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ステーキが救う異世界3

「とりあえず村へ行けってのはわかったけど、俺みたいな鬼を見て村人が話を聞くと思うか?」
俺の質問にエリスは冷静に頷いた。

「そのために私が同行するのよ。この森の守護者である私が保証すれば、村人たちも少しは話を聞いてくれるはず。」
「……保証ねえ。そこに期待するしかないか。」

エリスの言葉に不安を感じながらも、他に選択肢はない。この森の外に出るには、村人たちとの誤解を解く必要がある。それが筋肉で解決できる問題でないことは、さすがに俺にもわかっている。

「じゃあ出発するぞ。日が暮れる前に村へ到着したい。」
エリスがさっさと歩き出す。その後ろ姿は小柄ながら、どこか威厳を感じさせるものだった。俺とカイルは慌ててその後を追いかける。


村の入口に着くころには、日が高く昇りきっていた。遠くから見える小さな農家や、田畑を耕す人々の姿は、いかにも平和な光景だ。しかし、俺が近づくにつれて村人たちの様子が変わり始めた。

「鬼だ……!」
「危険だ、武器を持て!」
「子供がさらわれたんだぞ!」

村人たちは次々に叫び声を上げ、農具を手に取って構え始めた。その緊張感に、俺の背中を冷や汗が流れる。

「ちょっと待て! 話を聞いてくれ!」
必死に叫ぶ俺を無視して、村人たちは一斉に押し寄せようとする。だが、その瞬間――。

「待ちなさい!」
エリスの声が響き渡ると、村人たちは一斉に動きを止めた。その威厳ある声と佇まいは、村人たちにとって特別な存在であることを証明していた。

「守護者エリス様……なぜここに?」
一人の年配の男性が震える声で尋ねる。

「この男は敵ではない。私が保証する。」
エリスの一言に、村人たちはざわついた。

「しかし、鬼の姿をしているではありませんか! あの狼を殺した力だって、普通では……!」
「それでもこの男は、この子供を守った。」
エリスはカイルを前に押し出し、村人たちに証言を促すような目を向けた。

カイルは少し戸惑いながらも、大きな声で話し始めた。
「本当だよ! このおじさん、僕を助けてくれたんだ。狼を倒してくれて、それからずっと一緒に逃げてくれた!」

村人たちは顔を見合わせ、次第に緊張がほぐれていく様子が見えた。

「……確かに、この子は無事だ。」
「守護者様が言うなら……。」

村人たちは武器を下ろし、少しずつ距離を詰めてきた。

「いいだろう。ひとまず話を聞こう。」
村の長老らしき人物が、そう言って俺たちを村へ招き入れた。


村の集会所に案内された俺たちは、村人たちを前にして状況を説明した。俺が異世界から来たこと、突然の転生で何もわからないこと、そして筋肉スキルのこと。正直、どこまで信じてもらえるかわからなかったが、エリスの保証のおかげで話は順調に進んでいった。

「なるほど……つまり、あなたは“この世界の人間”ではないと?」
長老の問いに俺は頷く。

「そうだ。だから、この世界のことは何も知らない。お前たちに迷惑をかける気はないし、むしろ助けが欲しいんだ。」

村人たちは再びざわつき始めた。だが、エリスが一言でそれを収めた。

「彼を受け入れるべきよ。この森に潜む脅威に対抗するためにも、彼の力は必要になる。」

「脅威……?」
長老が首を傾げると、エリスは静かに答えた。

「そう。森の奥に、これまでとは桁違いの魔物が現れ始めている。もし彼がいなければ、この村も危険に晒されることになる。」

その言葉に、村人たちは再び息を飲んだ。

俺の筋肉スキルが、この世界でどれほど役立つのかはわからない。だが、この村での生活が始まれば、新たな道が見えてくるかもしれない――筋肉で切り開く道が。

そして、俺の異世界生活は、次の展開へと動き出した。

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