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仮面ライダーS/L 42話

Tale42:天を貫くJudgement

・CR。将碁達から申し出を受けた椎名が思わずコーヒーを吹いた。
「はぁ!?この期に及んで君達が戦う!?しかも勝ったものの願いによって世界の行く末が変わる!?」
「そうだ」
3人は距離を取っていた。それは雷王院とだけでない。将碁と武もまた距離を取っていた。
「ちょっと待ってくださいよ!?それゲームの話じゃないですよね……?」
「そうだ」
「ど、どうしてこの期に及んで将碁さん達が仮面ライダー同士で本気の戦いをしなくちゃいけないんですか!?しかも、明確なルールの上での勝負じゃないんですよね……!?」
「そうなるな。どうせ俺が勝てばみんな生き返る」
「俺が勝ってもそうなる」
利徳からの質問に将碁と武が返答する。
「……俺がいる限り死者は出さない」
「……殺さずに俺達を止められるとでも?」
「止めてやるとも」
視線を交差させる3人。そこに殺意はあっても敵意のようなものはない。これまでのいがみ合いのように相手の全てを否定するようなイメージはない。しかしそれが故に利徳の目には不気味に映っていた。
「……それを僕が認めるとでも思うのかい?」
対して椎名は立ち上がった。利徳が一歩下がる。3人からは感じられない、存在そのものの絶対否定とも言うべき怒気を椎名から感じられたからだ。
「いいかな?君達はいい加減自分達だけで何でもかんでも決めようとする癖が強すぎると思うんだよね。いつもいつでもいつまでもそれをフォローして衛生省に報告してきた中間管理職気味な僕の気持になってみたらどうなのかな?」
「……椎名、悪いけど」
将碁はエキサイトのガシャットを出して椎名に向けた。
「……本気なんだね、将碁。あの、僕が他の人の心が分からずに迷惑をかけては自分から謝ってその場を収めてくれた君が今度は僕の制止を破ってでも行動を起こしたいと。そう言うんだね?」
「……ああ」
「……仕方ないよね、それ。じゃあ僕も準備をするからもう少し……」
待ってくれと言って椎名が席を後にしようとした時だ。椎名の背後の窓ガラスを突き破ってサンダーウルフバグスターが飛来した。
「!?」
「やれ!」
将碁の声に合わせてサンダーウルフが椎名に背後から襲い掛かる。
「お、おい嘘だろ!?」
走り出す利徳。
「仮面ライダークロニクル・パラドックス!」
「変身!!」
変身した利徳がサンダーウルフの攻撃を受け止めて投げ飛ばす。そのサンダーウルフが空中で光り、2つのフルボトルの姿になってはそれぞれ将碁と武の手に渡る。
「スターライト!!」
「ガンナー!!」
振動を与えてそれぞれのフルボトルが起動する。
「「Are you Ready!?」」
「「変身!!」」
「天空の勝利者・スターライト!!イイイイエエエエエイ!!」
「大地穿ち貫け・ガンナー!!イェイ!!」
そして、将碁は仮面ライダースターライトに、武は仮面ライダーガンナーに変身した。
「インフェルノスペクター!」
「……変身!」
「メーデー!メーデー!!メーデー!!!インフェルノスタート!!!アイムアレベル100インフェルノゲーマー!」
「君達はぁぁぁっ!!」
変身したローズが両手から蔦を伸ばして二人をつかみ取ろうとする。しかしスターライトは素早く飛翔し、部屋の中を飛び回っては捕捉されない。それでいてガンナーはハンドガンによる射撃で蔦を迎撃しつつ椎名の机に置いてあったパソコンを破壊した。
「……ん、あいつは……!?」
「Are you Ready!?」
「ここだ!!」
「孤高のサンダーボルト!!ライトニング!!イイイイエェェェェェェェイッ!!!」
床下を突き破って下階からライトニングが出現し、ガンナーのハンドガンを持つ右腕を関節からがっちりと固定。
「最初のライトニングの姿だと!?馬鹿にしているのか!?」
「お前達こそどうして最強フォームじゃなくて慣れない旧世界の姿になった?その意図が分かるまでは手の内は出せんな!」
ライトニングは腕の関節を決めたままガンナーを背後にスープレックスで投げ飛ばす。
「ぐっ!」
「そこ!」
倒れたガンナーを踏みつけるようにしてスターライトが飛来。ドロップキックのようにガンナーの胸を強打。
「ぐっ!!よくやる!」
「最低でもフルボトルはすべて破壊する!」
「……そう言う事か……!」
ライトニングが走り、飛翔する寸前のスターライトの両翼を抑え込む。
「!?」
「お前達の目的は過去か未来かの違いはあれど世界のリセット。だがもしそこにフルボトルがあったらまた仮面ライダーの戦いが起こってしまうかもしれない。だから真っ先にすべてのフルボトルの破壊をもくろんだ。……そうすればフルボトルを使わないと変身できない俺を排除できるだろうしな!」
「……分かっているなら……」
「!?」
直後、スターライトの姿が消えた。
その0.01秒後にライトニングの背後に、
「破壊させてもらう!!時代の歪みの象徴を!!」
レベル3の姿になったセーブが立っていてライトニングの背中にロックシューターを叩き込む。
「ぐっ!」
横転するライトニング。それを挟むようにセーブとガンナーがそれぞれフルボトルとガシャットを複数手に持つ。
「「スターライトドラグーン!」」
「ドグマ!ガンガンリボルバー!!」
「スーパーブースト!!」
「エクシーズマッチ!!」
「ブラスタァァァアライトドラグゥゥゥゥン!!!」
「Are you Ready!?」
「レベルアップ!!胸に秘めた熱い思いはブラスターライトフリーダム!!アイムアレベル20!ブラスターライトゲーマー!!!」
「背信のロックンロール・ドグマトリガー!!イイイイェェェェェェイ!!!!」
CR作戦室を破壊しながら変身を終えた両者。その目的は今互いに変身した相手。そしてその中央に挟まったライトニングだ。
「「行くぞ!!」」
両者が動く。リボルバーがハンドガンを連射してライトニングごと前方のセーブを狙う。対してセーブはタルパナを盾にしながら加速して一気に距離を詰める。
「赤心少林拳・梅花の型!!」
衝撃に左右から挟まれたライトニングが選択したのは体術だった。右手は廻し打ちに近い形で銃弾の雨をギリギリで受け流し、左手で迫ったセーブのタルパナを掴んでは一気に回転してセーブを銃弾の雨の盾にしつつその左翼に掌底を叩き込む。
「ぐっ!」
「変わり種なら俺にもある!」
その状態でライトニングは2つのフルボトルを取り出す。
「マグマ!!ブリザード!!Are you Ready!?」
「ビルドアップ!!」
「目覚めよ爆裂凍志のツインフィニティー!!ライトニング・ツインフィニティー!!イイイイイイイイイイイイイイイイイイイエエエエェェェェイ!!!!」
「何!?」
炎と氷。2種類の相反した属性がライトニングの全身を包み込み、その背中から両属性の翼が生える。
「トリニティドライバーは別にお前達専用じゃないんだ!」
ライトニングが触れたセーブの両翼が凍り付き、そこからさらに炎のビームが発射されてリボルバーに直撃して吹っ飛ばす。
「「ぐっ!!」」
壁を突き破って吹き飛ばされたセーブとリボルバー。
「いいかお前達。世界のリセットなんて出来ていいものじゃないんだ。人間はたとえ記憶を失おうがどんな過去でも背負って生きていく生き物なんだよ」
「だ、だが、エボルトの襲来によって運命を変えられてしまったものがいる!他からの要因で運命を歪められてしまった奴はどうなるって言うんだ!」
「今回だけじゃない!他に今まで何度でも不本意に運命を歪められてしまった奴だっているかもしれない。その上の歴史かもしれない!だったら全部やり直して全部あの地球の管理者に任せてしまえばいい!人間に出来る事なんて限られているからこそ最善を尽くそうとして何が悪いんだ!?それがたとえ忘れる事であっても、今の俺達が禁忌としている事だってそんなものは人間の無知に過ぎない!」
リボルバーが立ち上がる。右手に持ったネビュラトリガーからガンガンリボルバーのガシャットを引き抜き、既にガンナーのフルボトルが刺さったエキサイトドライバーに突き刺す。そしてガンガンリボルバーのガシャットとガンナーのフルボトルのスイッチを押しながらネビュラトリガーの引き金を引く。
「まさか……!?」
「禁忌だとしても俺は構わない。人間に出来ない奇跡が待っているって言うのなら俺は人間として最大限に出来る事を尽くすだけだ!それが禁忌って名前だったとしても!!」
「ガンガンリボルバー!!ガンガンガンナー!!ネ・ビュ・ラ!!コマンドエラー!!コマンドエラー……」
「ふんっ!!」
エラーを起こしているドライバーに拳を叩き込むリボルバー。するとその手からゲムデウスバグスターウィルスがドライバーに感染する。
「バグルセット……!エラーマッチ!!「ガンガンリボルバー!!「ガンナー!!「ドグマ!!「「「ランクアップフォービドゥンエクシーズチェンジ!!!!!」」」」」」」」
「変身!!」
「ヌメロンマッチ!!フォービドゥンガンナー・システムエンド!!」
「うおおおおおおおおおおおおああああああああああああああああ!!!!」
誕生した新たなる姿。それは想像を絶するものだった。ガンナー、ドグマトリガー、エキサイトフォームの姿に変わってはそれが崩れ落ちては無理やり再生して姿を変える。そしてそれさえもまた崩壊しては絶え間なく姿が変わっていく。これはもはや仮面ライダーリボルバーでも仮面ライダーガンナーでもなかった。
「バグスターになった事でその便利を知ってしまった俺だから分かる。人間は失敗作だ。生物としてもっと上の存在があるんじゃないかと。そして人間社会で人間より上の存在が誕生してしまったが最後、もう元の社会には戻らない。だから、俺はすべてをリセットしてやる!!」
リボルバーが無常に変形し続ける両腕の銃口を向けた。
「人間も仮面ライダーもバグスターもいない世界を作るんだ!!」
引き金は引く必要がなかった。ただ、次の刹那には作戦司令室は完全に廃墟と化していた。
「……うう、」
瓦礫の中から傷だらけの椎名と利徳が姿を見せる。どちらも変身は解除されていてとても立ち上がれる状態ではなかった。
「……俺の銃撃はすべてを滅ぼすまで終わらない」
リボルバーの声が放たれたその6000メートル上空。
「くっ!!」
一発一発が核ミサイル並みの火力を持った無数の弾丸が上空を飛び回るライトニングとセーブをどこまでも追い続けていた。
「なら……!!」
セーブは両腕のタルパナ下のマシンガンを連射。それにより宙を舞う弾丸達に命中しては大爆発を発生させる。その中にちょうどライトニングも含まれるように計算したうえで。
「状況は択ばないつもりか!」
だが、ライトニングは冷気と熱気を利用して竜巻を発生させてその爆発を全く別方向へと逃がしていた。
「流石だな……!」
「お前こそその姿はレベル20。インフレのはるか彼方に置いて行かれた筈の姿。だがそこにレベル3のスピードを加えるだけでここまで応戦できるとは……」
「褒め合いはここまでだ!」
セーブが急接近。ライトニングは空中で梅花の型を再起動。両手で梅の花を包み込むように掌同士を重ね合い、水を零れぬよう掬うかの如く繊細に前に突き出すことでセーブの突進を横に受け流す。
「何!?」
「赤心少林拳だけにとどまらず日本の多くの武術の基本にして極意は防御にある!」
上空6000メートル。セーブは次々と攻撃を仕掛けるが全てライトニングの梅花の型によって受け流されていく。
「前蹴り!!」
「!?」
そして右足で放たれた一撃がセーブの下腹部に叩きつけられ、2つのガシャットに亀裂が走る。
「あ!」
「もう一度破壊させてもらうぞ!」
一時的に機能が停止したセーブにライトニングが拳を叩き込む……寸前に弾幕の第二波が届いた。
「……武術も知識も今の世界のものだ。第三世界には必要ない」
リボルバーが両腕の銃口から爆発したかのような勢いで銃撃を放つ。狙撃として構える必要はない。エキサイトガシャットの力で自動で相手の場所に向かって攻撃が飛ぶようになっている。そして1つのガシャットと2つのフルボトルの力で無理矢理高められた銃撃はもはや爆撃に等しく、その反動をゲムデウスバグスターウィルスによって即座に回復。当然全身の細胞にかなりの激痛が走っていて少しでも気を抜くと気絶してしまうだろうが、それでもやっと可能となったこの技でなら誰にも負けるつもりはなかった。
そして、
「!?」
「はあああああああああああああああああ!!!」
氷と炎の翼が砕け散りながらもライトニングが急降下してきた。無数の弾幕もどういう訳かライトニングの直前ですべて弾かれている。
「お、おいおいまさかたかが武術程度でこの弾幕全部弾いてるって言うのか!?」
「たかが武術。されど武術!人類が築き上げてきた歴史の中に確かに存在する体術の極意!それこそ簡単にリセットしてしまっていいものじゃない!!」
ついに接近を終えたライトニングによって両腕が凍結され、炎の超低空跳び蹴りがリボルバーのベルトに叩き込まれた。
「が、があああああああああああああ!!!!」
ゲムデウスバグスターウィルスの力で何とか抑え込んでいたガンガンリボルバーとエキサイトのガシャットが衝撃により爆発。ガンガンリボルバーとリンクしていたネビュラトリガーも共鳴して爆発。それすらもリボルバーの体内のゲムデウスバグスターウィルスが再生しようとするがライトニングによってバラバラになったガシャット達の残骸が凍結されてしまい修復が出来ない。
「そんな……」
「人間とは種族と言う意味じゃない!バグスターとなってしまったお前がわざわざ人間の力を借りるための姿であるエキサイトフォームになった時点で本当はお前は気付いていたはずだったんだ!バグスターは別に人間の完全上位互換と言うわけではなくそう思ってしまうお前の心だけが弱いのだと!!」
しかし、マグマとブリザードのフルボトルもベルトから剥がれ落ち、変身が解除された雷王院は素手のアッパーでリボルバーの顎を穿ち、ベルトをはぎ取り、変身が強制解除された武だけが地べたに倒れ気を失った。
「……最初の決着がついたか」
雷王院の背後に着地するセーブ。片方のガシャットが破壊されていたためレベル10の姿だった。
「そして最後の決着もつける」
セーブが加速。対して雷王院は生身の状態で梅花の型を取った。
「馬鹿なことを!!」
セーブのミサイルのような跳び蹴り。それを反射神経だけで辛うじて受け流した雷王院は素早く新たなフルボトルを取り出してドライバーを出現させる。
「そっちがそうなら!!」
「ライトニング!!バージョンティガ!!Are you Ready!?」
「変身!!」
「不死身のサンダーボルト・ライトニングスリィィィイイイイェェェェェェイ!!!」
赤い姿に変身したライトニング。しかし前方にセーブの姿はない。代わりに脱ぎ捨てられたように地面に落ちたスターライトドライバー。
「!?」
「これはやっぱりお前が持つべきじゃない」
背後から声。
「ネオスターライトドラグーン!!」
「変身」
「レッツゲーム!ムッチャゲーム!メッチャゲーム!ホワッチャネーム!?アイムア仮面ライダー!!」
振り返ればそこにはレベル50の姿になったセーブが立っていた。
「いつからスリが得意になったんだ?」
「お前との軽口もこれで最後だ!」
放たれたライトニングの拳をその鋼鉄のボディで受け止めたセーブは逆にラリアットの一撃でライトニングをぶっ飛ばす。
「ぐっ!」
「ちょっとだけ痛かったけどサンクチュアリゲーマーのタフネス舐めるなぁ!!」
よろめくライトニングにタックルを叩き込むセーブ。抑え込もうとして、しかし失敗したライトニングが再び宙を舞う。
「……やっぱりお前楽しんでるだろ!?」
「かもな。俺も人の子。最後の最後の大一番くらい楽しみたいさ!!」
「だからいいんだお前は!!」
着地したライトニングがストラーダの槍を出して襲い掛かる。
「おわっ!!」
稲光のように放たれた一撃。ストラーダの穂先は確かにセーブの鋼鉄ボディに刺さっていた。
「武具術は槍術!!そして棒術にも杖術にもなる!」
素早く持ち手を変えてライトニングはセーブの足から薙ぎ払う。
「ぐっ!!」
「一瞬ごとの状況を判断し最適な攻撃方法を3種の武術から見極めて解き放つ!!それもまた人間が築き上げてきた技術!そしてこれは残念ながら戦いの中でしか誕生し得ない!」
「だからって俺は別に全ての戦いを否定するつもりじゃない!けど、せめて俺達が歩んでしまった戦いの運命をなかったことにしていい理由にはなるはずだ!」
「それはこの戦いに参加したものこそ理由にしてはいけないものだ!」
次々と放たれるライトニングの刺突を両腕ガードによりギリギリで防いでいくセーブ。
「確かにお前が選んだ道の先ではたくさんの犠牲者が蘇るかもしれない!けど、そんなものをたとえ犠牲者でも望んでいると思うのか!?」
「それこそ当事者以外に分かってたまるか!!けど当事者はもういない!なら最善だと思った選択肢を俺達生き残った者たちが選んで行使すべきだ!!」
「オープンウィング!!」
「来るか……!!」
「胸に秘めた熱い思い!!感じるフリーダム!!アイムアレベル50サブリメノンゲーマー!!!」
鎧を翼に変えて解き放ったセーブの姿はウルトラマンレジェンドとなっていた。
「おいおい……!」
「最強の力でお前を光にしてやる!」
セーブがエネルギーを集約する。その時点で周囲の空間が歪み、触れたあらゆる物質が光へと変換されていく。
「スパークレジェンド!!」
そして構えた両腕を上下逆に構えなおした瞬間に凝縮した光が解放されて視界の全てが光に包まれていく。爆発すら発生しない全物質の光還元化現象。それを引き起こしたセーブは既に通常のレベル50Bの姿に戻っていた。
「……流石にエネルギー食うな」
「そりゃそうだ。本来二人のウルトラマンが力を合わせてやっと使える技だからな」
「!」
声。振り向けばそこにライトニングがいた。
「回避していたのか!?」
「そんな大技、初めてで使いこなせるわけがないだろ。眩しすぎるしな」
ストラーダを薙ぎ払い、セーブの背中を大きく切り裂く。
「くっ!!だったら……!!」
「っ!!」
セーブがガシャットのスイッチを再び押し、ライトニングが身構える。その時だ。
「「!!」」
二人が同時に飛びのく。次の瞬間には先程まで二人がいた場所に大穴が開いていた。
「……これは……」
「悪いが地殻を破壊させてもらった」
声と光。ゆっくりと空から降ってきたのはゼノンだった。
「ゼノン……!!」
「馬鹿な、あいつはお前が……」
「殺せたと思っていたか?しかし私にとっても嬉しい誤算があってここにまた姿を見せられたのは事実」
そう言ってゼノンが取り出したのはパンドラボックスだった。
「馬鹿な……!!」
「パンドラボックスは確かにエボルトのエネルギー源。しかし元をたどればパンドラボックスは惑星の卵と言っていい物質。ザ・プラネットが最初に生まれ落とす物体。しかし生まれ落とされても即座に惑星へと成長するためこの状態を維持することは困難。だが宇宙連合の科学力ならば問題ない話だ」
「……そのパンドラボックスでどうするつもりだ?」
「貴様たち地球人はあまりに危険すぎる。あのエボルトさえ倒してしまえるとなるともはやエボルト以上に宇宙からすれば脅威となる存在だ。よって宇宙連合は閣議によってこの星を惑星人もろともに根絶することを決定した。そして……」
ゼノンが着地すると同時、先ほど開いた大穴からクイーンバグスターが出現する。
「クイーンバグスター……馨さん!?」
「いや、よく見ろ」
ライトニングが指さす。クイーンバグスターの胴体……首の根元のあたりにエボルトが埋め込まれていた。
「エボルトが逆にクイーンバグスターに吸収されている……!?」
「これこそが地球が犯した大罪の証。地球消滅までの少ない時間、この大罪によって精々無駄な命を散らすといい。これが宇宙連合が下した最終採決だ」
そう言ってゼノンは姿を消した。同時にクイーンバグスターは咆哮をあげる。
「……この感覚……あの時と同じ……」
「まさかまた全人類をバグスターにしようというのか!?」
実際、衛生省からの報告を経由できる存在がいないために知る由もないが秒速1000人のペースで人類は再びバグスターへの強制変換が行なわれていた。
「……全人類をバグスターにしてどうしようと……」
「……そんなものはゼノンにとって目くらましにもならないさ。ゼノンの目的は地球抹殺。さっき地殻を破壊したって言っていた。つまり地球そのものの寿命が大きく縮まったって事だろう。全人類をバグスターにするとかあのエボルト付きクイーンバグスターなんてただ出現させただけに過ぎないって事だ」
「……そんな……」
俯くセーブ。
「……俺達に出来ることはない。精々破れた世界に行くことくらいだな」
「……けど、あれはどうするんだ?」
セーブがクイーンバグスターを見あげる。喉元からエボルトをぶら下げた状態でしかし咆哮を続けるクイーンバグスターの全長10キロ超えの巨体。
「……もろともリセットしてもらうしかないだろうな」
「……じゃあ……」
「ああ。こうなってしまった以上仕方がない。お前の意見に賛成して世界を旧世界に戻してもらおう」
「……くっ!」
拳を握るセーブ。そこへクイーンバグスターから生まれたキングバグスターが向かっていく。
「キングバグスター!?」
しかも気付けばそれは1体だけではない。5体ものキングバグスターがクイーンバグスターから出現してセーブ達へと向かってきた。
「5体……これまで倒された上級バグスターの数か……!」
「破れた世界に行かせてくれない気だな……!」
迫ってきたキングバグスターの攻撃を同時に受け止めるセーブとライトニング。しかしパワーの違いからすぐに追い詰められていく。が、突然受け止めていた者を含むすべてのキングバグスターが弾き飛ばされた。
「……お前達は先に行け」
正面。フォービドゥンガンナーの姿になったリボルバーが銃口を向けて立っていた。
「武……!」
「早く行け……。この姿でもそう長くはもたない……」
「……分かった!」
「無理するなよ!!」
「……俺はゲムデウスバグスターウィルスが入ってるんだぜ?」
言いながらリボルバーはふたりが去っていくのを見届けた。
「……さて、」
吐血しながらリボルバーは起き上がる5体のキングバグスターを見やる。
「……恐らく俺に遺された時間はもう少ないだろうな。けど最後くらいは格好つけさせろってんだ」
そしてリボルバーは迫りくる5体のキングバグスター向けて砲火を始めた。