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ステーキが救う異世界2
「名はなんだ?」
白いローブの女性が問いかける。杖を下ろしたとはいえ、その目にはまだ警戒心が宿っている。
「リクだ。」
俺は正直に答える。変に隠したり嘘をついたりすれば、次は本当に焼かれるかもしれない。
「私はエリス。この森を管理する者よ。」
彼女の名乗りにカイルが驚いた声を上げた。
「森の守護者……!? 僕のお母さんが昔話してくれたことがある!」
どうやらこのエリスという女性は、ただの魔法使いではなく、何か特別な立場にあるようだ。
「ふん、守護者と言われるほど大したものじゃない。ただ、この森の均衡を守る役目を負っているだけ。」
エリスは淡々と話すが、その言葉には自信と重みが感じられる。
「それでリク、あなたはなぜこの森にいるの? 何の目的があって――鬼の姿で?」
やっぱりそこを聞かれるか。俺は簡潔に、自分がこの世界に突然現れたこと、何が起きているのか全くわからないことを説明した。転生や筋肉スキルの話をした時、エリスの眉がピクリと動いたのを見逃さなかった。
「筋肉で解決……そんなふざけたスキルがこの世界に存在するなんて……信じがたい話ね。」
「俺だって信じてない。でも事実なんだよ。」
俺は肩をすくめてみせる。
「……まあいいわ。とりあえず、この森に住む者たちへの危害だけは許さない。それを守ると誓うなら、一時的に協力してあげてもいい。」
エリスの提案に、俺は少し驚いた。
「協力って、俺に何をしろって言うんだ?」
「村に行くのよ。」
エリスの言葉に、俺とカイルは同時に声を上げた。
「えっ、村?!」
「いや待て、村の奴らに追いかけられてるんだぞ!」
「だからこそ行くのよ。」エリスは少し微笑み、続けた。「あなたがただの鬼ではないと証明しなければ、村人たちはこの森に攻め入ってくるわ。そうなれば、森の命は失われる。」
なるほど、そういうことか。だが、それはつまり――。
「俺が村人たちの誤解を解いて、協力を取り付けろってことか?」
「その通り。あなたがやるべきことよ。」
俺は大きくため息をついた。とりあえず命を繋いだが、この世界での生き残りはまだまだ骨が折れそうだ。
「分かったよ。やってみるさ。でも、下手すりゃ俺は村人に殺されるぞ?」
「その時は私が助けるわ。」
エリスの冷静な声に、少しだけ希望を感じた。
こうして俺は、初めての「味方」と共に、異世界での新たな一歩を踏み出すことになった――筋肉とともに。