田中さんが課長の悪口言ってましたよ
ストーリー 第三者からの陰口
ある日の午後、斉藤課長は自分のデスクでパソコンに向かって仕事に没頭していた。突然、部下の竹園が話しかけてきた。
「課長、ちょっとお時間よろしいですか?」
斉藤は手を止め、竹園に顔を向けた。「どうしたの、竹園くん?」
「実は、ちょっと気になることがありまして…」
「何か問題でもあったの?」斉藤は心配そうに尋ねた。
竹園は少し言いにくそうに言葉を選びながら話し始めた。「田中さんがこの前、課長のことを不満に思ってるって言ってたんです。『課長はいつもパソコンばっかり触って、全然仕事手伝ってくれない』って…」
斉藤はその言葉を聞いて、一瞬凍りついた。心の中にモヤモヤとした感情が広がり始める。普段から部下たちの仕事を効率化するためにパソコンで資料を作成したり、データを分析したりしているつもりだったが、それが逆に不満を生んでいるとは思わなかった。
「そうなの…田中さんがそんなことを言っていたのね…」斉藤はため息をつきながら言った。
その姿を見て、竹園は「そうなんですよ。なので、注意した方がいいですよ。」と被せるように言った。
「わかったわ。どうするかはまた考えるから、竹園くんは仕事に戻って」
そう言うと、竹園は言いにくそうに「あの…。僕から聞いたってことは内緒にしておいてくださいね」と付け加え、自分の席に戻っていった。
斉藤は心の中で葛藤していた。自分はチームのために一生懸命働いていると思っていたが、それが正しく伝わっていないのかもしれない。しかし、どうすればいいのかわからず、もやもやとした気持ちが消えない。
その夜、斉藤は帰宅後も田中の言葉が頭から離れなかった。どうして自分の努力が認められないのか、自分のやり方が間違っているのか、次の日の朝まで悩み続けた。
解説
こういうことって、ありませんか?
第三者から自分の陰口を聞かされるのは、決して気分の良いものではありません。私も同じような経験があり、昔は対応が下手で、斉藤課長のように落ち込んでしんどくなっていたことを覚えています。
今回は、こんなときどうしたらいいかについて解説します。職場での陰口という前提を押さえた上で読んでください。
報告してきた本人がどう思ったかを聞く
まずは、報告してきた人の考えを聞いてみましょう。
「〇〇さんが陰口を言っていましたよ」という報告は、事実だけを伝えています。でも、その人がどう感じたかが重要です。コンサル業界でよく使われる「雲、雨、傘」の考え方のように、「事実、解釈、アクション」を見分けることが大事です。つまり、事実に対してその人がどう解釈し、どう感じたかを聞くことです。
竹園さんが田中さんの陰口をわざわざ報告しにきた理由を探るのがポイントです。人は感情が動いたからこそ話題にするので、その感情を深掘りすることが重要です。
本当に課長のことが心配で報告してくれたかもしれませんし、竹園さん自身も田中さんと同じように課長に対して不満を抱いていて、それを別の人が言っているのを聞いて、これ幸いと報告した可能性も考えられます。
後者の場合、竹園さんの考えを聞き返した時の反応である程度気づけると思います。その時は自分自身の考えをしっかりと伝えて話し合ってみてください。
職場での不満を聞いたからには
陰口を伝える人は、「私から聞いたってことは言わないでください」とよく言います。これは、聞かされた側にとっては辛い状況です。
部下が自分に対して不満を抱いていることを聞いた以上、できるだけ早く介入をした方が良いでしょう。仕事上の不満はできるだけ早く解決するに越したことはありません。
もちろん陰口を言っていたことを怒るのではなく、そのように感じていた理由を聞いて、自分なりの考えも伝え合う。そういうコミュニケーションを心がけてください。
誰から聞いたのかをどう伝えるか
「誰から聞いたのか?」という話題はデリケートです。
不満を言っている人が攻撃的な人の場合は、誰から聞いたかはオープンにしない方が良いかもしれません。しかし、「〇〇さんも心配していたよ」と正直に伝えた方が良い結果につながることが多いです。
大事なのは、感情を冷静に保ちながら、問題を解決しようとする姿勢を見せることです。相手がどう感じているかを理解し、自分の考えも伝えることで、より深いコミュニケーションができ、チームワークもよくなるはずです。
もちろん、伝え方が大事なのですが、これについてはまた別の機会にさせていただきます。
まとめ
陰口を聞いたときは、以下のポイントを押さえて対応しましょう。
報告してきた人の感情を理解する - なぜその人が報告してきたのかを探り、感情を深掘りする。
不満を抱いている人と直接話をする - 怒らずに、どうしてそのように感じたのかを聞き、自分の考えも伝える。
これらを意識することで、陰口による問題も前向きに解決できるようになるでしょう。
続き
翌日、斉藤課長はチーム全体のミーティングを開くことにした。目的は、オープンなコミュニケーションを促進し、チーム内の不満や問題点を解決することだった。
「みなさん、今日はちょっと特別なミーティングを開きます。最近、チーム内のコミュニケーションについて、いくつか気になることがあったので、みんなの意見を聞かせてもらいたいと思います。」
最初は緊張した空気が流れたが、斉藤は続けた。「私も忙しくて、パソコンに向かう時間が多くなってしまっているけれど、それが皆さんにとってどのように感じられているのか、率直な意見を聞かせてください。」
田中が最初に口を開いた。「正直に言いますと、課長がもっと直接的にサポートしてくれると助かります。パソコンでの仕事も大事なのはわかっているんですが、時々現場でのサポートが必要なんです。」
他のメンバーもそれに同意し、次々と自分の考えを述べ始めた。斉藤は全ての意見に耳を傾け、メモを取りながら真剣に聞いていた。
意見を一通り聞いた後、斉藤は静かに話し始めた。「皆さんの意見、本当にありがとう。皆が現場でのサポートを求めているのはよくわかったわ。でも、私も皆さんに伝えたいことがあるの。」
部屋の空気が一瞬静まり返った。
「私がパソコンに向かっているのは、ただデスクワークをしているだけじゃないの。皆の仕事を効率化するための資料を作ったり、データを分析したりしているの。さらに、現場の状況を上に報告して、より良い環境を作るための調整もしているのよ。これらは目に見えない仕事だけれど、チーム全体のために必要なことなの。」
田中は少し驚いた表情で「そうだったんですね…」と答えた。
「現場の仕事を手伝うことも大切だけれど、全体を把握してマネジメントするのも私の仕事なの。だから、皆が感じている不満や困っていることをもっとオープンに教えてほしいの。それを踏まえて、どうすれば現場のサポートをもっとできるか、一緒に考えていきたいと思っているの。」
他のメンバーも理解を示し、頷き始めた。斉藤は続けた。
「これからはもっと現場での時間も増やすようにするわ。でも、そのためには皆も私に情報をどんどん伝えてほしいの。私が全体の状況を把握しやすくなるように、協力してくれる?」
メンバー全員が肯定的に頷き、少しずつ雰囲気が和らいできた。
ミーティングの終わりに、斉藤は笑顔で言った。「これからもチーム一丸となって頑張りましょう。お互いに助け合いながら、より良い職場を作っていきましょうね。」
その日から、斉藤はパソコンでの作業時間を減らし、部下たちともっとコミュニケーションを取るよう心がけた。また、メンバーたちも自分たちの状況を積極的に斉藤に伝えるようになり、チームの雰囲気も少しずつ改善されていった。