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仮面ライダーS/L20話

Tale20:まさに地獄のごときDogma

・ディズニーランド駐車場。慌てて逃げるタクシー。残ったのは馨、椎名、瑠璃/アイジス、将碁/セーブ、ブルホーンスマッシュと呼ばれた怪人とパラド。
「スマッシュ怪人……?」
「信じる信じないは勝手だから分かりやすく言うぞ。あれは宇宙人みたいなものだ」
「宇宙人!?」
「正確に言えば宇宙人に改造されてモンスターにされた人間ってところだな。もうとっくに絶滅したはずだ。ともかくああなったら俺達バグスターでも元に戻せない。殺すしかない。さあ、レベル99の実力を見せてやる」
パラドが告げるとブルホーンスマッシュがまっすぐ突進してくる。パラドはそれを真っ向からたやすく受け止める。
「どうした?こんなものか?もっと俺の心を躍らせてみろよ?」
ブルホーンの角を掴んで片手だけでその巨体を投げ飛ばす。
「……強い……。けど、あれが人間……?殺すしかないモンスター……?」
セーブは悩む。その悩みが思わずセーブの時間をわずかに止めてしまう。
「将碁さん!!」
アイジスの声。セーブがハッとして正面を見るとブルホーンが迫ってきていた。
「レベルアップ!!」
「アクセル!アクセス!!アクシズ!!フルスピードフルスロットルボーイ!!アイムアレベル3スピードゲーマー!!」
レベル3になり、そのスピードで突進を回避。ついでに斧を拾う。
「やる気がないなら下がってろ!」
直後パラドがブルホーンに迫り、蹴り飛ばす。そこから跳躍し、空中で巨大な尻尾を出して振り回し、まるで刀で斬ったかのようにブルホーンを真っ二つにした。
「あ……」
「何呆気に取られてんだよ」
パラドが着地する。その背後にブルホーンの残骸が落下。一瞬だけ改造前の姿らしい20代の男性の姿になってから完全に消滅した。
「お前達にはいつかこの技を真っ向から受け止められるくらい強くなってもらわないと困るんだからな」
そう言ってパラドは姿を消した。
「……」
「……会社に行こうか」
椎名が言い、将碁と瑠璃は変身を解除した。

・一度瑠璃とは別れて将碁と椎名は西武財閥本社に向かった。ちなみに馨は瑠璃と一緒に行動している。見張りと言う面もあるらしい。
椎名が本社の人間に事情を詳しく聞き、再び警察を本社に呼ぶ。
「……時間がかかりそうだな」
将碁は食堂で夕食を取ることにした。
「……そう言えば武どこ行ったんだろう」
いや、あの戦いの際に救急車で運ばれていったのは知っている。問題なのはその後だ。どこの病院に行ったのか、スマホにメールや電話をかけても返事はない。椎名によれば穴に落とされたガシャットやドライバーは警察経由で回収するらしい。どちらも破壊されているが回収され次第修復するらしい。
「……はぁ、なにがどうなってるんだよ」
「将碁さん」
やがて、瑠璃と馨がやってきた。
「おかえり。どうだった?」
「はい……やはり家にはお父さんはいませんでした。メモの類もありませんでした……」
「そうか……。あの人は宇宙に行ってどうする気だろ。逃亡か?」
「私を置いてですか?」
「……ごめん」
「……いえ、私こそ」
二人して黙する。とりあえずと言わんばかりに瑠璃は食券を購入する。
「お子様ランチ8個」
「「!?」」
「あらぁ瑠璃ちゃん。久しぶりねぇ。今日も残業?無理はしないでね?」
「はい、おばさん」
「……俺、今日だけであの子の印象変わりまくったと思う」
「私も、初対面からだけれども相当印象変わってるから大丈夫」
やがて、瑠璃が猛烈な勢いでお子様ランチを貪り始める。将碁も自分の分を再び食べ始める。
「郡山さんはおなかすかないの?」
「ええ。もう食事なんて何か月もとってない。そもそも実体がないんだけどね」
「……片や爆食。片や半ば幽霊。この二人がヒロインってどうなんだよ」
思わずメタをつぶやく将碁。
「……で、瑠璃ちゃんのお父さんなんだけど」
馨が口を開く。
「あの人がシャトルで宇宙に出ていってからスマッシュが出てきたじゃない?で、あのパラドって言うバグスターが言うにはスマッシュは宇宙人に改造されたモンスターなんでしょ?つまり、」
「嵐山本部長はその宇宙人に会いに行ったかもしれないってわけか」
「……お父さんが宇宙人に?」
「実際その可能性はないとも言えない。けどパラドが言うにはスマッシュって本当はだいぶ前に滅んでるんだろ?ならその改造した宇宙人ももう死んでるんじゃないかとも思うんだよな。それにたとえ生きていたとはいえ何をしに行ったのか……」
「……檀正宗を裏切ってその宇宙人を味方につけるとか?」
「……いくら何でも敵対しているとはいえ言葉が通じる同じ国の人間裏切ったとして宇宙人味方につけるだろうか。……そうだ。瑠璃さん、どうしてあんた達はライトニングの事を知ってたんだ?」
「え?」
「俺の家の前での戦いよりも前に、それこそあの病院での戦いの時にはもうライトニングのこと知ってたみたいだけど」
「……私は父から聞きました。檀コーポレーションでの戦いはあの仮面ライダーが乱入してそのせいで檀黎斗は死亡。暴走したあなたも元に戻って……それでバグスターからの宣戦布告があったと。父はその後、檀黎斗の死体から仮面ライダークロニクルのデータを盗んで逃走。その後、復活した檀正宗と合流して仮面ライダークロニクルを完成してもらって……」
「……それだけじゃ分からないな」
「……しかもガシャットじゃないもので変身してるんでしょ?フルボトルだっけ?」
「らしいな」
「……もしかしてだけど、スマッシュとあのフルボトルって同じ系統の技術だったりして」
「……え?」
「いや、私全然分からないけどでも、ありえなくはないんじゃないかなって。ガシャット使って変身する仮面ライダーがバグスターを使って変身してるわけだからもしかしてフルボトルとスマッシュも何かの関係あるんじゃないかなって。それにスマッシュって前に滅ぼされてるんでしょ?何に滅ぼされたのかなって。それでもしかしたらガシャットで変身する仮面ライダーが誕生する前はフルボトルで変身する仮面ライダーがいて、その仮面ライダーにスマッシュが倒されて……で、その仮面ライダーがあの雷王院君じゃないのかなって」
「……理には適ってると思う。たまに思うことがある。ガシャットでどうして仮面ライダーに変身できるのか。本当に体内に少しだけ存在するバグスターとガシャットだけの能力なのか。檀黎斗はどこから仮面ライダーの技術を手に入れたのか。それが既に存在していた技術……宇宙人によってもたらされた技術だとしたら辻褄が合うと思うんだ」
実際、意図せぬ形で正解のスイッチを押したような感覚があった。昔少しだけ見たことがある仮面ライダーの物語は、初めに怪人を作る技術があってそこから異常が起きて正義の心を持った仮面ライダーが生まれた。それと同じことが実際に起きていたとすれば。
「……けどあのクソ野郎が正義の味方だったなんて認めたくないなぁ……」
「ま、まあそこは置いておこ。ね?」
「……雷王院さんに直接聞いてみたらどうですか?」
嘆息の将碁。宥める馨。それをぶっちぎってハンバーグにがっつきながら瑠璃が尋ねた。
「………………………………すげぇ嫌」
「聞きづらいなら私が聞こうか?」
「いや、あいつ郡山さん見えないじゃん」
「あ、そっか」
「郡山さんが見えないって事は確実に体内にバグスターは含まれてませんね。かと言って私が行くのもあれですしね……。顔見られてますし」
「…………椎名に頼むかな」
「僕が何だって?」
エレベータから椎名が出てきた。既に夕暮れで照明も最低限になっている関係で最初はどこから出てきたか分からなかった。
「お疲れ」
「君達も帰っていてもよかったのに」
「……俺はともかく」
「私は帰る家ないし……」
「お父さんいなかったし……」
「馨さんは今度から瑠璃ちゃんの家に住むってのはどうかな?見張りも兼ねてね」
「ストレートに言うわね」
「で、何の話をしてたんだい?」
「それは……」
将碁が説明する。その間に椎名は夕食を注文していた。瑠璃はお代わりを注文していた。
「……なるほど。確かにそれなら僕から聞いてもいいよ」
「本当か?」
「ああ。僕も彼とは大学時代の友人だし。何より君達を彼に合わせてろくな目に遭った記憶がないしね」
「……それについてはまあ、あれだ」
「けど、僕はまだ戦えそうにない。だからボディガードは頼まれてくれるかな?」
「ああ、レベル3でよければ」
「え、私もですか?」
ハンバーグを2つ丸ごと丸呑みしながら瑠璃が目を丸くする。
「協力してくれるのならこの食堂でいくら食べても無料になる会長特権を何枚か譲っても構わない」
「協力します」
「……瑠璃さんさぁ……」
将碁はそれ以上何も言えずに頭を抱えた。


・翌日。瑠璃が運転する車に乗って将碁と椎名、馨がTransferへと向かう。
「いやぁ、本職本職」
「……順序が逆だけど正直昨日の見てると不安で仕方ない」
椎名が高笑いしてる隣で将碁が嘆息。実際、瑠璃の本職は西武財閥重役の送迎担当だ。今までは本部長である父専用だったが、その上司どころか所属組織の頭である椎名を送迎するのはある意味当たり前の仕事内容だった。
「けど瑠璃ちゃんどうして椎名君の家の場所知ってたの?将碁君の家とは別だったのに」
「え、えっと……」
「以前少しだけ来たことがあるんだよ」
「……椎名、まさか以前瑠璃さんに警戒されてたのって無理やり自分の家に連れ込んだとかそう言うんじゃないだろうな?」
「まさか」
「………………どの口が」
「瑠璃ちゃん、何か言ったかな?」
「いえ、会長」
「……郡山さん、事件の臭いがするのは気のせいかな?」
「奇遇ね、私もよ」
「……こほん。そろそろ到着します」
瑠璃が報告。実際建物がもう見えてきている。近づくほどに将碁の脳裏で昨日の光景が思い出される。実際武がどこの病院に運ばれたのかまだ不明のままだ。家に連絡しても武は一人暮らしだから当たり前だが反応はなかった。椎名も報告はもらっていないらしい。もしかしたらあの戦いでスマホまで破壊されていただけなのかもしれない。今日椎名に調べてもらう事にしよう。
駐車場。4人が車から出る。
「将碁と瑠璃ちゃんはここで待っててくれ。馨さんは念のためについて来てくれ」
「分かったわ」
椎名が松葉杖を突きながら見えない馨を伴って病院に入っていく。受付に名前を記入して巌の病院へと向かう。今回はあらかじめ面会謝絶だと言われていたが雷王院に会いに来たと言えば、通してくれた。
そして3階。面会謝絶の札の先。
「……面会謝絶が見えなかったか?」
病室にはやはり雷王院がいた。
「君にどうしても聞きたいことがあってね」
「……何だ?」
「昨日、スマッシュと呼ばれる怪物と遭遇した」
「……!?スマッシュだって!?」
「……やっぱり知っていたか」
「……どこでスマッシュと戦ったんだ?いや、どうやって倒したんだ?奴らは不死身ではない分バグスターよりかもはるかに強いはずだ」
「そのバグスターに倒してもらったんだよ。上級バグスターにね」
「……まさか組んだとでも?」
「そんなわけないだろ。ただ彼らもスマッシュは警戒してた。彼らからスマッシュが宇宙人に改造された人間だって話も聞いた。そこで僕達が話し合った結果、バグスターからガシャットで変身する仮面ライダーの技術があるのと同じように君のフルボトルの技術はスマッシュと関係があるんじゃないかと言う結論に至った。嵐山や檀親子が君の事を知っていたように見える事もあってね。もしかしたら何か知ってるんじゃないかと思ったんだ」
「……確かにな。お前達が達したようにフルボトルの成分は人間をスマッシュにするものと同じだ」
「……ならやはり、君は過去にスマッシュと戦って滅ぼした仮面ライダーと言う事だね?」
「俺だけじゃない。過去にはほかにも何人かの仮面ライダーがいた。……檀黎斗はその時から科学者としてフルボトルの研究をしていた一人だった。恐らくお前達が使うライダーシステムは俺が使っているものと技術的に関係がある。だからあいつがハザードトリガーを装備出来た」
「ハザードトリガー?」
「黒くなって暴走しただろ?あの時にベルトに出現した赤いアイテムだ。あれは本来人体に影響がない範囲で人間を一時的にスマッシュに近い存在即ち仮面ライダーにするための成分……ネビュラガスを無理矢理活性化させてハザードレベルを上昇、強大な力を得る代わりに暴走する危険なアイテムだった。ハザードレベルってのはネビュラガスと人間のストレスなどの負の感情やアドレナリンなどの闘争本能が結合してどれだけ戦闘力を強化させしかしその心身に負担がかかるかを示した数値だ。どうもネビュラガスがなくてもバグスターが感染していた場合それに近い状態が作られるらしい」
「……将碁の中のバグスターが活性化しているのは結果的にハザードレベルが上がっているからか……」
「今のあいつらのハザードレベルは4前後。ハザードトリガーなしでも少しやばい状態だ。バグスターの悪影響も大きく受けるだろう」
「……ネビュラガスじゃなくてもバグスターでもハザードの影響を受けるって事はネビュラガスとバグスターは何かしら関係がある?」
「さあな。俺はスマッシュとその背後にいる奴らをかつて倒した。それ以来暫くの間、戦いには参加していなかった。檀黎斗がまだ何か研究をしている事は知っていたがバグスターに関してはほとんど情報を持っていない。本来バグスターが出てもそれは今の仮面ライダーであるお前達がどうにかすべきだと思って手出ししないつもりだった。実は6年前時点で少しだけ上級バグスターと呼ばれる存在とは戦っていたんだがな。だが、仮面ライダークロニクルが発動してしまったなら話は別だ。あれで世界がまた戦争の只中に巻き込まれてしまうのなら、そして仮面ライダークロニクルにスマッシュに近い技術がもたらされている事を知ってしまったから俺はまた戦うことに決めたんだ」
「……なるほど。詳しい話をしてくれてありがとう。正直半信半疑だが納得せざるを得ない部分も多くある。同時に大きな謎も出てきてしまったけどね」
「……檀黎斗さえ死んだ今、誰がスマッシュをまた生み出したか」
「そう。しかも昨日、嵐山本部長が宇宙へ行こうとした際に入れ違いに出現したんだ」
「……待て。今何と言った?」
「ん?」
「……嵐山の奴が宇宙に行っただと……!?」
「あ、ああ。目的が何かは分からないけどね」
「……目的なんて決まってる……!!奴を復活させるつもりなんだ……!!!」
「奴……?」
「地球にネビュラガスを持ち込み、人間をスマッシュに改造した張本人だ!!奴はかつての戦いで完全に倒しきることが出来なかった。だから月に封印することにしたんだ!」
「……まさか……」
「奴が復活してしまったらバグスターどころじゃない。仮面ライダークロニクルでレベル100のプレイヤーを何人集めたところで物の数になるかどうかも微妙だぞ……!!」
「そんな……」
「すぐに宇宙に行かないとまずい。手段はないのか!?」
「……西武財閥の本社は宇宙開発を元々行っていた。だから施設は他にもいくつか……」
「案内してくれ。俺だけでも宇宙に行って奴を止める。なんとしてでも地球にまた入れてはいけない……!!」
雷王院が病室を飛び出す。
「あ、待ってくれ!」
椎名が雷王院を追いかける。追って追って追い続けて駐車場。瑠璃の車の傍まで来る。このままだと将碁や瑠璃と遭遇してしまう。何とか止めたいと思う椎名だったが、
「……」
雷王院が足を止めた。
正面。
「……やあ、雷王院先生。職務を置いてどこへ行く気かな?」
停車した一台のベンツ。そこから正宗が姿を見せた。
「今はお前と遊んでいる暇はない。そこをどけ」
「私も君に用があるわけではない。君に用があるのは彼だよ」
次いで車から出てきたのは武だった。
「喜屋君!?」
「……」
武は何も言わず雷王院をにらんでいる。
「どけ。お前などにはもっと用がない」
「……俺に勝ったらどいてやるよ」
言って武は懐から拳銃のようなものを取り出した。それは拳銃とガシャットが合わさったような形をしていた。
「……行くぞ」
武はポケットから何かを取り出した。それはフルボトルだった。
「!?」
左手でフルボトルを振り、それから拳銃のようなものにマガジンのように差し込む。
「ドグマ!!」
電子音。そしてその状態で引き金を引く。
「ガンガンリボルバー!」
今度は拳銃のガシャットのような部分から電子音。
「ドグマ!ガンガンリボルバー!!エクシーズマッチ!!Are you Ready!?」
「変身!!」
「背信のロックンロール・ドグマトリガー!!イイイイェェェェェェイ!!!!」
銃口からの光が武を包み込んだ次の瞬間、武は今まで見たこともない姿のリボルバーへと変身した。
「フルボトルとガシャットで変身だと……!?」
「ライトニング君。君から提供されたライトニングフルボトルのお陰だよ。私は新しく物を作ることは苦手だが、すでにあるものを複製するのは得意でね。仮面ライダーリボルバー・ランクXドグマトリガー。ドグマのフルボトルとレベル100のガンガンリボルバーのガシャットを組み合わせて誕生した世界で私だけの仮面ライダーだ。さあ、存分に堪能してくれ」
「……」
雷王院はライトニングゼリーボトルを出す。同時に腰にスクラッシュドライバーが出現し、十分に降ったライトニングゼリーボトルをドライバーに突き刺す。
「ライトニングゼリー!殴ぅる痺れぇるぶっちぎるぅ!!ライトニングインチャージ!!」
「変身」
「ぶるぅぅぅぅぅぅぅぁぁぁぁぁぁ!!!!」
雷王院もライトニングチャージへの変身を完了する。
「……お、おい」
将碁と瑠璃が車から出る。同時、
「邪魔だ!!」
ライトニングがリボルバーに突進。
「……そう、俺がお前の邪魔なんだ。だからもうお前は俺の邪魔じゃない」
リボルバーは右手に構えたままのトリガーからビーム弾を発射。秒速2発で発射された銃撃が接近中のライトニングの胸に撃ち込まれ、大きな火花を散らせる。
「ぐっ……!!」
接近する脚が止まったライトニングにリボルバーは射撃を集中させる。射撃が命中するたびにライトニングは一歩あとずさり、ついには背後に停められていた車のボンネットに倒れる。
「ぐっ、はあ……はあ……」
「あのクソ野郎が近づくことすらできないのか……!?」
驚愕する将碁。それを見てその存在に気付いた正宗が歩み寄る。
「やあ西武将碁君。喜屋武まるた君は私の誘いに乗ってくれたよ。君はどうする?」
「……武に何をした?あいつがあっさりとあんたの誘いに乗るはずがない」
「ふっ、あっさりと乗ってくれたさ。仮面ライダーライトニングを抹殺するための力を与えるという条件でね」
「……そんな……」
「体内のバグスターを排除した。もう彼はただのガシャットでは変身できない。そしてあの姿になるために必要なネビュラトリガーは私の承諾なしには使用できない。彼はもう完全に私の商品と言う訳さ」
「……体内のバグスターを排除したって……それなのに私にはバグスターになれって言ったんですか!?」
「おや君は確か嵐山君の……。君達は確か敵同士じゃなかったのかね?まあいい、答えは簡単さ。彼程度の実力ではたとえただレベル100の力を与えたところであのライトニングには勝てない。だからその手助けをしたまでだ」
「……そんな……」
「見たまえ。その甲斐あって彼は既にライトニングを追い詰めている」
正宗が視線を向け、将碁と瑠璃も視線を向けた。
「ぐっ!!」
ライトニングは距離を詰めようとしても攻撃を回避しようとしても確実に自分の胸に射撃が命中する状況にあった。射撃の威力も自分の拳の一撃同様にレベル50程度の相手ならば一撃で倒せるほどの威力。既に胸部装甲に亀裂が走っている中、リボルバーはあの場所から一歩も動いていない。平静のままただ右手の指だけを動かしているだけだ。
「いい加減にしろ!!」
「ライトニングディスチャァァァァジ!!」

ライトニングの両眼が光る。
「ネオ超電導光線キャノン!!」
そして、その両目から光線が発射される。対してリボルバーは0.1秒で演算を終了し、左に一歩移動する。ただそれだけで放たれた光線はリボルバーの脇を通り過ぎていった。
「……何……!?」
「言ったはずだ。もうお前は俺の邪魔じゃない」
リボルバーがトリガーのガシャット部分のスイッチを押す。
「スタンド!」
リボルバーが宣言すると、その背中から無数のファンネルが出現し、それぞれが独自の軌道を超高速で描きながらビームを連射。一瞬で全方位を埋め尽くすほどのビームの雨が回避の隙も与えずにライトニングの全身に突き刺さる。
「があああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
先に爆発したのは背後にあった車だった。車が大爆発して炎を上げる中ライトニングはその炎の中に倒れる。
「素晴らしい。流石私の傑作だ」
正宗が拍手をしながら炎の中に歩み寄る。
「………………ぐっ、」
炎の中では傷だらけの雷王院が膝を折っている。その雷王院の髪を掴んで無理矢理引きずって正宗は椎名の傍まで来た。
「西武椎名会長。この前の交渉を覚えているかな?」
「……」
「この男の命と引き換えに仮面ライダークロニクルの再販をしてもらいたい。それまでこの男は預かる。それがどういうことか分かるかね?」
「……事実上の人質は雷王院君だけじゃないという事か」
「そうだ。彼は前会長の主治医だったね。彼が拘束されていたら前会長はどうなるか。しかも前会長はもう長くないそうじゃないか。……三日以内に行動をしなかった場合、近い内2名の葬式が営まれることだろう」
正宗が笑うと、リボルバーが雷王院を抱え上げて正宗と共に車に戻っていき、
「君の行動を信じるよ」
それだけ言い残して走り去っていった。