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『ワイルド・ローズ』

原題「WILD ROSE」

◆あらすじ◆
英国スコットランドのグラスゴー。麻薬密輸の罪による1年間の服役を終えたばかりのローズ=リン・ハーラン。2人の幼い子どもを抱えるシングルマザーでありなが、未だにカントリー歌手になる夢を捨てきれず、子どもたちの世話も母親のマリオンに任せきり。やがてお金持ちのスザンナの家で清掃の仕事を得たローズは、ひょんなことからカントリー音楽好きのスザンナに歌の才能を認められる。そんなスザンナの後押しを受け、少しずつ夢に近づいていくローズだったが…。


主人公のローズリーは若くして二人の子供を持つシングルマザー。
前半は【軽薄な嘘】を吐き続ける彼女の言動や育児放棄、歌手と言う夢を追う事だけに執着する無責任さにイラつく。

イギリスはグラスゴーが舞台だがグラスゴーと言えば『ベル・アンド・セバスチャン』『トラヴィス』『アズテック・カメラ』『プライマル・スクリーム』等、挙げ出したらキリが無いほど数々の有名バンドを輩出した都市だ。

そんな中、彼女が目指すはアメリカを代表する音楽『カントリー』。
「こんな街じゃ成功出来ない」とカントリーの聖地ナッシュビルを目指す。

まぁ、なにせ前科もあり低所得な層なので何事もそう簡単にはいかない。寧ろ自分をそんな環境に置いたのは自分自身の行いのせいだとは全く感じていない様子。
何でも人のせいで自分はちっとも悪くないって勘違い野郎(今回は女子だけど)マジムカつく。誰からも信用されなくなる。

で、子供と母親から愛想尽かされて自分の身の上を隠し清掃の職に就く。

そこの雇い主が凄くイイ人でねぇ・・・。
自分も夫もローズリーと同じ様な環境から脱し今は裕福な暮らしを手に入れたんだって…語るのよ、しみじみね。
ローズリーになんとかチャンスを掴んで欲しいと尽力してくれるんだよね。その相手が嘘つきで適当に人生歩んで来たって知らずにね。

そう、どんなにイラついてもローズリーが夢を生きがいにする姿は否定できないってのがこの作品のテーマでもあり前提だからね。

そんな周囲の温かさや援助に彼女がどう答えを出すのか?と言う点にこの物語の意義が見える。
自分の人生をきちんと生きたかったら全ては自分の責任だって事!
逃げ場ばかりを作ってるといざって時に虚言が手枷足枷になるんだよ。


注目してたジェシー・バックリーの歌唱と演技は圧巻だ。彼女が歌うシーンは何故か涙が溢れてしまう程だ。

ジェシーはちょっと前に公開された『ジュディ 虹の彼方に』でジュディ・ガーランドのロンドン公演のマネージャーだかなんだかの役だったんだけどその時の彼女が凄く毅然としてて良かったから今作も観たいって思ったんだけどこっちの方が海外での公開は先だったんだね。
いやぁ、ローズリーって女性の酸いも甘いも物凄く繊細に演じててゾッコンだった。
彼女が最高に素晴らしく演じたからこそ、その生き方に本気でイラついたしラストは心底嬉しかった。

自分の居場所やアイデンティティを見出す作品はやっぱり魅せられる。

この作品に関して言えば、あの歌唱力が在ってこその説得力だね。


BBCのボブ・ハリスが言った「グラスゴーじゃダメなの?」って言葉が彼女の脳裏にずっと残ってたんだとしたらあのシーンの価値は絶大だね。
御本人登場でビックリだわよっ!ww

もう1人、ローズリーの母親をジュリー・ウォルターズが演じてるんだけどこれがまた素晴らしいの一言!この娘を自分が育てた責任を最後まで果たそうとする。そうは語らないけどその意思を感じられる気迫があったなぁ。

本筋は正直目新しさは無いけどテンポもイイし全体の纏め方も上手い。

【挫折と再生はセット】なんだって事、しっかり伝えてくれてる。

とにかくあの歌唱を聴くだけでも十分価値があるね。
お見事でした!!


2020/06/28


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