『禅的リトリート』スイスで初開催ー参加者様のご感想 Vol.3
今回初の海外開催となった、スイスでの「禅的リトリート(2024年4月12日〜14日の2泊3日)」。ご参加された、みゆきさんの感想をお届けします。
ーーみゆきさんはスイス人のご主人と26年前に結婚され、以来ずっとスイスにお住まいです。お1人いる娘さんもスイス在住ですが既に社会人として独立され、みゆきさんはご主人との2人暮らし。
今回禅的リトリートに参加されたことで、みゆきさんの中に起こった大きな変化。それは、彼女にとって最も近い人のひとりであるご自身のお母様、そしてご主人様との関係でした。
「リトリート後からはほぼ毎日、近くの森へ早朝散歩に出かけています。健康を意識してではなくて、様々な生き物が暮らしているあの静かな森の中を歩いていると、自分の頭の中が整理されていくような気がするからです。
以前はそういうことを考えたり、また実行する人間でもなかったので、親しい友人に森散歩の話をしたら大笑いされたくらいですよ」
「散歩のお陰もあるのか、睡眠の質も良くなりました。以前はベッドに入ってもなかなか寝付けなかったのが、今はすぐに眠れる上に寝起きも爽やかで、ぐっすり眠った充足感があります。
音にも敏感になって、これまで気にも留めなかった鳥のさえずりや、風が木を揺らす音が心地よく感じられて、逆に自動車の音は不快に感じるようになりました」
ーーひとたび研ぎ澄まされた感覚が心だけでなく身体にも変化をもたらしたのでしょう。ご自身でもその変わり様に驚きながら、さらに充実した楽しい日々を送っているそうです。
まるで臨終体験をして生き返ったー。
「ちょうどあの体験から2か月経ちますが、今でも時々思い出すシーンがあります。初日のワークで参加者の皆が、横たわる私の身体に手をあてて掌からパワーを送ってくれた時のことです。
ワークが終わって目を開けると、私をのぞき込む皆の優しい顔があって、死ぬときはこんな感じなのかなぁと思ったんです。あの時自然と涙が溢れてきて、まるで臨終体験をしているみたいでした。
そして2日目の夜のことです。私、普段はよくお酒を飲むんですが、リトリートの懇親会の時にメンバーの一人が持ってきてくれた日本酒をほんの利き酒程度口にしただけなのに、急に気分が悪くなってしまって……。這うようにして自宅へ帰り、眠りにつくまで気分が悪く辛い思いをしました。
でも、次の日目が覚めると、見るものひとつひとつがキラキラと輝いて見えて、『本当に今までの自分と同じ目で見ているの? 同じ自分なの?』ととても不思議な感覚がしたのです。
まるで、初日に臨終体験をして、2日目に過去の私が一度死に、新しく生まれ変わった私が3日目の朝に現れたみたいに。『生まれ変わるような体験』とはよく言いますが、本当に生まれ変わることができたんだ、と感動しましたね」
ーー「手当て」という言葉があるように、人の手には不思議な力があります。
自分の持つ力や気持ちを「手」にのせて人に伝えるワークショップでは、これまでも多くの方々が「目に見えないパワーをもらった」と仰いますが、みゆきさんは、臨終体験から生まれ変わるような体験をされたのですね。
そしてそんなみゆきさんには、ずっと昔からわだかまりのあった自身のお母様との関係に、ある変化が起こっていきます。
一本の電話
「数週間前に日本に住んでいる母から電話がありました。用件は、母の誕生日に孫が電話をくれて嬉しかったという内容です。3人いる孫の中で、唯一、一番遠くに住んでいる私の娘からお誕生日のお祝いコールがあったというのです。
『何であの子だけそんな優しい子に育ったのか?』と、母が尋ねるので、『親が私だから』と冗談半分に言ったら、母も『そうね…』と納得するのです。
母にこんな冗談を言うなんて、これまでの私ではありえません。それは私にとって本当に大きなことで、自然にできてしまった自分に驚いています。なにより、母が、私の子育てや私自身を認める発言をしてくれたのも、初めてのことだったのです。
私の母はいわゆる「毒親」で、私は母のことが嫌いです。幼少の頃から大切にされた思い出はありません。大人になっても、日本に帰って顔を合わせると喧嘩ばかりで、そんな姿を娘は見てきました。
普通は、『親の私が嫌いなおばあちゃん』のことは、娘も嫌いになりそうなものです。でも、娘は娘で、私と母の関係と、自分と祖母の関係を切り離して考えているようなのです。今度、日本に彼氏を連れて行く時も『おばあちゃんに挨拶に行きたい』と言っていて。そんな風につきあっていけるところを我が娘ながら尊敬します。
私は母に優しくできないけれど、娘が代わりにおばあちゃんを気にかけてくれている。そこに、少しの安心感と喜びがあります。そんな気持ちになれるのも、リトリートで自分が生まれ変わったからだと思っています。」
夫の自転車
ーーさらにみゆきさんは、お母様だけでなく、ご主人との関係も変わってきているとお話しくださいました。
「主人があえて口に出して言うことはありませんが、私がリトリート後に変化しているのを感じているように思います。
彼は昔から自転車が趣味で、スイス国内でのツーリングはもちろん、フランスなど国外へ出掛けるくらい自転車にはまっています。
先日彼が急に、『みゆきにとって毎朝の森散歩が重要なように、僕にとっても自転車はリフレッシュに欠かせない趣味なんだ』と言ってきました。彼がそんなことを言うのは初めてです。
新婚当初、友人もなく言葉も通じないスイス暮らしで、主人が唯一の味方だったのに、平日の仕事にとどまらず休日まで自転車に奪われて、私は悲しさと怒りを感じていました。
今までの私だったら自転車の『自』の字を聞いただけでも嫌悪感を露わにしていたでしょう。そんな彼が、今ならきっと、自分の大切な自転車のことを話してもわかってもらえると思ったのかもしれません。
彼が私の変化に対して、敏感に気づいていることが意外でした。
主人のことを『いい人じゃない?』『優しいじゃない?』と周りの人がどれだけ言っても、今まではそう思えなかったんです。しかし最近は、その通りかもと思える自分に変わってきたと思います。
まぁ、特に中高年以上の男性の多くが、奥さんへ感謝の気持ちを言葉にして言わないように、主人も私へそうした気持ちを表現はしないんですが、最近はそれも許せるようになってきましたね。
主人はご両親を早くに、そして実の兄も40代の若さで亡くすという過去を経験しています。そうした辛い気持ちを私の前で吐き出さないのと同じように、感謝の気持ちも表さない‥…自分の気持ちを人に見せない人なんだ、と理解できるようになったのです。
今思えば、主人は私に対し、ずっと変わらぬ愛情を注いでくれていたのかもしれません。それなのに私が一方的に怒りや嫌悪感をぶつけていたのかもしれないと気づくことができたのです。
最近主人との関係が変わってきたと感じるのは、お互いが変わったからではなく、『私の』主人を見る目、主人を理解する気持ちが変わったからなのでしょうね」
ーー『人はなかなか変わらない、変われない』ともよく言われますが、みゆきさんは3日間を通して『生まれ変わる』ような体験と変化を感じました。
そして、今まで見えなかった『人の良さ』や『優しさ』、当たり前にある『幸せ』に気がつき、最も悩んでいたお母様やご主人との関係が緩やかに良くなって行ったと、喜びを感じていらっしゃいます。
瞑想の時間
「リトリート後の変化として、早朝の森散歩に加えて、『瞑想』もできるようになりました。今までの自分だったら3分と瞑想できずに、あれをやらなきゃ、これをやらなきゃと、やらなければならないことが頭に浮かんで来てしまうタイプだったのですが、今は何時間でも落ち着いて坐っていられるようになりました。終わらせ時が分からなくなるくらい何時間でも瞑想できてしまうのです。
それによって気持ちを落ち着かせ、人と接する時に、自身の感情をコントロールできるようになってきているのだと思います。だからこそ、あんなに険悪だと思っていた母や夫との関係に変化が起こっているのでしょう」
ーーみゆきさんにとって、リトリート後の気持ちの変化が、散歩や瞑想などの行動変化をもたらし、またその行動が、気持ちにも変化をもたらす、心と身体の好循環が起きているのですね。
自分の内側にある『本当の自分』『本当の思い』に出会い、新しい自分が見えてくる。
ーー最後に、どんな方にこのプログラムをお勧めしたいか伺いました。
「何か心にわだかまりがある人はもちろん、『特に今は何もないよ』という人が参加しても、その人の中に響く何かがきっとあるのではないでしょうか。
自分のことを話さなくても、人の経験を聞いているだけで、自分の中にある、同じような経験とつながり共感することがあるからです。
自分が気付いていないだけで皆、大人になれば何かしらあると思います。
自分の心を鈍感にして、押し殺しながら生活しているのだと思います。自分で自分を説得して、納得させながら、折り合いをつけながら生きている。そのことは、社会性という意味では大事なことです。でも、思い切って自分の内側にある『本当の自分』『本当の思い』をさらけ出すと、また新しい自分が見えてくると思うのです。そうすることで、より納得して生きることができるのではないでしょうか。
それを体験ができるのがこのリトリート。だからこそ、特定の誰かではなく、何気ない毎日を生きている大人の皆さんにおすすめしたいですね」
ーーリトリート3日目の朝に、世界が急にキラキラと輝いて見えるくらい、自身が生まれ変わったような体験をし、お母様やご主人との関係も良くなっていったみゆきさん。プログラムでお会いした時よりもさらに優しい雰囲気をまとっていました。
毎朝の森の散歩で、小さな生き物を踏まないように気を付けたり、木漏れ日の美しさを感じ続けるような日常を、これからも続けていかれることを願っています。