高校生十段の素顔に迫る
【連続note 3日目】
サンキューたっきー
多喜田さんの語りに触発されたのもあり、10月は月100戦のペースで天鳳を打っている。
(たっきーポエム↓)
ポイントはじわじわ増えてはいるんだけど、たまにガツンと落とされて、ああこれが天鳳だなって懐かしい気分になる。
私は八段坂で戯れているわけだが、ちょっと前に高校生で十段になったというニュースが飛び込んできた。
月に527半荘という煉獄
1人は今年の1月。黒羽織さん。↓
リンクペタペタ貼りまくりで申し訳ないが、福地さんが黒羽織さんを取材している。↓
どんな成績なんだろうと調べてみたら驚愕した。
右から二番目の半荘数を見てほしい。
十段に昇段した2024年1月に527半荘打っている。
その前後の月も500半荘に迫る勢いだ。
私も天鳳に全てを捧げた時期はあったけど、それでも月200半荘を超えるかどうかくらいだった。
500半荘というと1日あたり16~17回打つペースになる。
生活は親が支えてくれて、学業以外の全てのリソースを投入できるから…と考えれば納得いくけど、やっぱり若さによるエネルギーが溢れているんだと推測する。
今私が、仕事も何もしなくていいから一ヶ月とにかく天鳳打ちなさい!と言われても500回は打てない。その半分も怪しい。すぐに疲れるし、ラスが連続するとモチベーションも落ちるからだ。
黒羽織さんは527半荘を安定11.783段で駆け抜け、あわや天鳳位という十段3395ptまで迫った。が、恐ろしいのはここから。
その後、六段までストレートに降段してしまったのだ。いわゆるチャオというやつである。
その後も九段になり、七段になりと、ジェットコースターのような段位遍歴を歩んでいる。
黒羽織さんのことは福地さんも取材しているので、ここらへんにしておこう。
初代高校生十段
今回、私が取材したのはもう一人の高校生十段、花道さんである。
花道さんは2年前に(公表されている中ではおそらく)初の高校生十段になった。
(追記・サンマでは先に別の方が十段になっていたとのこと)
黒羽織さんも凄かったが、彼も凄い。凄いというかやばい。
打数は黒羽織さんほどではないが、それでも300半荘固め打ちすることもあり、やはりほとばしるほどのエネルギーを感じる。
さらに花道さんは十段に2回復帰して、すでに合計3回の十段経験者となっている。
今、私は八段になってから1年以上の時が経過しているが、黒羽織さんや花道さんなら一ヶ月で切り抜けていくのだろう。
彼らだけ「精神と時の部屋」で打っているようなものだ。全くもって一緒の世界で打っている感じがしない。
そういや最近同卓しましたよね、と聞いても彼は覚えていなかった。
私からすると数半荘前の話なのだが、彼からすると100半荘近く前の話になるからだ。
よし、取材と称して強さの秘密を暴き、若いエキスを吸い取るとしよう。
昼下がりのマダムか。
まさかの陸上部
さっそくインタビューしていこう。
よろしくお願いします。
よろしくお願いします。
高校生で十段って、本当すごいなと思って取材をお願いしたのですが。
十段になったときは高校生でしたが、今はもう大学生なんですよね。
なるほど。たしかに2年前の話ですもんね。
では、どんな学生さんだったんですか?あ、今でも学生か。
うーん。自分ではよくわかりませんね。
普通と思うのですが。
部活は何をしていましたか?
小学校ではサッカー部、中学校では…
おっと、わかりますよ。バスケットボールですよね。
いや、陸上部です。
こんな名前していますが、バスケはあまりやったことがありません。
なんでやねーん!
IDの花道桜木は、天鳳のアカウントを作るときに、たまたま手元にSLAM DUNKのマンガがあったというだけで。
ーー陸上部では主に長距離の選手として活動していたという花道。
あ、そういえば今でもよく走っていますよね。
(ブルーハーツとはわかってるじゃねぇか)
長距離と天鳳って、共通点があるんですよ。
え、そうですか?
陸上ってスポーツの中でも実力ゲーと言われていて、理不尽なめくり合い負けとか、地蔵ラスとか、存在しないと思うんですが。
いや、そうなんですけど。
なんていうか、天鳳ってツラいことが多いじゃないですか。
基本的にポイントが減っていくシステムだし、対局中も大体先制されて、安全牌を探して…という。
たしかに。我々、よくこんなゲームをやってるよね。
それが…走っているときのシンドい感覚とリンクするんです。
シンドいけど、一歩ずつ踏み出していくしかない。
ライバルは昨日の自分というか。
ーー高校生の頃、本格的に麻雀をはじめた花道。
最初はパソコンについてる一人用の麻雀ゲームだったが、YouTube上でうにまるさんや平澤さんの動画で麻雀の基礎を学び、同時に天鳳の存在を知った。そしてその世界にどっぷりと浸かっていくことになる。
高校では部活は…
入っていませんでした。だから時間だけはたくさんあったんです。
同級生で麻雀打てる人はいなかったんですか?
いませんでした。だから、自分は天鳳しかやったことがないんですよ。
ーー当時の花道にとって、タブレットの中に広がる卓上が全てだった。
浴びるように麻雀を打ち、2年の時を経て鳳凰卓(七段)に到達する。
しかし、鳳凰卓は新参者に厳しかった。
すぐに六段に叩き落されたのだ。
全然勝てなかったですね。当時の自分は堅守速攻型で、よく鳴いて手数が多いタイプだったんです。
でもとある人のブログで運命が変わりました。
おっと、やめてくださいよ。恥ずかしいじゃないですか。
木原さんですね。
デスヨネー
木原さんのブロマガを購読するようになり、打点意識をはじめとする考え方に共感し、打ち方を大きく変えました。
あ、zeRoさんのnoteも読んでましたよ。
気を遣わせてしまった。
ーー木原さんのブロマガや、強者の牌譜から学び、鳳凰卓に復帰した花道。
打点を意識する打ち方はしっくりきたという。
2回目の鳳凰卓では戦えるようになり、そして勝てるようになってきた。
長距離走と同じだ。
大事なのは一歩であり、一打である。
今日踏んだ一歩は決して無駄にはならない。
こうして花道はとうとう前人未到の高校生十段の座につく。
最初の七段昇段が4月で、落ちてまた昇段したのが4月。
そして十段になったのが8月である。
その間、約1200半荘。
スピード感が半端ない。
あれ記録を見ると、そのあとに半年くらい全く打っていない空白の期間があるけど。
あ、そうか受験勉強したんだ!
いや、そういうわけではなくて、有効期限が切れちゃったんですね。
燃え尽き症候群というか、ちょうどモチベーションも落ちてきてしまい。
ーー大学に進学し、天鳳を再開。
以前ほどのペースではないものの、それでも月200本ペースで打ち続け、十段に2回返り咲いた。
やはり目指すは天鳳位ですか?
やっている以上はそうなるんですけど。明確な目標があるわけでもないです。
プロになることは考えていませんか?
よぎることはあるのですが、それで試験勉強をしたということもありません。
もし、少しでもプロになりたい気持ちがあるのなら、1日でも早いほうが良いですよ。早ければ早いほどチャンスは広がるので。
ありがとうございます。
こうして、インタビューは終わった。
その後、花道さんの牌譜を一緒に見たりして思考を聞いたのだが、良くも悪くも特徴がなかった。
私も木原門下なので、全く違和感がないように感じたのかもしれない。
打牌選択もほぼ一致して、ここまで書くことがないとは思わなかった。
感想
時代が生んだ寵児だな。
私も同じくらいの年齢のときに、浴びるように麻雀を打ってはいたが、当時ネット麻雀はなく、主戦場は家族麻雀だったりフリー雀荘だったりである。
相手のレベルにバラツキがあり、理論的に教えてくれる人もいなければ、牌譜を見返すこともできなかった。
同じ鬼打ちでも、その質が大きく違う。
十代の脳みそは柔らかく、吸収力が高い。
ゴールデンタイムと言うべきその時代に、エネルギーを麻雀へ全投入することにより、多くの人が一生をかけて得られる経験値をほんの数ヶ月で獲得したのだ。
「何百万本もうってきたシュートだ」
(流川楓)
きっとこれからも、もっと若いうちに活躍する人が出てくるだろう。
小学生天鳳位とか、中学生Mリーガーとか。
それだけの環境が整っていると言えるのだ。
ただ、話してみて花道さんが麻雀を続けていくかはわからないな、と感じた。
サッカー部から陸上部に変わったように、モチベーションが落ちて半年近く天鳳を休止したように、麻雀自体に飽きて辞めてしまうかもしれない。
若い子は流行りのゲームを次々と乗り換えていく。
同様に、麻雀もアンインストールするかもしれない。
いや、麻雀に限ってそんなことはないか。
あまり好ましい表現ではないが、麻雀の麻は麻薬の麻とも言われている。
私も様々なゲームに浮気した。
最近で言うとバックギャモンにポーカーか。
でも一番おもしろいのは麻雀であり、結局卓上に帰ってくる。
浴びるように打った経験が、
十段に到達したときの何物にも代え難い充足感が、目の前に迫った天鳳位を求める飢餓感が、
きっと花道さんを捕まえて離さないだろう。