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トラックドライバー怪談4「黒いネクタイ」

※星野しづくさんのYou TubeCH『不思議の館』にて紹介した、トラックにまつわる怪談をまとめました。実体験やドライバー仲間から聞いた話がメインです。
又聞きしたりもするので真意不明な話もありますがご了承ください。

『黒いネクタイ(セキュリティ)』
      ※
これは、僕の会社の先輩である、黒岩さん(仮名)から聞いた話。

この会社に来る前、黒岩さんは、別の運送会社で働いていた。
その会社は食品輸送の会社で、大手スーパーに食品を輸送する仕事を請け負っていた。
当時、黒岩さんは深夜帯のルートを任されており、そのスーパーに納品に来たのは深夜2時頃。
荷台後方の観音扉を開け、バック入庫でバースに着車させると、階段を上がりバースに昇る。
荷台からロールパレット(車輪が着いたパレット)を引っ張り出してシャッターの前に置き、セキュリティキーを使い店内のセキュリティシステムを解除する。
シャッター脇のドアから中に入ると、電気を点けてシャッターを上げる。
卵を満載したロールパレット引っ張り、所定の場所に置こうした時、黒岩さんの視界に奇妙な物が入ってきた。

磨かれた床の上に落ちた、黒いネクタイ。
葬式などに着けていく、あの黒いネクタイが何故かポツンと床に落ちていた。
しかも、まるで外したばかりのように首の形の輪になって。

なんでこんなとこにネクタイあるんだよ…誰かがいたずらで天井にでも吊るして、それが落ちてきたのか?

そんな事を思ったが、そもそも、スーパーの天井は高いし、そんないたずらをする奴はいる訳がないか…とも思い直す。

それを考えているうちに、何やら薄ら寒いものが背中に走って、黒岩さんは慌ててトラックに戻り、2台目のロールパレットを荷台から引っ張りだして、慌てて所定の場所に運ぶ。

搬入が終わると、受領印が必要になる。
だが、深夜は従業員がいないので、バックヤードのデスクにある印鑑を、自分で押さなければならない。
黒岩さんはいそいそと印鑑を押して、トラックに戻ろうと先程の場所を通りかかった…
そして、思わずギョッとした。

先ほどそこの床に落ちていたはずのあの黒いネクタイが、そこから消えていたからだ…

「えぇ!??何でないの!?」

そもそも深夜のスーパーマーケット。
出入り口といえば先ほど黒岩さんが開けたバースのシャッターしかない。
今現在黒岩さんがいる場所は、開いているシャッターのほぼ目の前。
誰かが入って来れば確実に分かる。
その上、足音も人の気配もしなかった。
万が一閉店後のスーパーに誰かが潜んだとしても、セキュリティをかけた瞬間に警報装置が鳴ってしまう。
だからこそ、誰かが潜んでいるなんてことはありえないのだ。
夜間警備用のセキュリティシステムというものは、本当に高性能なのだ。

黒岩さんは怖くなって、バースに向かって走ろうとした。
その瞬間、突然、点いていた電気が勝手に消えた。

「ひっ!」

変な悲鳴を上げ、黒岩さんは、慌ててバースのシャッターを下ろすと、その脇のドアから外に出て、急いでセキュリティーをかけた。
しかしセキュリティは無反応。
つまり店内にはもう誰もいないということだ…

「一体あれは何だったんだろう…」

黒岩さんはタバコを吸いながら、どこか引きつった笑いをして、そう話してくれた。

【END】







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