はじめての声優学入門*入学式
「はじめての声優学入門」を手にとって頂き(手にとってはないですね)ありがとうございます。
今回からスタートする「はじめての声優学入門」。これは声優さんが行う【声の技能】とは具体的になんなのか?何をどのようにできるようになればいいのか?そんな疑問を音声学、言語学、発声生理学などの科学に基づいて解説していこうと思う企画/連載です。これから声優を目指す方への入門書やバイブルになったら嬉しいです!まずは誰が読んでくれるんだって感じですが(苦笑)
読んでくれる人がいると信じ、次回から1時限目として声優技術の内容を書き進めて行きますが、今回は入学式と題して、いわゆる本でいう「はじめに」と言ったものを書こうかと思います。
まずは自己紹介します!
今これを深夜に思い立ちカタカタと書いている(打っている)筆者の僕は長塚全(ながつかぜん)と言います。普段はボイスディレクター/トレーナーをしています。ボイスディレクターって何?って思う方もいるかと思いますが、わかりやすく言えばボイストレーナーです(笑)が、周りの方から「全先生は一般的に言うボイストレーナーって肩書きともちょっと違う事してる」と言われるのでじゃあ何て言えばいいんだろうと考えて、少し変えてボイスディレクターと名乗ってみてます。僕的にもちょっと違う感じを醸し出したい願望もあり。。しかし実際に肩書きを名乗る現場だと説明が長くなると申し訳ないんで結局「ボイストレーナーの長塚です」って名乗る事が多いですけどね(笑)そのちょっと違う事してるって何をしてるのか?まさか料理を作りながら音声指導するなんて事はないですよ(笑)詳しくはこの「はじめての声優学入門」で書いていく内容になると思いますが、金沢工業大学の高野佐代子先生、土田義郎先生と音声に関して(伝わる避難放送の為のボイストレーニングシステムの構築 他)の研究を一緒にさせてもらったり、今年初めての正式な論文も書き発表したりもしてます!
僕の毎日は担当してる方々にレッスンレッスンレッスンがメインで1日9時間、10時間ぶっ続けレッスンなんて毎日。生徒さんはプロのボーカリスト、ジャンルは様々でポップ、ロック、R&Bはもちろんのこと地唄の家元さんなどもいらっしゃいます。そして現在僕の担当する方のおそらく半数以上を占めるのが「声優」をされている方、目指す方なんです。
僕自身は声優業は経験したことがないのに、なぜ生徒さんに声優さんが多いかと言うと、声優さんや声優事務所さんの紹介の紹介のまた紹介があるからって理由はもちろんあるのですが、僕がボーカルだけでなく演技をしていた経験があるので(2.5次元の舞台なんかも/TIGER & BUNNY THE LIVE,緋色の欠片)演技時の音声の事もわかる、相談できると言うのが大きいのかも知れません。アニメも昔から大好きですよ!
ボイストレーナーと言うとボーカルをされている方が多く、あまり演技系の人は多くないかと思います。声優出身の先生はボイストレーナーではなく演技の先生をされてる方が多いですし、まして音声研究して論文書いてる人は少ないので確かに珍しい部類かも知れません。
ボイストレーニングと言うと一般的には歌を歌う為に行ったり、演技時の発声を良くする為に行う事がメインかと思います。それはもちろんやりますが、僕のレッスンではどうすれば巧みな「感情のこもった演技」や「多彩なキャラクターの声」が出せるのかを音声学や言語学、発声生理学、心理学など科学的知見から音声を分析し教えています。
その内容を今回公開していこうと言うわけです。
なぜ今回その内容を書いていこうと思ったかと言いますと、近年声優を目指す方は本当に多くなりました、専門学校などでも音楽系の志望者は減っているが声優志望者は増えているとも聞きました。そんな中まだ声優技術というものが科学的に何なのか?がまとめられておらず、感覚的、曖昧なイメージになり、少々習う時に生徒さんとしては捉えにくいかなと思っておりまして、未来のアニメ業界を担う若者たちへもう少し具体的に声優技術を解説する入門書があったらいいなと思ったからなんです。あといずれ本を出したいと言う夢もあり書くことに慣れていこうと言う練習もあります(笑)(上手く書けたらうちから声優学入門出しませんか~って出版社さん求む。。m(__)m)
またタイトルにも入っている「声優学」と言った言葉は正式な学問としては存在しませんが、言葉を使った声優技能・芸術の研究は人類の持つ言葉や音声の特徴を知る上でも非常に有効な手段であると考えます。「声優学」を自立した学問として世に確立できるかの挑戦もこの連載の目的の1つです。
ちなみに「声優学」といった言葉は声優技能の分析や芸能音声教育の発展にお力添えいただいている慶應義塾大学言語文化研究所の川原繁人先生が著書『言語学者、外の世界へ羽ばたく~ラッパー・声優・歌手とのコラボからプリキュア・ポケモン名の分析まで~』 (リベラルアーツコトバ双書 2) で書かれていた言葉で、そこから拝借仕りました。この本の第6章には川原先生と僕の声優技術発展への取り組みのお話も書いて頂いているんです!!川原先生の音声学、言語学の研究や考えには多く影響を受けておりまして指導内容に応用してる事も多数です。むしろそこから僕のレッスンは進化しているといっても過言ではない。そんな内容もたくさん書いていこうと思ってます!
さてそろそろ入学式も締めの挨拶に入ります。入学式と書いたものの、全く入学式っぽい感じはありませんでしたね(笑)、さておき「声優学」を学びたい方は誰でも入学ウェルカムですからね、次回から共に楽しんで「声優学」を学んでいきましょう!!!