映画感想『渇きと偽り』
原題「THE DRY」
良く作られた作品だ。
個人的に大好きな『アニマル・キングダム』『奪還者』『ニトラム』などオーストラリア発のクライムサスペンスはいつも重厚且つ丁寧に作られた印象を受けるが今作も同様、過去と現在に起こった二つの事件が交錯しながら時間を掛け丁寧に紐解かれる力作だ。
手がかりを出していくペース配分の駆け引きが巧みで、それ故緊張感が最後まで持続する。
観る側に二転三転と軽いジャブ程度に揺さぶりを掛けてくる辺りはなかなか侮れない。
過去の事件はアーロンの回想だからその中でも時系列が前後する感覚がある。
でも、決して複雑怪奇な情報提供の仕方はせずコチラの集中力を上げてくる手法…憎いわ。
田舎町の閉塞感、生活の生々しさ、荒涼とした大地・・・異常気象の干ばつと回想シーンの瑞々しい川や泉の対照はオーストラリアが今抱える問題も然る事ながらサスペンスに収まらない現地球上の異常さを表している。
主演のエリック・バナが冷静に振る舞う中に主人公が抱える罪悪感や躊躇い、悲痛までをも見事に演じていて素晴らしかった。
10代でやむなく故郷を離れ、そしてラストでは今また失われた故郷に虚しさが過る。
やっぱりオーストラリア映画好きだわ。
エディ・バルー演じるパブの髭オヤジがイイ味だしてたなぁ。
それと回想のキャンプファイアーシーンでベベ・ベッテンコートが歌う『Under The Milky Way』があまりに美しくてめちゃくちゃ刺さったよ。
2022/09/30
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?