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当初、河野直也の解説が苦手だった話

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ミュートしていたことも

河野直也が最初にMリーグの解説として登場したのは2019年のこと。

今、初めて語る。
私は当初における河野さんの解説が、他のどの解説者よりも苦手だった。

「~~ということで、◯◯を切りましたね」

対局中は、とにかくこの構文の連続。
打牌選択要素を矢継ぎ早に語り続ける解説は、麻雀マニアの私でもきつかったから、ライト層は聞くに堪えなかったと思っている。

また、ホンイツをホンイチと言い続けたり(どちらも正しい。マックとマクドみたいな関係)番組終了時に放つ川柳も面白いとは言えなかった。

ジャックナイフも認める

しかし、2年目、3年目とシーズンを重ねるごとに、話し方に余裕が見られるようになってきた。
河野さんの特徴である選択理由の正確な言語化だけは活かしたまま、実況といい感じに言葉のキャッチボールをかわしたり、ときにフランクに笑いも織り交ぜたりして、わかりやすくて面白い解説になったように感じる。

何よりも、心から麻雀とMリーグが好きなんだという姿勢を前面に出しているのは好感が持てる。

光が当たる解説席の裏で、どれだけ努力してきたのだろう。
2年目あたりまでは「本番前になると緊張で吐きそうになるし、実際に吐いたことも何度もあった」と河野さんは語る。

河野さんはプレッシャーをはねのけるため、練習を重ねた。
まずは配信番組の音声をオフにし、模擬解説を何度も繰り返す。
次に音声をオンにし、人気解説者の何がいいのかを分析。
さらに自分の解説を見返し、こう言えばよかった、これは余分だったなどと反省を繰り返したという。

研究して反省し、発展する。

麻雀と同じで、リサーチ&デベロップメントの繰り返しでしか、技術は磨かれない。

アイデンティティだったホンイチや川柳も、早い段階で不必要と判断して切った。

いや決してアイデンティティだとは思っていなかったと思う。
とにかく何でもいいからウリがほしいという姿勢であり、視聴者が少しでも楽しめるように模索していたにすぎない。トライ&エラーの一つなのだ。

正式な解説勉強会のない(現状)最高位戦において、誰よりも練習と反省を積み重ねてきたことは想像に難くない。

こうして河野さんは唯一無二の解説者として上り詰めた。

あの「触るものはタクシーでも傷つけるジャックナイフ」こと安斎先生ですら、その異端の能力に驚愕している。
彼が他人のことをこんなに褒めるのは本当に珍しい。

全局×4人分インプットできる男

河野さんが凄いのはここからである。

昨年、私が出場した最高位戦Classicの決勝で解説を担当してくれたのがコバゴー(小林剛プロ)と河野さんだった。

誰かの顔のでかさが異常

このときはすでに河野さんの解説が大好き!に反転していた時期。
さらに様々な人から「河野さんに解説されたい」という声を聞いていて、私はこの身を持って河野さんの解説を体験できることにワクワクしていた。

5回戦に及ぶ対局を終え、最後のインタビュー前に
「解説ありがとうございました」
と、河野さんに挨拶をした。
そのときに河野さんの放った一言が未だに忘れられない。

「全局思い出せるから、気になるところあったらなんでも聞いてくださいね」

今なんて言った?ぜ…全局?
自身ですら思い出せないのに、5人分見ていた河野さんが全局?

私も様々な場所で解説を担当している。
選手に聞かれた局面はなんとなく思い出せるけど、詳しい点棒状況や場況まではさすがに思い出せない。
一人だけ追っていれば可能だが、打ち手は常に四人存在しているからだ。

実際にインタビューで話を振ったときに、的確にその局面を振り返ってくれた。
さらに驚いたのが
「沖中さんが一番後悔していると思うのが…」
と、ピンポイントで後悔している選択を指摘してきたことだ。
なんなんだこの人は!

多くの人が「河野さんに解説されたい」と言っている意味が身に染みてわかった出来事である。

もともと言語化能力が高かったところ、繰り返し配信を見て練習したことによって、誰も到達できない領域に足を踏み入れているのではないか。

全国に存在する河野チルドレン

まだまだ話は終わらない。

河野さんに麻雀を教わっているプロは多い。
私が知っているだけでも10人を超えるので、実際は100人とかいるのかもしれない。

東海で言うと小池諒選手。

彼は一旦河野さんの言う通りにしてみよう、と自分の麻雀を捨てた。
そしたら常に1打目に4pを切るモンスターになっていた。
今でも定期的に麻雀の質問をぶつけているという。

他団体を含めると公言していい人と微妙な人がいると思うので、小池だけに留めておくが、河野チルドレンはめちゃくちゃ多い。各県に一人以上いるかもしれない。
さすがに若干盛ったが、私も配信に出るたびにフィードバックをくれるサブスク「NAOYA GPT」があるなら入りたいくらいだ。

河野さんとの邂逅

そういえば、こんなことを思い出した。
河野さんが名古屋のプロアマリーグにゲストでいらっしゃったときの話。
打ち上げの席で様々な話で盛り上がった。

ポテトに手を伸ばした瞬間、電流が走った。
ふいに思い出したのだ。

「ホンイチ事件」である。

私がプロ入りした直後に、X(当時はTwitter)上でホンイチに物申したことがあった。

これがどの程度影響があったかはわからないが、数週間後に河野さんはホンイチを封印した。

日付をみると10日後だね。
私に脅迫めいたDMが届いたんだった。

その打ち上げは「ホンイチ事件」から一年以上の時が経過しており、私は全く忘れていた。のんきなもんだ。

前述の通り、ホンイチは河野さんがどうしても使いたくて使っているわけではない。
視聴者を楽しませるためのプロ意識。
トライ&エラーの1つに過ぎないのだ。

そんな苦悩を知らない外野の末端プロが偉そうに物申してきて、不快な思いをさせてしまったかもしれない。
ハッと我に返った私は、ポテトに向かっていた手を引っ込め、河野さんと真正面に向き合って言った。

「河野さん、今思い出したんですけど、俺河野さんに謝らないといけないことがあります」

河野さんは、それ以上の言葉は必要ないとばかりに右手で私を制した。

「わかっていますよ」

全てを悟っていた。
河野さんは、麻雀だけではなく、人の心も読めるのか。

ドリブンズのドキュメンタリーで、浅見さんの心中をしっかり聞いた上で、的確なアドバイスを送る河野さんの姿があった。
浅見さんも古くからの友人として、信頼を寄せているのが伝わってくる。

こんな私がMリーガーでいいのか…と悩める初年度の浅見さんの心理を河野さんが読み解いていく。
それは浅見さん自身も気付かなかった深い部分まで触れているように見えた。

河野「無駄な気遣いで距離を置いている感じがする。最高位戦内でもMリーガーはいっぱいいるけど、そんな気持ちでいた?
賢(園田)はスーパースターだから、Mリーガーになったからじゃなくね?賢は賢じゃね?」
浅見「賢は賢だね」
河野「だからみんな真紀は真紀なわけよ」

``熱狂``ドリブンズより抜粋

迷っているときに、これだけ自分の考えていることを理解して、意見を言ってくれる友人がいるって、どれだけ心強いだろうか。

解説の勉強をしているうちに、人の心も読めるようになるのか。
河野さんを見ているとそう思う。

強引に握手をしてもらい、わだかまりを消したつもりにはなっている。

河野さんはどう思っているかはわからない。
もしかしたら良くない感情が残っているのかもしれない。
私は人の心が読めないからわからない。

でも、それでいい。
読めなくていいと鉄壁保も言ってた。

少なくとも私の中で河野さんへのわだかまりは一切ない。
それどころか心から尊敬しているし、心から凄いと思っている。
相手がどう思おうと、それでいいじゃないか。

いずれ卓上で

そんな河野さんは今期のA2リーグを降級した。

ハート(いいね)の数が、河野さんの人柄と信頼を物語っている。

河野さんは当然ながら、選手としてもトップを目指す気持ちを強く持っている。
私の言語化=雀力理論からすると、トップクラスの実力を持っていることは間違いない。

だが時として無情な結果を突きつけてくるのが麻雀である。

人の気持ちがわかる男だからこそ、悔しいだろう。
応援してくれる人の気持ちが痛いほど伝わってくるから。
麻雀にかけるほとばしる熱量を持っているからこそ、悔しいだろう。
10年以上、A2リーグで踏ん張ってきたのだから。

どうにもならない一面を持っているのが麻雀の恐ろしいところでもあり面白いところ。筆舌に尽くしがたい悔しさが襲っただろうが、それでも河野さんは絶対にめげない。間違いなくここから這い上がってくるはずだ。

最高位戦にはこんなアチイ男がいる。
どうしても紹介したかったので記事にした。

私も尊敬する河野さんの1つ下のリーグまできた。
いつか戦ってみたい打ち手の一人である。


尊敬を通り越して怖くなってきますね。

天才+努力って感じしますね!

フォロワーの気を引くためにタイトルと序文をネガティブにしてしまってごめんなさい!

先日、「オフラインの勉強会は微妙」という記事を書いたけど、この2人に教わるのは凄いことなのかもしれませんね。

反響が大きくて嬉しいです。

瑠美さんまで!

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沖中祐也・zeRo
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