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「自分で考えて」と言われた時の対処法ㅤー新社会人向けー

「迷える新人の一歩」

新入社員の佐藤は、最近仕事に行くのが憂鬱になっていた。最初は新しい環境にワクワクしていたが、今ではただただ疲れるばかりだ。原因は先輩の中村だ。佐藤は中村に仕事のことで相談するたびに、「〇〇だったんですけど、どうしたらいいですか?」と質問する。しかし返ってくるのはいつも同じ冷たい言葉だった。

「自分で考えてみて」

最初はその言葉を受け入れようと努力した。自分で考えることも大事だと頭では理解していたからだ。しかし、何度も同じ言葉が返ってくるうちに、佐藤の心は折れそうになっていた。「先輩は全然教えてくれない」という思いが強くなり、次第に相談すること自体が怖くなっていった。

ある日、そんな佐藤の様子を見かねた課長の田中が声をかけてきた。

「佐藤くん、最近元気がないね。何か困っていることがあるのかな?」

佐藤は思い切って、中村先輩とのやり取りを田中課長に話した。

「先輩に相談すると、いつも『自分で考えて』って言われるんです。自分で考えようとはしているんですが、どうしてもわからないことがあって…。でも、先輩は全然教えてくれないんです。」

田中課長は優しく微笑んだ。「それは辛いね。でも、少し工夫をすれば、きっと先輩も教えてくれるようになると思うよ。」

「工夫ですか?」

「そう。質問するときに、事実だけを伝えるのではなくて、自分の解釈や考えを一緒に伝えてみるんだ。たとえば、『この資料の分析結果がこうなったので、次にどの資料を参照すべきか悩んでいます。私はAを参考にしようと思いますが、それであっていますか?』といった具合にね。間違っていても構わない。自分の考えを加えることで、相手も答えやすくなるんだよ。」

佐藤はそのアドバイスに少し戸惑いながらも、次の日さっそく実践してみることにした。

いつものように中村先輩に相談する場面がやってきた。少し緊張しながらも、佐藤は田中課長の言葉を思い出し、自分の考えを交えて質問を投げかけた。

「中村先輩、このデータをまとめた結果、Aの手法を使って分析したんですけど、次にBの手法を試した方がいいでしょうか?それともCの手法が適していますか?」

すると、中村の反応がこれまでとは違った。

「お、いいね。そう考えたのはなぜ?」中村は佐藤の考えを丁寧に聞いてくれ、さらにアドバイスまでしてくれたのだ。佐藤は驚きつつも、その日の仕事が少しだけ楽しく感じられた。

その後も佐藤は田中課長のアドバイスを守り続けた。すると、中村とのやり取りも次第にスムーズになり、仕事の進め方も以前よりも自信を持って進められるようになった。


解説

佐藤くんのように、何かを質問するときにただ「わかりません」と伝えるだけでは、相手からの返答も限られてしまいます。

中村先輩は佐藤くんに自分で考えさせたかったのです。一方で佐藤くんは全てがわからないわけではなく、わかっている部分も少なからずあったのです。

自分の考えに自信がなく、全面的に相手の考えを聞こうとする姿勢が、中村先輩からしたら何も考えていないかのように写ってしまったのです。

大切なのは、自分なりにわかっていることを言語化して、わからないことが何なのかも頑張って言語化して質問することです。

たとえば「この資料をここまで整理しましたが、この部分の解釈がよくわかりません」といった形で、自分の理解の範囲を示し、その上でどこに困難を感じているかを具体的に述べることで、円滑なコミュニケーションが可能になります。

これを実践することで、相手も「この部分を補足すればいいんだな」と具体的なサポートをしやすくなります。結果的に、自分自身もスキルアップにつながり、相手との関係性も良くなるでしょう。

もちろん、何がわからないのかもわからない時もあると思います。そのときは考えてみたけれど、何がわからないのかもわからないと正直に伝えることも一つの手段だと思います。

案外、相手の言動や態度は自分の話し方で大きく変わることが多いです。コミュニケーションは、相手の問題だけでなく双方向のものです。

相手により理解してもらうためにも、自分の考えや解釈をしっかりと伝えることが大切です。

難しいかもしれませんが、頑張って言語化する練習をしていってくださいね。

そんな言語化の練習をしたい人や、コミュニケーションで悩みを抱えている方はメンバーシップがおすすめです。

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産業医|平井
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