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はじめての声優学入門*6時限目「キャラクターの声を出す為の知るべき声帯の厚み!?」

6時限目の講義のお時間です、今週も楽しく学んでいきましょう、レッツラゴー!

今回は前回お話しした3つの音声学の分野「調音音声学」「音響音声学」「知覚音声学」 からまず「調音音声学」を応用し考える声優技術についてお話ししたいと思います。かなり核となる重要な内容になりますよ!


●調音音声学とは
まず調音とは「ある音声を発するために、声門より上の音声器官を閉鎖したり狭めたりすること」です。よって調音音声学とは発声をする際に舌、唇、口蓋帆などがどのように動いているかを研究する学問です。一例を挙げれば地球上の多様な言語の発音や日本国内だけでも各地域の○○弁がどのような調音で発声されているかの研究などになります。

✴︎これを声優さんの技術に置き換えると
声優さんや声優を目指す方は色々なキャラクターの感情や声に挑戦しますよね?その際に一生懸命そのキャラクターや感情に聴こえるようにモノマネしたり、研究したりと努力していると思いますが、その努力とは何をしているかわかりますか?ズバリ各発声器官の調整です。台本を読み込み登場人物の心情を考えて声にする練習をしますよね、最終的にその心情の声になっているかどうかは発声器官がそのような調整になっているかどうかになります。

調音音声学とは声優学ではキャラクターの感情や声を演じる際に自身の各発声器官がどのような調音を行っているのかを知る学問と言って良いでしょう。


●声に関わる発声器官を知って得する事

もしも感覚的に発声器官の調整ができて少し練習すれば思い通りのキャラクターの感情や声が多彩に出せてしまう方は才能があると言って良いでしょう。しかしそんな方ばかりでもないと思いますし、ある程度自分の声に近いと真似しやすい声とかはあるんだけどなーって方もいると思います。

もちろんモノマネの練習をする事はとても有効です。なぜなら声は耳で聴いたものを再現する能力だからです。しかし、誰しもが最初から上手にモノマネをできる訳ではないので、そう言った方は感覚のみで努力していると中々に時間がかかったり、努力をしてもさっぱりできるようにならない事もあるやもです。

具体的に声色に関わる発声器官の種類を知る事で、どのように発声器官を使えばそのキャラクターに聴こえるのか、何が自分の目指す声に足りないのか、どんなトレーニングをすれば良いのかがわかってきます!!

それは感覚的に目指すより、目標とやるべき道のりが明確になるとは思いませんか?効率的な労力、時間の費やし方に繋がると思いませんか?それはモチベーションアップにつながると思いませんか?

それでは!「発声器官の種類」と「各々をどのように組み合わせるとどんなキャラクターや感情に聴こえるか」を見ていきましょう!
これは発声生理学と言った分野にもなってきます。


●声色に関わる発声器官の種類
①声帯の厚み
②喉頭の位置
③仮声帯の開閉
④口蓋帆の位置
⑤舌の位置
⑥唇の開閉

厳密に言うともっともっと細かな場所や筋肉が関わっているのですが(内喉頭筋群とか外喉頭筋群とか被裂喉頭蓋ヒダとか)まずは基礎として上記6つを押さえていきましょう。この6箇所を自在に扱えるようになるだけでも相当声色は作ることができますから。

ちなみにこのうち上記を調整するとどんな声ができるか、実践してみました。(動画の表記では唇の開閉は入れず5箇所の発声器官の調整になっています)

各発声器官の調整の組み合わせ、いわば声色作成のレシピという考えができます。レシピがわかり、その材料を巧みに扱えれば色々な声に挑戦できると思います。
1つ1つを簡略化して話しても今回の講義1回で全ての器官の話をする事は難しいですし、各発声器官のそれぞれがどんな動きをしてどんな声色になるかを知る事は重要ですので焦らず1箇所ずつ話していきたいと思います。

それではこの時間ではまず「①声帯の厚み」 を説明していきます!


①声帯の厚み
声帯には厚みがあります。初めて聞いたと言う人も多いのではないでしょうか?大体「声」と言うと「地声」「裏声」「ミックスボイス」と言った区分をしていると思います。

では、次の音声を聴いて地声か裏声かミックスボイスでそれぞれを答えてみてください。

いかがでしょうか?
音程は全て同じです。3番目でさえ裏声には聞こえないのではないでしょうか?全て地声に思える人も多いでしょうか?でも声質は明らかに違いますよね?ではこの3つの違いはなんなのでしょう?人によっては「暗めの地声」「明るめの地声」「息多めの地声」などど答えたくなるかもです。この答えになるのが「声帯の厚み」なんです!

1番目の発声から順番に声帯が厚い→薄くなっています。すると声質も変化していきます。

声帯は振動を起こす際に下記の図のように厚さを変える事が可能です。

どんどん厚い方から薄い方へ変えていくと息漏れの多い声になっていきます。

実はもう1つ声帯の扱い方があり声帯を緩め弛ませていくと言うものがあります。声帯を緩ませていくとガタガタという音が入ります。これはエッジボイスとも言います。参考音源以下になります。

平井堅さんや宇多田ヒカルさん始め多くのシンガーが巧みにこのエッジボイスを表現としても取り入れていますよね。ため息とかイメージしてもいいかもです。

さてこの声帯の厚みを声優さんの技術においてどのように使われているかをあげると

例えば
男性キャラであれば
・「声帯厚め」→男っぽい、野太い、強い、体格大きい、おじさんなど
・「声帯薄め」→中性的、爽やか、キラキラ高校生、子供、妖精系など
・「声帯弛緩」→おじいちゃん、悪者でダミ声な感じなど

女性キャラであれば
・「声帯厚め」→少年、ボーイッシュ女子、司令官系、お母さん、おばさんなど
・「声帯薄め」→一般的女子キャラ、子供、妖精系など
・「声帯更に薄め」→ひつじ系、超おっとり系、自信ない系など
・「声帯弛緩」→おばあちゃんなど

になります。

声帯は生物学的に男性の声帯よりも女性の声帯の方が薄く、小さく、短い作りをしています。更に成人よりも子供の方が声帯は薄く、小さく、短くなります。(もちろん個人差はありますが)

声帯が薄く、小さく、短ければ声質は高くなる傾向がありますので、年齢や性別やキャラ感を出すのに「声帯の厚みの調整」を多くの声優さんがしている訳です!(おそらく無意識に)

プロは多くの方が無意識にイメージしたものや耳で聞いたことのあるキャラクターを再現できます。実際には声帯の厚みを変化させているのが調整の1つですので、声優を目指す方で中々キャラクターの幅が狭いという方は、ご自身の普段使って慣れている声帯の厚みだけでなく色々と厚みを変化させて発声できるようなトレーニングをすればキャラクターの幅を増やすことに繋がります!

自身が無意識に発声する時に自分の声帯をどんな厚みで振動させている傾向があるか、また元々持っている自分の声帯が大きめか、小さめか厚めか薄めかを知ることも自分のまずはやりやすいキャラを見つける助けにもなると思います(わかるボイストレーナーに相談だ!)

あとおばあちゃん、おじいちゃんキャラクターの声ですが、実際に年齢を重ねていくとツルッとしていた声帯の表面は老化してガタガタとしてきます。この現象により声帯はしっかり閉鎖が出来ないため息が不規則に漏れて、少しガラガラしたダミ声のような声になります。この特徴をまだ声帯の表面が老化していない年齢の方が演じる時に声帯を弛緩させることで、息が不規則に声帯から漏れてダミ声のような声を再現すると言うことをしてるんですねー。


さあ、いかがでしたでしょうか?声帯の厚みと言う考え方を知る事でキャラクター声の作り方の材料の1つが見えてきました!これは歌において高音を出していく時にも必須の技術になりますので押さえておきましょう!

それでは今回の講義はこの辺で終了です。
7時限目の授業まで各自休憩くだされ、アディオスパンパミーヨ!




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