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2020年8月21日 01:07
中学一年の夏のこと。知人の別荘へ何泊か遊びに行った。標高が高く、多湿で、真夏でも肌寒い別荘地だった。針葉樹が天を刺すように立ち並び、私有地を囲う深緑に苔むした石塀やその奥の小径を様々なキノコや植物が控えめに彩っていた。近所には古い教会なども建っており、私はこの地が大好きだった。そこを訪れて二日目の朝方、私は借りた赤い自転車のかごにカメラを入れて、ひぐらしの鳴き始めた別荘地をゆっくりと巡っていた