仮面ライダーS/L22話
Tale22:胸に秘めたAcceleration
・西武財閥本社。
「……」
椎名達は陰鬱な表情を浮かべていた。将碁もソファに座ったまま無表情でスマホをいじっている。馨はそんな二人の間をふわふわと浮いて左右。やがてドアがノックされた。
「どうぞ」
椎名が返事をすると、利徳と雷王院が入室した。
「レベル30の願いでライトニングさんを完全復活させてきた」
「そうか。フルボトルも無事かい?」
「スクラッシュドライバーとライトニングゼリーボトルはな。利徳の願いで俺の時間を48時間前に戻してもらった」
「そうか。まあ座ってくれ」
言われて雷王院と利徳が将碁の向かいのソファに座る。
「現状をおさらいしよう」
椎名が重く告げる。
「我々は現状一番レベルの高いレベル60のガシャットを嵐山に奪われた。既にレベル60の願いは叶えてあったから今すぐどうと言うことは出来ないはずだ。だが、嵐山があの力で上級バグスターを葬ればすぐにレベル10くらいなら上げられる。そうなればどんな願いをかなえられるか分かったものじゃない」
「……結局どうやって願いは叶えられるんだ?」
「先ほど利徳君がクロニクルガシャットを使って願いをかなえた時のモニタリングをしていたが、どうやらクロニクルガシャットの願いはバグスターの力を使っているらしい。僕達仮面ライダーはバグスターの力と科学を組み合わせてバグスターと戦うための力を得ている。だが、バグスターの力は別にそれだけしかないわけじゃない。何せ人体を分解して化け物に変える力まであるんだ。その力を以てすれば雷王院君の怪我を治すことなどたやすい」
「……怪我は分かったけどどうやって時間まで戻すんだよ」
「それはクロノスの力だよ。仮面ライダークロニクルのエグゼスターは元々仮面ライダークロノスをモデルにしていた。詳しい原理までは分からないけどもクロノスはリセットの力で特定の物体ないしは空間範囲内の時間を巻き戻すことが出来る。これはこの前クロノスに殺された雷王院君をリセットで生き返らせることが出来たのと同じだ。ともかくクロノスの時間を止める力や巻き戻す力はバグスターの力を使っている。そしてエグゼスターはレベルが上がるほどに限定的にクロノスの力を使用できるようになっていく。実際にエグゼスターのレベル上限は100に対してクロノスはそれを超えているようだから、エグゼスターはクロノスを上回ることは出来ない。クロノスに出来ないことはエグゼスターには出来ないし、エグゼスターではクロノスを倒す事も出来ない」
「……時間を巻き戻すことで死者も生き返らせられるって事か」
「それに関しては流石にリセットの範囲外だったら時間の巻き戻しでの復活と言うよりかは生き返らせたい人を知っている人の記憶をもとにその人と同じタイプのバグスターを生み出すという形を取っている可能性が高い。つまり48時間までなら死者だって人間のまま戻せるけどそれより過去の人間を生き返らせたい場合、本人をそのまま生き返らせるのでなく他人の記憶などから情報を集めて似せたバグスターを作り出すといった形になるって感じかな。恐らく嵐山は今、その力を使って自分の奥さん型のバグスターを生み出している最中だろう」
「……嫌な話だな」
将碁が嘆息。無視して雷王院が口を開く。
「これからどうする?」
「現状、かなり混迷の事態にあることは確実だ。勢力が少なくとも3つある。1つは僕達。目的は他2つの目的を阻止する事。また、現状一番戦力が小さい状態だ。最高レベルも30しかない。その代わり人脈などを使える」
「警察とかか。武の奴に全く歯が立たなかったけど」
「それでも場所を特定してくれた。今度は喜屋くんのスマホを頼りに場所を探してもらおう。で、2番目の勢力が檀正宗を筆頭とした上級バグスター達。最高戦力かは不明だが最大戦力ではあるだろう。何せ相手は人間じゃない。檀正宗含めて電子変換移動だっけ?あれでどこへでも移動できる。レベル100越えも最低二人いる。その目的は全人類のバグスター化。雷王院君を狙って喜屋君も所属している。ただしそれが必要な仮面ライダークロニクルは十分な数が手元にないため僕達か嵐山から奪うしかない」
「……」「……」
将碁と雷王院が押し黙る。
「で、3つ目。嵐山」
「……瑠璃ちゃん連れられて行っちゃったよね」
「……現在嵐山親子。まあ、瑠璃ちゃんはともかくとして父親の方は檀正宗をも圧倒するかなりの強さを持っている。警察隊にクロニクルガシャットを渡す代わりにそこそこ操る事も出来る。いくつかのルートは僕の方で潰したけれどもどこまで権力などに手を伸ばしているかは分からない。それも含めてレベル50のエグゼスターがそこそこ以上に存在すると思われる。僕達はそのレベル50ですら中々に厄介だ。雷王院君くらいしか太刀打ちできない」
「……」
「嵐山の目的は亡くなった奥さんの復活と地球上の支配。前者は恐らく達成されているから後者を実行すると思われる。具体的な手段は不明だが、あれだけのパワーを持っているんだ。方法なんていくらでもあると思っていいだろう。雷王院君、仮面ライダーデーモンの弱点などは分かるかい?」
「……さあな。だが俺達がかつて倒した宇宙の悪魔はあんなものじゃない。一撃で惑星をも破壊するほどの力を持っていた。そいつには明確な弱点があったが、嵐山の場合は少し厳しいかもしれない」
「……その弱点は?」
「エボルトリガー。ハザードトリガー同様にベルトに装着されるアイテムだ。奴はそれを以て惑星などの破壊を行なっていた。だが、嵐山にはそこまでのパワーがない代わりにエボルトリガーもまた装着されていない。ある意味厄介になっているな」
「…………雷王院君。以前から聞こうと思ってたことを聞いてもいいかな?」
「何だ?」
「この前スマッシュ怪人について聞いた際にも思ったけれど君とその宇宙人やスマッシュとの戦いはスケールが少し大きすぎる気がするんだ。最低でも6年前にはその戦いが終わっていて当時高校生か大学生くらいだったから権力とかなくて秘密裏に行われた戦いを調べる術がないし、知る由もないのは納得できなくもない。だけどそんな惑星を破壊するようなレベルの化け物が好き放題に暴れまくっていてそれを君達フルボトルの仮面ライダーが倒すための戦いをしたって言う程スケールが大きな出来事があったのなら流石に権力や謀略などで隠し切れないと思うんだ。それに6年よりも前なら君も高校生ないしは中学生くらいだったんじゃないのか?そんな頃から仮面ライダーとして戦い続けていたのかい?」
「…………」
「それに檀正宗や嵐山は旧世界だとか言っていた。あれはどういう意味なのかな?」
「……もしもそれが言葉通りの意味だと言ったら?」
「……」
椎名が嘆息。将碁がつい雷王院に向き直り、
「どういう意味だよ」
「……正直この事に関しては知らない方が、教えない方がいいと俺は思っている。だが、もはや無関係にする事も難しいんじゃないかとも思ってる」
「……じゃあやはり……」
「そうだ。6年前、世界は一度生まれ変わってる。リセットされているんだ」
雷王院の発言にその場にいた全員が息をのんだ。
「……それは……」
「7年前、旧世界で言う2018年にあの悪魔との戦いが終わった。だが、戦いの規模は宇宙規模。一撃で惑星を破壊するような怪物が相手だからな。それでも7人の仮面ライダーが各惑星の文明などと協力して何とか奴を月に封印した。しかし全宇宙の被害は凄まじかった。あの戦いだけで100を超える惑星が滅んだ。犠牲者は億や兆では済まない。多大な犠牲を払って悪魔を倒すことは出来ても、払った犠牲があまりにも大きすぎた。このままでは生き残った者達もそして宇宙も天寿を全うすることは出来ず場合によっては大きく崩されたバランスによって奴以上の悪魔を生み出してしまう事さえ考えられた。だから宇宙の連盟は決断を下したんだ。奴を封印した月を除くすべての惑星、宇宙の時間をリセットしようと。奴が来るよりも前の時代にまで巻き戻そうと。そうして旧世界の2018年8月26日。その日を境に世界はそれまでの時間をリセットしてもう一度やり直すことにした。この情報はあの戦いで生き延びたものだけが引き継いでいる。そうしてやり直された2014年以降今に続く世界は新世界と呼ばれることになった。檀黎斗や嵐山はあの戦いの生き残りだ。新世界になって1年が経過したところでバグスターが出現した。旧世界ではバグスターは存在したのかどうかわからない。ただどのみちあの悪魔によって地球環境は滅茶苦茶になったから存在していたとしても大規模な動きは出来なかったんだろう。……俺は旧世界最後の戦いを生き延びた数少ない仮面ライダーだった。だから旧世界の産物であるフルボトルを使って仮面ライダーに変身できる。だが、旧世界では地球上の大気にネビュラガスが混じっていた関係でネビュラガスを体内に注入して変身する方式であっても普段から慣れている関係でそこまで肉体に負担はなかった。だが、新世界は違う。フルボトルを使えば使う程ネビュラガスは肉体を蝕み、最終的にはスマッシュ怪人になるか死ぬかのどちらかだろう。その関係もあって俺はバグスターが幅を利かせていてもなるべく変身して戦わないようにこの6年間努めていたんだ」
まるでSF映画か何かのような俄かには信じられないような話だった。しかし将碁も椎名もそれを否定しきれなかった。
「…………悪魔だの奴だの言ってるけどいい加減言いにくくないかな?その宇宙人の名前は何だったのさ」
「エボルト」
「……エボルト?」
「そうだ。ブラックホールを自由自在に操る宇宙の悪魔。気ままに星を狩る宇宙人だ。奴は自分の手で簡単に惑星を破壊し吸収することが出来るが、敢えてそれをせずにその惑星の住人同士で或いは複数の星の文明同士で争いを起こして自滅の道を辿らせるのを好む最低最悪にして最強の存在だ。つまり、仮面ライダーと言うシステムも奴からすれば被害者同士で争わせて自滅させるための余興に過ぎなかったんだ」
「……」
「……」
再びその場の全員が息をのむ。信じられないどころか冗談だろと笑い飛ばしたい。だが、やはり頭のどこかで納得している。それはもしかしたら旧世界とやらで自分達がその事実をその目にして命の終わりすら経験していた事を魂のどこかが記憶しているのかもしれない。
「嵐山はエボルトの事を知りながら奴の力を再びこの地球に持ち込んだ。それもあの口ぶりからしてエボルトは会話が出来る程度には復活している。もしかしたらもう完全に復活していてしかし俺達同士で争わせてそれを楽しむために月で待ち続けているのかもしれない」
雷王院の言葉は重かった。
何度目か、空気が重くなる。
「……椎名、こいつの言うことが本当だとしたらだ。嵐山を止めることを優先しよう」
「……檀正宗やバグスター達と組むという事かい?」
「そうだ。檀正宗でも嵐山相手じゃ分が悪い。けどバグスター達と協力すれば可能性はあるように思える。エボルト本人相手じゃどうしたらいいか分からないけど、嵐山相手なら何とかなるんじゃないかと思う」
「……檀正宗は全人類をバグスターにしようとしている。それに賛同できるのか?」
「……賛同は出来ない。けど確かバグスター達はスマッシュを知っていた。ならエボルトの事も知ってるんじゃないのか?そこから檀正宗も嵐山の背後にエボルトがいると分かればその脅威を感じて俺達と協力を考えるんじゃないだろうか」
発言している将碁自身も半信半疑の言葉だ。何より自分の頭でも自分達と檀正宗やバグスターが手を組む理由がないことは分かっている。嵐山だけならばさっき自分も言ったように檀正宗と上級バグスターが力を合わせれば恐らく倒せないことはない。何なら自分達ごとまとめて倒せる可能性だってある。その背後にいるエボルトが完全に復活している可能性だって0ではないが100%でもない。だったら……
「将碁」
雷王院が初めて将碁を向いた。将碁は咄嗟に憎しみを作れなかった。
「自分を信じたいのなら理由をつけて自分を騙すのではなく他人にきちんと説明して理解させろ。その上で意見を求めろ。お前の感情は方向性を間違いがちだが考え方自体は決して間違っていない事の方が多い。お前がお前を信じたいのならお前が信じる奴に理解をさせろ。それもなしにあれこれ悩むのは他人を信じ切れていないと見なされてもおかしくはない」
「…………」
将碁は押し黙る。そして、
「前言撤回だ。今は様子を見よう。檀正宗やバグスターも嵐山もこのまま手をこまねいている理由はない。けど俺達は逆に今すぐ自分から行動すべき理由はない。どちらから動いてもいいように作戦を考えよう」
将碁の発言に雷王院は少しだけ笑い、目を伏せた。そこで懐のスマホが振動する。
「失礼。……もしもし、はい…………そうですか。……すぐに向かいます…………ええ、一緒にいます……はい、失礼します」
僅かな会話の後、雷王院はスマホを切った。その反応に俄かに将碁と椎名の心臓は鼓動を増す。
「……雷王院君、まさか……」
「……そうだ。お前達の父親が危篤状態に入った。こんな事態だが今すぐ向かおうと思う」
・Transfer。
タクシーで将碁、椎名、雷王院、馨、利徳が到着する。将碁から電話を受けた母親もほぼ同時に到着した。馨と利徳は何かあった時のためにフロントで待機。白衣を纏った雷王院と西武家の3人だけが病室へと足を踏み入れた。
「…………父さん」
将碁は感情を押し殺した声を出す。ベッドの上では呼吸器が取り付けられていない巌が横たわっていた。
「院長、」
「……呼吸器及び心臓の機能はいつ完全に停止してもおかしくない」
「……そうですか」
雷王院は小さく呟いてから将碁と椎名の肩を軽く叩き、他のスタッフと共に病室を出た。
残されたのは4人だけ。
「……英恵(はなえ)……」
「はい……」
母親が前に出た。表情は見えない。
「……愛している」
「……はい」
「……椎名」
「……はい」
「……お前はお前の道を進め……」
「……はい」
「……将碁」
「……あ、ああ」
「……龍王になれ」
「……え?」
「……自分を信じれば……お前は……お前にしか出来ない事が……」
その時だ。爆音が響く。
「!」
将碁と椎名が慌てて窓の外を見る。駐車場の方角。ライトニング、リボルバー、クロノス、そしてデーモンの姿が見えた。
「……椎名、」
「は、はい!」
巌の声に椎名は慌てて振り向く。
「…………あれは出来てるかな……?」
「……はい。先程」
「あれ?」
将碁が疑問の声を作る。
その前で椎名が持っていたカバンから何かを出した。それはガシャットと腕時計のようなものだった。
「これは……!?」
「あの時、一度だけおじさんが家に帰ってきただろう?あの時に回収したおじさんが昔よく使っていたプログラムを使って僕が密かに開発していたんだ。……おじさんの、僕達のお父さんの最後の遺品を……」
「……それは……」
椎名はガシャットと腕時計を持って巌と将碁の傍に来る。
「…………将碁」
「……な、なにさ……」
「お前は……優しい子だ……でも優しすぎる……悪い事じゃないが……でもたまには自分の好きなことを……するんだ……。楽しみなさい……自分の……人生を……」
「!?」
その時だ。動かない筈の父の手が微かに動き、将碁の手を包む。
「……父さん……」
「…………お酒、飲めるようになってね……いつか……あの世で……一緒に……」
そして、父の手は崩れ落ちた。
・駐車場。
「くっ、はあ……はあ……」
ライトニングそして利徳が息を荒くして膝を折る。
情況は困難で混迷だ。嵐山は自分達がここに来ることを知っていた。そして自分達を攻撃すれば慌てて檀正宗達もやってきた。全て奴の手の内だった。かつてエボルトと戦って今その記憶があるのは雷王院だけ。檀正宗もバグスターも嵐山の背後にエボルトがいる限り、雷王院を簡単に死なせるわけにはいかなかったのだ。しかし今、クロノスとパラド、グラファイトがライトニングを守りながら戦っていてもなお性能的に足手まといになっているライトニングを庇うためにこの3人でも劣勢に追い詰められている。さらに、体内のネビュラガスとハザードレベルを操作されたのか武が、リボルバーがクロノスの手を離れてライトニングへの攻撃を集中させている。現状はライトニング&利徳VSリボルバーと、クロノス&パラド&グラファイトVSデーモンと言う状況だった。
「ライトニングぅぅぅぅぅ!!!」
リボルバーが発砲。
「危ない!!」
「!?」
咄嗟に前に出た利徳が射撃を受ける。
「があああああああああああああっ!!!」
「利徳ぅぅぅぅぅ!!!」
火花を散らしながら利徳がライトニングの前で崩れ落ちる。
「利徳!!」
「……ライトニングさん……春奈を……たの……」
「ゲームオーバー」
「!」
しかし、利徳の体は無情な電子音と共に消滅してしまった。
「……くっ!」
「おい、何人間のふりして悲しむ演技してんだよ!てめぇにそんな価値があると思うな!!」
「くっ……うおおおおおおおおおおお!!!」
走り出すライトニング。秒速2発でリボルバーの射撃が迫りその装甲や血肉を無遠慮に抉り砕いていく。それでも前へと進み、
「!?」
「ぐおおりゃあああああああああ!!!!」
ついにリボルバーの顔面にパンチをぶち込む。
「ぐっ………………!!!」
10メートル以上吹っ飛び、コンクリートに大きな跡をつけてやっと立ち止まる。
「はあ……はあ……」
リボルバーがゆっくりと前を見る。
「……くっ、」
そこではライトニングのボディが砕けて血だらけの姿を見せる雷王院の姿があった。
「……ふん、驚かせやがって。ただの悪あがきかよ。しょうもな」
鼻で笑い、リボルバーは銃口を雷王院に向ける。その時だ。
「……ん、」
足音が1つ。ゆっくりとこちらに近づいてきていた。燃え上がる病院を背にゆっくりと近づいてくる男。それは将碁だった。
「……何だ」
リボルバーが将碁の方を見る。
「そこで見てろよ。こいつの頭が消し飛ぶのをさ。俺達の本望だろ?」
「……俺はもうそんなつまらないことは望んでない」
「あ?じゃあ何望んでるんだよ」
「……すべてが元にだなんて甘ったれたことは言えない。だけど、せめて自分らしく俺は俺自身を楽しみたい。誰かに強制された人生じゃない、俺だけの人生を」
「……それで?」
「まず最初にお前を止める」
将碁はガシャットを取り出す。
「それはスターライトドラグーンのガシャットか。もう直ったのか。けど今更レベルが10だの20だのしゃらくさい」
「……」
「ネオスターライトドラグーン!!」
電子音。同時に将碁の腰にベルトが召喚される。そしてそのベルトにガシャットを突き入れる。
「変身」
「レッツゲーム!ムッチャゲーム!メッチャゲーム!ホワッチャネーム!?アイムア仮面ライダー!!」
そして将碁の姿がずんぐりむっくりなものへと変わる。
「……はぁ?レベル1?ふざけてるのか?」
「……レベルは1じゃない。これは仮面ライダーセーブ・レベル50サンクチュアリゲーマーだ!!」
走る。その速度はその外見からは想像もできない。
「!」
慌ててリボルバーが射撃する。秒速2発で次々とビーム弾がセーブに命中する。だが、
「……無傷だと!?」
「てやーりゃああああああああああああ!!!!」
あっという間に接近を果たしリボルバーの顔面にセーブのパンチが突き刺さる。
想像以上の衝撃にリボルバーが宙を舞う。セーブはその場で跳躍。宙を舞うリボルバー向けて空中タックルを開始。
「ぐっ!!」
背中から衝撃を受けたリボルバーが苦痛の声を上げてさらに宙を舞う。
「いい加減に!!」
空中でリボルバーが再び射撃。今度はベルトに刺さったガシャットを狙う。だが、セーブの装甲の一部がタブレット型に変形してその射撃を自動で防ぐ。
「何!?」
「キメワザ・ヴィクテムクリティカルストライク!!」
「てやーりゃああああああああああああ!!!!」
そして全身に凄まじいエネルギーを纏ったセーブが猛烈な勢いで突進し、着地より前にリボルバーをぶっ飛ばす。
「……ぐっ、」
数百メートル離れた道路。そこに墜落したリボルバーは吐血しながら武の姿に戻り、気絶した。
それを見届けてからセーブは空を舞うデーモンを見上げた。
「ふん、防御全振りのレベル50か。それならあのリボルバーを倒せてもおかしくはないかもしれない。だが、その程度で私をどうにか出来るとでも?」
「……確かにこの姿ではあんた達には勝てないかもしれない。だが、誰がこれだけだと言った?」
「何?」
「父さんが最期に遺してくれたガシャットは……俺の力は……仮面ライダーセーブはこんなものじゃない!!!」
セーブがガシャットのスイッチを押す。すると、
「オープンウィング!!!」
電子音が響き、セーブの姿形が変わる。それまでまるでドラム缶のような装甲だった部分が光を放ちながら花弁のように開く。それはセーブの翼だった。
「胸に秘めた熱い思い!!感じるフリーダム!!アイムアレベル50サブリメノンゲーマー!!!」
熱い電子音が響くと同時、セーブの変形は完了した。
「……レベル10に酷似した姿……なるほど。先程のサンクチュアリゲーマーがレベル1に近い姿だったわけだ。さしずめ今のその姿はレベル2のオマージュと言ったところか?」
「……余裕だな」
「当然だ。どれだけ姿が変わろとも所詮はレベル50だ」
「……確かめてみるか?」
セーブは手にタブレットを持つ。手で持っているだけでセーブの思い通りに画面が動いていく。
「うん?」
「ブライトタブレットの恐ろしさ、骨の髄まで味わわせてやる」
やがて少しずつセーブの姿形がさらに変わっていき、
「…………何だと!?」
デーモンやクロノスが目を見張る。
「フェードイン……!!!」
セーブの姿は勇者ライディーンのものに変わっていた。