる」
「……どういうことだ?」
武が首をかしげると椎名がため息をつき、
「……そちら側に旧世界の全人類が保存されているとしたら新世界にいる僕達はコピーに過ぎないと言うことになってしまう。そして直接旧世界から新世界にわたってきた雷王院君や桐生戦兎は旧世界にコピー元が存在しないため仮に旧世界のバックアップを発動させるとどうなるか分からない」
「……待てよ。旧世界から直接新世界にわたってきたらって事は黎斗社長は……?」
「……恐らく完全に消滅しただろうな。そして、破れた世界に保存されている方が本物だとすればその保存されている方を削除された場合……」
「……お前と桐生戦兎以外全員が消滅する……!?」
導き出した結論に沈黙が呼ばれる。
「でも、いったい誰がそんなことをするんだよ。エボルトですらやろうとしなかったんだぞ?」
「そりゃエボルトはそんなものに頼らなくても自力で星々を銀河ごと消し飛ばせるからな。わざわざ別の世界に行ってまで地球人だけを絶滅させたりはしない。だが、誰がやるか分からないからこそその可能性は最優先で対策をした方がいいだろう」
「……話ぶった切って悪いけど桐生戦兎はどうして俺達を破れた世界に連れて行きたいんだろうな?」
「……俺にも分からない。パンドラボックス絡みだと思うが……」
「……行ってみればわかる、か」
で、視線は再び椎名に集まる。
「桐生戦兎はいつ破れた世界に行きたいって?」
「早い方がいいと」
「……情報の整理が必要だね。出発は明日でもいいかな?」
「いいけど椎名は残っていた方がいいんじゃないのか?」
「あら、僕戦力外?」
「もし破れた世界に行っている間に何かあった時のために誰か残ってた方がいいんじゃない?破れた世界には俺達3人だけでいいよ」
将碁の提案に誰も否定しない。
「……分かったよ。確かに上級バグスター相手だと警官隊だけじゃ倒しきれないかもしれないしね」
「悪い」
「いいよ。じゃあ3人は今日はもうゆっくり休んでよね。明日は昼前には破れた世界に行ってもらおうと思うから」
「朝飯後ってところか」
「まあ、晩飯後だと縁起が悪いかもな」
「……」
それからCRの食堂で全員で食事をしてからそれぞれ帰路に就いた。


・それは手足の感覚がない虚無の世界。暗闇なくせに景色だけは鮮明に見える。ならばこれは夢だろう。右と左とで同じに見えるが微妙に違うと感じる景色が見える。不可思議で違和感しかない、しかしどこか懐かしいと思える危機感。幻夢に過ぎないくせに胸騒ぎが止まらない。これがノスタルジックだろうか。
「……二つの世界がある。どちらを選ぶ?」
声がする。聞いたことがあるようなないような人物の声だ。誰のものかは思い出せない。しかし、確実に聞いたことがある声。
「未来と過去って意味にとらえてもいい。その判断は正しいとも間違いとも等価値だ。この選択肢自体別に選ばなくてもいい。忘れても構わない選択肢、忘れてもおかしくない世界。しかし選ぶなら片方だけしか選べない酷な二者択一。君の全てが試されているんだ」
無駄に荘厳でしかし恐らく中身などない選択肢。
「……!?」
だが、そこでノイズが入った。眠ったまま別の夢を見始めた時のような、奇天烈な感覚。
「で、あなたはどちらを選ぶのかな?」
声が変わった。先程のそれと同じで正しい判断は出来ない。だが、別人の……それも少女の声のように聞こえる。それもどことなく挑戦的と言うか全てを悲劇か喜劇にしたくて仕方がないような壮大な暇人の感傷。
「……ん、」
気付けば二つの景色は消え、何かの個室にいる感覚になった。
あるはずがない重力の慣性を丹田のあたりに感じる。一番身近な感覚に例えるならエレベータに乗っている時のような感じだ。それも東京タワーやスカイツリーみたいな超高層を超高速で移動する時のような焦燥感。
「どこで降りるかは好きに決めればいいよ。僕はどこでもいいからさ」
全てを知りながら全てを試し、しかし何も導かない。そんな身勝手極まりない異質な少女の声。そんな声に逆らうようにしかし誘われるように降りるボタンに手を伸ばした。


・駅前の喫茶店。そこに将碁、武、雷王院はやってきた。既に椎名には報告済みで朝飯も食ってきた。
「お、来たな」
戦兎が調理場でコーヒーを淹れていた。
「……この場所、どこかで覚えがある」
将碁と武が激しいデジャブ由来のめまいを感じる。
「虚憶を感じてるな。まあ、ここは旧世界でそうとは知らずに俺達がよく屯していたエボルトのアジトだった場所だからな」
「え!?」
二人が戦兎と雷王院を見る。
「……そうだ。正確に言えばエボルトが地球で行動するために寄生していた人物が開いていた喫茶店でな。戦兎を中心にいろんな人物がここを訪れてはスマッシュ達と戦っていた。まだエボルトなんて名前も言葉も知らないある意味平和だった時代の象徴だ」
雷王院が追憶を孕んだ目で受け取ったコーヒーを飲む。
「……あの頃と全然味が違うな」
「地球人の舌に合ったコーヒーにしたからな」
戦兎から渡されたコーヒーを将碁と武も受け取る。口に含む寸前に何か激しい拒絶反応があった気がしたが刹那未満だった。
「……おいしい」
「すごい……。この店でこの感想を口にすることに全身の細胞が拒絶反応を示して仕方がない」
「世界を超えても細胞が覚えているのかあの味は」
戦兎が苦笑する。
「それで戦兎。俺達を破れた世界に案内して何をするつもりなんだ?そもそもお前はどうして破れた世界を知っていた?」
「お前が察している通りだよ。旧世界から新世界に移る際に俺は地球の管理者を名乗る奴に呼ばれてあの世界に行った。お前達が倒したエボルトから奪ったパンドラボックスをもってな」
「……え!?って事はあんた、パンドラボックスが宇宙連合が持っているんじゃなくて破れた世界にあったことを知っていたのか!?」
「……知っていた。檀黎斗もそして宇宙連合も」
「……」
雷王院がテーブルを殴った。
「……お前完全に見捨てられていたんだな」
「逆に言えば唯一そのことを知らなかったからこそ新世界のライダーたちに余計な情報を与えないでくれた。それに、言い訳になるかもしれないが破れた世界で俺はお前だけは新世界に行っても戦いから離れていてほしいと思った。だからパンドラボックスを地球の管理者に渡したんだ。宇宙連合も破れた世界の事は知っていた。知っていてもあそこは地球人にしか開くことが出来ない。だから問題ないと思ったんだろう。……とは言えエボルトにも知られていたから結局あまり意味はなかったんだがな」
「……だからエボルトは馨さんを利用して俺に破れた世界への扉を開けさせてパンドラボックスを再び手に入れたのか」
「……よくわかんないけど全部エボルトの手の上で踊っていたって事なのか」
「檀黎斗が全人類をバグスターにしたがっていたのもそれが一因だ。バグスターになってしまえば旧世界に保存されていた人間としてのデータとリンクが切断される。だからそれを利用して破れた世界を開くこともなくなる」
「……って事は俺はもうバグスターだから破れた世界を開けない。最初から将碁だけを狙って行動していたのか」
「……だけじゃない。俺の肉体を乗っ取って真っ先に檀黎斗を抹殺したのも将碁をバグスターにしないようにしていたんだろう。種が明かされれば明かされるほど気に食わない脚本だったわけだ」
雷王院と将碁が同時にコーヒーを飲み干す。
「で、話を戻すが俺はまた破れた世界に呼ばれたんだ。お前達を連れて来いってな」
「俺達を?」
戦兎に視線が集まる。
「理由は俺にも分からない。あいつがお前達に害意を持つとも思えないが一応警戒はしておいた方がいいだろう」
「まあ、警告されたのにも関わらずパンドラボックスをエボルトに渡しちまったわけだからな。謝礼くらいは用意してある」
雷王院が菓子折りの入った手提げ袋を見せた。
「……流石にそんなものはいらないと思うが」
それから戦兎が店を一時閉店してから破れた世界へと案内する。
方法としてはあらかじめ出入り口用のフルボトルを渡されていたらしく、それを起動させることで一時的に空間に歪みを起こしてそこから破れた世界に向かうことになった。
「逆にお前は前に破れた世界に行った時、どうやってたわけ?」
「さあな。気付いたら管理者の前に立っていた。向こうから俺を呼び寄せたんだろう」
武からの質問に雷王院が答える。方角も方向も重力も空気も何もない無の空間を歩く4人。やがて、旧世界の景色が見える領域にまで到達する。
「来たか」
そこに管理者がいた。
「高そうなソファだな」
「気に入ったんだ」
戦兎からのジョークに管理者は答える。
「よく来てくれたな、仮面ライダー達。改めて名乗ろう。地球の管理者だ」
「地球の管理者って普通の人間にしか見えないけど?」
「まあな。それぞれの惑星の管理者……ザ・プラネットの姿をもとにそれぞれの惑星人は作られた。だからザ・プラネットが普通の人間にしか見えないのは当たり前だな」
「……ザ・プラネット?」
「そのままの意味だよ。まあ、本題とは別だから後にしてくれ」
「……俺達を呼んだ理由とは?」
これ、つまらないものですが。と言うお決まりの言葉を言い忘れたと菓子折りを渡してから内心残念がる雷王院。
「ああ。1つ決めてもらいたいことがあるんだ」
「それは?」
「どの世界を選ぶかだ。以前にも言ったがおさらいしよう。まず今の世界は新世界と呼ばれているものだ。エボルトによって歪められ壊滅状態になった旧世界から宇宙連合によって新たに作り出された新世界。しかしそれも檀黎斗とかエボルトとかによってだいぶ歪められてしまった。それに前に言ったようにこっちの許可なしに宇宙連合によって無理矢理作られた世界でもある。依ってこっちゃそろそろ地球の管理者としての力を使って正真正銘新しい地球の世界を作ろうと思っている。それに伴い、旧世界を第一世界、新世界を第二世界。そして今度作ろうとしている世界を第三世界と呼称する」
「……」
4人が集中して話を聞く。
「本来地球には存在しないバグスターと言う種族がいるこの第二世界はあまりよろしくない。だが、それでもお前達が守り抜いた世界だからな。だからそれもあって聞きたいんだ。第三世界を新たに作り、それに世界を塗り替えるか。それとも第二世界のまま生きていくか、或いは第一世界に戻すか」
「それを、俺達に……?」
「そう。お前達の間で相談するのは構わない。だが、他の誰かに相談するのはやめてほしい。これは救世主特権と称した気まぐれのようなものだ。お前達に決められないのならこっちゃ地球の管理者として第三世界を作って明日からでもそれに書き換えようと思う。その場合お前達の記憶もリセットされる。そこらへん含めてお前達に世界の取捨選択の自由を与えてみようと思ってな」
「……」
規模。それが故に4人は黙った。それはある意味エボルトの出現をも超える重大な情報だった。そしてそれを自分達で選べると言うのはエボルトとの死闘以上に苦悩しても仕方がない状況だ。
「……質問をしても?」
「何なりと」
「旧世界に戻したとしよう。エボルトや宇宙連合はどうなる?」
「いろんな意味で知ったことがないってのが本望だな。少なくともエボルトはこの前お前達に葬られて完全に消滅した。旧世界に戻したとしてもその存在は消えたままだ。宇宙連合に関しては、エボルトが絡まないのであれば地球がどうなろうと知った事ではないだろうから一切の干渉はないだろう。あったとしてもこちらがさせない。だから気にしなくていい。ついでに言うと第二世界で死んだ奴も第一世界で死んだ奴も全員生き返る。それでいてスマッシュもバグスターも仮面ライダーもいない世界になる。全ての過去を帳消しにして日常に戻るって言うのが第一世界と第三世界を選ぶ意味だな」
「その二つに違いはあるのか?」
「第一世界を選ぶなら当時の人間関係は消えない。ただスマッシュもバグスターも仮面ライダーもエボルトもいない世界だ。対して第三世界は本当に最初から地球の歴史をやり直す。たとえ記憶がなくともお前達がまた出会えるかどうかは運命次第だな」
「……」
4人は顔を見合わせた。
「……第二世界を選べばどうなる?バグスターが残るのは大変とか言ってなかったか?」
「ああ。けど折り合いはつけられる。本当に大変なのはお前達人類って事になるな。お互いが我慢して、しかしこれまでの全てを引き継げるのが第二世界を選ぶ意味だ」
「……第一世界を選んだとして、バグスターは誕生し得るんじゃないのか?」
「そうだな。バグスターは偶然と人間の科学によって誕生した新たなる生命だ。第三世界を選んだとしてももしかしたらまた生まれる可能性はある。とは言え、飽くまでも0じゃないってだけの話だがな。バグスターが第二世界で誕生したのは第一世界の記憶を引き継いでいた檀黎斗達科学者がいたからってのが大きい。もちろんかなりの偶然を孕んでいる。今回新たに第一世界を選びなおしたとすればそのあたりの記憶もなくなるから可能性と言うのはもっと低くなる」
「……もし、それでバグスターが誕生したらどうなるんだ?仮面ライダーもいないんじゃ退治できないんじゃないのか?」
「その時はその時だ。バグスターと言う種族を消そうが遺そうが構わないのと同じように地球からしたら人類と言う種族が消えようが生きていようが構わない。バグスターが誕生したうえで人類が淘汰されたとしても、再び人類が力を手に入れてバグスターを淘汰したとしてもそんなものは地球上の長い歴史の中で無数にあった生存戦争の一部に過ぎない。どうしてもそれが嫌で後の歴史の全てを人類が仮面ライダーと言う力を以て制御したいって言うのなら第二世界を選べばいい」
「……お前に欲望はないのか?」
「ないね。ザ・プラネットは自分の星を管理していればそれでいい。ただ、他の星の影響を受けてくれなければな。今回3つの世界って選択肢を作る必要があったのはエボルトや宇宙連合って言う他の星の連中が関係してきたからこっちが動く羽目になったんだ。仮にバグスターだけで済んだ話ならどんな結果になっても動くことはなかった。お前達人間には酷な話かもしれないが、星の歴史って長いスパンで物事を見なくちゃいけなくなると、そう言う視点も必要なんだ」
「……」
再び4人は押し黙る。管理者の言っている事を納得したわけではない。だが理解は出来た。だからこそ苦悩する必要があるのだ。何故ならここで自分達が決めるしかない。自分達が選択しなけれな第三世界が選ばれてこれまでの軌跡がすべて失われてしまう。それだけは避けたいルートだった。
「……俺は第二世界を選びたい」
雷王院が挙手して発言。
「記憶もリセットされるとはいえそうそう、歴史をやり直すなんて起こっていいとは思えない。宇宙連合やパペットみたいに解決していない事も多々あるが今の俺達なら難なく乗り越えていけるはずだ」
対して武が挙手。
「俺は第三世界かな。少なくとも俺はバグスターから人間に戻りたい。戻れないのならせめて消えたい。全く新しい世界になれば人間も少しは賢くなると思う。もう二度と力に飲み込まれたりはしないと願いたい」
「……俺は第一世界だ」
将碁が口を開く。
「旧世界の事は覚えていない。けどそもそもこんなことになった全ての原因が取り除かれた状態でまた違った道を生きてみたいと思う。仮面ライダーにならずにしかしまた俺達3人が一緒に過ごす歴史って言うのがあるんじゃないかなって」
「……おじさんが生き返るからか?」
「そう言うお前はもうお前の両親が生き返らないからか?」
将碁と雷王院が視線を合わせた。
「そう言う生き返りとかあまりよくないんじゃないかな?全部やり直したほうがいいって」
武が間に入る。
「お、おいおい。お前達ここでも喧嘩かよ?」
戦兎が間に入ろうとするが3人に制止される。
「これまで何度もぶつかってきた」
「無意味だとは言わない。けど回避できたならした方がいい争いもあったかもしれない」
「……すべてを無駄にはしたくない」
「「「だからこそここで一度決着をつけるべきなんだ」」」
3人が同時に発言すると、景色が変わった。
「……ここは……」
3人は3人とも自宅の自室にいた。世界がリセットされたのかと思ったがしかし記憶もベルトもある。
「……決着をつけるための準備をさせてくれるって事か」
3人はそれぞれ自分の考えに基づいて動くことにした。
「……何の真似だ?」
他に誰もいなくなった破れた世界で管理者がソファに座りながら不機嫌そうに言葉を吐く。いつの間にか同じ空間の中に少女がいた。
「あれ?興味ない?進化の終わりが正しいのか終わりに向かう進化が正しいのか、それともどれでもないリセットが正しいのか」
「……3人がそれぞれ違った選択肢を選んだのもお前の差し金だな?」
「お前だなんて。女の子相手にそんな口を利くあなただったかな?」
「……」
「調停者を気取るつもりなんてないよ。けど、たまには判断を委ねてみない?」
「……どれだけ姿形が似ていても中身はまるで違うものだ」
「そりゃそうだよ。あなたが選んだわけじゃないんだもの。ある意味僕とあなたも選択肢を違えたからこそ今の僕達がある。今度は3人。どうなるかな?」
「……」
気配が消える。そして管理者はしばらくの間沈黙することにした。