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私が過去イチ勉強になったのにも関わらず、あまり話題になっていない珠玉の戦術書を伝えたい

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群雄割拠

今、あらゆる出版社からたくさんの戦術書が出ている。
ちょっと前までは、出た本は大体チェックしてレビューしていた。

だが最近はチェックも追いつけないくらいのペースで発刊されている。それだけ新たに麻雀を始める人が増えたのだろう。

というのも、たくさん発刊されている本の中のほとんどが、初心者向けの本かMリーガーの本だからだ。

Mリーガーの出す本はファンブック的な側面がある。
さらに言うと、Mリーガーは麻雀を打つことが仕事であり、書くことは専門外である。
戦術に重きを置くというかは、Mリーグでの対局を元に、そのMリーガーが何を思ってどう選択したかをまとめている本がほとんどである。
麻雀要素を完全に切り離したエッセイ本も増えた。

結果的にライト層向けの本で溢れ、質の高い本格的な戦術書が出ていないのが現状と言えるのではないか。

良いとか悪いとかではなく、そういう傾向があるという話。
人の書いた本を例に出すとカドが立つので、自分が書いた本を紹介しよう。

今年発売された優さんとの共著「麻雀 攻撃特化の書」は、どうしても単なるファンブックにしたくなかった。
そこで攻撃というテーマに絞り、ためになる戦術をわかりやすく紹介。
練習問題もふんだんに盛り込んだ。
また優さんの魅力を存分に伝えるため会話調にしたり、飽きさせない文章構成を心がけた。

結果的に良い本に仕上がったと思うので是非読んでもらいたい。

とはいえ「戦術を解説する」と「優さんの魅力を伝える」は相反する要素である。優さんの魅力を伝えようと思うと、その分戦術に関しては薄くなり、その逆もしかり。
また、時系列順に紹介しているので、戦術書としてのまとまりがあるかというと、そうでもない。

このように、強くなりたいという一点においてはMリーガーの出す本は適していない可能性が高いのだ。

もちろん読みやすい親しみやすいなどのメリットはある。
炎上を未然に防ぐため何度も保険をかけるが、良い悪いではなくそういう性質があるということだ。

衝撃の一冊

そんな中で今年、運命的な本に出会った。
個人的に過去イチクラスに勉強になったし、読んだ時の衝撃は今でも残っている。

それにも関わらず、ほとんど話題に上っていない。

その本とはコチラ。

お知らせさんの最新著「鬼打ち天鳳位の麻雀 受けの真髄」である。

早速ポチろうとした方、落ち着いてほしい。
人によっては「2ページで挫折しました…」と言ってたし、「文章がかたすぎて無理…」とも言っている人もいた。

ようは合うかどうか個人差が激しい上に、注意事項があるのだ。
そこらへんをふまえてこの本を紹介していくので、確認してから買うかを決めてもらいたい。

人は攻めたい

「受けの真髄」の何が良いかというと、タイトル通り「受け(=守備)」に関して特化しているところである。

なぜそれが凄いのか。

① 守備はつまらない

通常、初心者には攻撃から教えるよね。
いきなり「牌の組み合わせ的に安全度が…」とベタオリから教えたら、麻雀の魅力はまるで伝わらないだろう。

マイナスをいかに減らすかなんて作業は、心理的に考えたくない。
守備はまるで面白くないのだ。

② でも現実の半分以上は守備

ところが実際の麻雀では、半分以上が守備だ。
面白くないとか関係ない。
単純計算で3/4は先制され、そのたびに押し引きを迫られる。

誰も学びたくないけどやたら重要な守備。
ここに麻雀成績向上の抜け道がある。

もちろん麻雀は総合力なのだが、一番重要であるのにも関わらず一番後回しにされる「受け」の技術を学ぶことは、本来なら優先度が何よりも高いはずである。

守備の本は売れない

私が金本さんに「守備の本を書きたいんですけど…」と頼んだら(プレゼンの仕方にもよるが)おそらく苦笑いされたあと、やんわりと断られるだろう。

なぜならやっぱりつまらないからだ。
つまらないから売れない。

これまでに何百冊と出ている戦術書の中で、守備に関して特化している本なんて、数冊しか思い浮かばない。

「読みの極意」とか「強者の選択」とか「だから君は負けるんです」などのキャッチーなタイトルの方が金本さんのセンサーに触れる。
売れそうな気がするのだ。

純度の高さ

「受けの真髄」の目次を見ていこう。

第一章はあたる形の種類に寄る放銃率だったり、安全度ランキングなど、ベタオリの基本が書かれている。
基本とはいえ

「この捨て牌のリーチに対し、この手牌を安全度の高い順番に並べよ」

という、お知らせ本おなじみの吐きそうになる練習問題を解く必要がある。

第二章はリーチに対しての受け。
そして第三章は↓

副露に対しての受けについて書かれている。
項目を見ると「ドラ1の2副露」や「濃い河の1副露」など、単に副露といっても状況を細かく分けて解説していることがわかる。

これで最後だけど、単なる押し引きだけでなく受け方にもいろいろあって「粘って形を意識するべきか中抜きするか」とか「吸収牌効率」とか、とにかく受けに特化した、濃い内容となっている。

覚悟してポチれ

ハッキリ言って、めちゃくちゃしんどい。
読んでいたのにいつの間にか寝ている。
むしろドリエル的な使い方が良いのかもしれない。

お知らせさんの文章は余計なことが書いてなくて、とても洗練されている。
しっかり理解しながら読もうとすると、数ページで吐き気をもよおしてくる。さきほどの手牌を並べる問題はしょっちゅう出てきて、確実にモチベーションを削いでくる。

気軽にポチろうと思わないでほしい。
麻雀マニアの私も、数日では完読できなかったほどにはシンドい。

だが、裏を返せばそれだけ内容が濃いということ。
読みとか牌効率などは抽象的で、かつ場況、点棒状況など変数が多く、正解が曖昧なことも多い。

だがオリに関しては正解がハッキリしていることが多く、これを百発百中で間違えないようにするだけで、確実に成績は向上する。

読むなら、メモとペンを用意して、本気で取り組んだほうがいい。
13枚並べる問題はしっかり書いて並べる。

まさに勉強。
一言一句理解しながら読み進めるのだ。

「受けの真髄」には、麻雀において一番大切なところが、純度の高い言葉で記されている。

一ヶ月かかってもいい。
全てを読み終える頃には、別人になっているはずだ。私が保証する。

過去イチ素晴らしい本、は誇張でもなんでもない。

いろんな本を読むのもいいが、これといった骨太の本を完全にマスターするまで読み込む、というのも効果的だと思っている。

そういう意味でこの本はぴったりだ。
しんどいかもしれないが、もとより上達に楽な道など存在しない。

本物の本への憧れ

あとがきで、お知らせさんは自分の好きなように書き殴ったと語っている。
きっと売れるとかどうとかは全く気にしていない。
売ろうともしていないし、実際にほとんど話題に上がっていない。

この本はやべー!と吹聴して回っているのは、今のところ私だけだ。

いいなー。
この本やウザク本など、後世に語り継がれるような本物の本を書いてみたい。

麻雀本に限らず、著者の一冊目は大抵面白いと言われている。
その人のこれまでの人生の全てが記されているからだ。

私の一冊目も、すぐに重板されるくらいのスマッシュヒットをしたし、今読んでも分かりやすくて面白い。

ただ、冒頭でも語ったけど、分かりやすさって濃さとトレードオフなので、浅く感じてしまう部分もある。
くだけた冗談も面白いのは1回目だけで、2回目以降は不要になる。

そういう意味で、いつか内容びっしりの本物の本を書きたい。
「受けの真髄」に通じるような守備をテーマにしたもので、自分なりの解釈を入れながら、もう少しわかりやすく書いてみようかな、とふと思ったのでした。

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沖中祐也・zeRo
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