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映画感想『落下の解剖学』
原題「仏 ANATOMIE D'UNE CHUTE/英 ANATOMY OF A FALL」
◆あらすじ◆
雪深い人里離れた山荘で、視覚障がいのある11歳の少年が、転落死した父の死体を発見する。最初は事故死かと思われたが、捜査が進むにつれていくつもの謎浮かび上がり、やがてベストセラー作家の妻サンドラが殺人の容疑で起訴される。裁判が始まると、検察の容赦ない追及によって、幸せそうに見えた家族と夫婦の秘密が次々と暴かれていくのだったが…。
前半で問題提起し後半の法廷劇で魅せる。
監督でもあるジュスティーヌ・トリエとアルチュール・アラリコンビの脚本がとにかく冴え渡ってる。
このお二人、実生活でもパートナーという事で前作から引き続きの共同脚本なんだそうな。
物証が無く状況証拠のみでの裁判だが様々な事実が出てくる中、妻が夫を殺したのか否か?と裁判の行方は大きく揺さぶられ、最後の最後まで緊張感に満ちた仕上がりは見事。
が、今作の評価されるべき点はどうやら違う所にあるようだ。
それは人間同士(夫婦や元恋人、親子など)の揺れ動く関係性や確証の無い事柄への判断基準など表面上では見えない感情への言及だ。
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今作の例で言えば、一つは愛し合い結婚した夫婦と言えど月日が経てばその思いや感情は次第に形を変えていく。言い争いが起こり時には暴力に発展するという事。
次に世間から標的にされる人物像の描き方。
裁判中、検事側の執拗な攻撃は妻であるサンドラのセクシャリティや女性ながら仕事の成功を収めている事などに絡ませてくる。
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『BPM ビート・パー・ミニット』のチボー役だったわ。
それと、ドイツ出身のサンドラは過去にロンドンに住んでいた事から英語を話すが現在住んでいるのはフランスのグルノーブルに近い山荘。
フランス語はまだまだ苦手と言う設定で劇中言語がコロコロ変わる。
この言葉の設定もなかなか興味深い演出だった。
第一言語とそうでない言語でのストレスの表現が面白かったなぁ。
裁判ともなれば自分の伝えたい“想い”のニュアンスにとって言語は非常に大事だもんな。
なんかサンドラがその言語の得手不得手を巧みに使いこなした感も感じなくはない。
そして何より真相への曖昧さを残したラストが秀逸なのだ!
人間の判断能力や基準など常に曖昧で何を以ってその結論に達するのか?
今作では息子ダニエルが鍵となるが【子供は無垢】と言うステレオタイプを子供が利用している様にも思えるラストにはちょっと震えた。
愛犬スヌープの嘔吐の一件はちょっとギョッとしたけどね。
あんなエピソード良く考え付くなって思ったよ。
果たしてこの結論が真実なのか否か?
妻は殺ったかやってないか?
観客の誰もが疑問を抱えたまま劇場を後にすることになる結末は今までに経験したことの無い感情を齎してくれた。
全てに曖昧さを置き去りにしてくれたもんだからエンドロール中脳内大忙しだったわ!www
主役のサンドラ・ヒュラーは『アイム・ユア・マン 恋人はアンドロイド』しか観てないのだが主演の今作は素晴らしかった。彼女の言動が犯人でも無実でも納得してしまう両性具有的な立ち位置の表現が見事。母として、女性として、仕事人として・・・どの顔も偽りがある様で無いかも?と思わせる狭間の表現・・・イイ。
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そしてその主演を凌駕するほどの存在感を見せたのが視覚障害を持つ息子役のミロ・マシャド・グラネール君と愛犬スヌープ役のボーダーコリー“メッシ”だ。
この一人と一匹が見事過ぎた。
ワンちゃんはパルムドッグ賞獲得だワン。さすがっス。
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とても【曖昧さの表現】の完成度が高い秀作でした。
てかさぁ、この42歳イケおじ・スワン・アルロー(ヴィンセント役)がなかなか艶系だったんじゃない?
何度か元恋人?サンドラとイイ雰囲気醸し出したけどサンドラはそこも加味してこの人を弁護人に選んだよね?そうだよね?
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