底地の売買について
(全裸不動産 全裸幡随院)
底地の買取価格の相場は明確に決まっているわけではないが、概ね更地価格の10%~15%と言われており、過去の取引事例を見ると、確かにこの価格帯にだいたいが収まっています。底地価格を決めるのに、例えば底地割合が40%だったとすると、「更地価格の40%の値段になるのだろう」と考える人が多いかと思われますが、底地割合がそのまま価格に反映されるということはまずないでしょう。
同じ底地でも、借地人に買い取ってもらう場合、もっと価値は高まります。あくまで目安ですが、更地価格の50%くらいで買い取られるケースが見られます。もちろん、この相場は底地割合によっても多少影響を受けます。しかし、底地割合が40%の土地であるにもかかわらず更地価格の50%で買うのは、借地人にとっては「高い!」と感じられるでしょう。その場合は、交渉によっては底地割合と同じ割合になることもありえますが、しかし一般的には50%になることが多い。というのも、少々高く思えようが、土地を自己所有にするメリットが借地人にとって大きいことからです。
もっとも、借地権といっても、以下の2種類の借地権を分けて考えないといけないでしょう。①普通借地権…期限がない。②定期借地権…期限がある。期限がある方が、地主側にとって有利です。というのも、一定期間が経過したら、必ず土地を返してもらえるとわかっているからです。地主が有利ということは、逆に定期借地権は借主にとって不利ということです。つまり定期借地権の場合の方が、借主が底地を買い取りたいと思うより強い動機として働くというわけです。このように、需要が強くなるため、定期借地権である場合の方が、買取価格は高くなります。また、底地割合も普通借地権より定期借地権の方が高くなっているため、評価額の底地割合の数字を見ても、やはり買取価格が高くなると言えます。
さて、その底地を買い取ってもらう方法は、主に下の5つの方法が考えられます。①借地人に売る。②借地人から借地権を買い取って、完全な所有権として売る。③借地権と底地を交換する。④借地人と共同で売却する。⑤借地人と等価交換をする。この5つの方法のうち、①、②、④、⑤について、軽く確認していきます。
① 借地人に売る
その底地を最も欲しがっているのは通常、借地人のはずです。先述の通り、底地は更地価格の10%~15%となることが多いですが、対借地人の関係では、その3~5倍程度の高値になることもしばしば。このため、底地を売るのであれば、先ずは借地人に売ることを考えるのが賢明です。
② 借地人から借地権を買い取って、所有権として売る。
底地の高値売却が困難なのは、権利が半分しかないためです。このため、残り半分である借地権を取り戻し、「(完全な)所有権として売る」ということを考えます。これだけで底地の価値は大幅に上がります。当然と言えば当然でしょう。さらに、その底地が十分に広い場合だと、借地人双方にとって好都合な取引も可能になります。つまり、(A)借地人が使っている面積の底地を譲り、かつ(B)借地人が使っていない部分の借地権を取り戻す契約により、借地権と底地は双方消滅した上で、土地が二分され、それぞれが(完全な)所有権となるというわけです。要するに、「家の部分」は借地人が(完全な)所有権を得て、「庭の部分」は地主が(完全な)所有権を得るということです。土地は小分けにするほど価値が落ちるのが通常ですから、それなりの広さがない場合だと、使えない方法であるのことは確かでしょう。
③ 借地人と共同で売却する
これは、借地人から借地権を買い取って売る方法と似ています。借地権・底地をセットにして売るということで、どこに違いがあるかというと、事前に借地権を買い取るかどうかという点です。買い取る方法は、買い取った後に何でも自由にやれるという点で有利です。しかし、買い取る資金と手間がかかります。他方、共同で売却する方法ならば、借地人と交渉して歩調を合わす必要はありますが、それさえできれば資金不足の状況でも高値で底地を売却でることができます。これは、借地人も売りたがっているということが必要ですが。
④ 借地人共同で「等価交換」をする
これは、上の共同売却とほぼ同じですが、どこに違いがあるかというと、要は共同売却では現金が手に入るのに対して、等価交換ならマンションやビルなどが手に入るわけです。普通は、借地人と共同してその土地を売ったら現金が欲しいと思うわけですが、しかし、その現金と同額の価値のあるマンションやビルとの交換を提案することもあります。現金ではなく不動産を受け取る方がよいと思えるケースがあるからです。どういうケースかというと、(1)不動産による大きな利益が見込めるケースと、(2)不動産取得による節税効果が見込めるケースです。
要は、こういうことです。土地を共同売却したら、その利益には譲渡所得税がかかりますよね。しかし不動産を入手すると、不動産事業をするための経費を支払ったという形になります。原則、経費として支払ったものには課税されません。不動産の場合は減価償却というルールがあり、最初の1年全額非課税というわけにはいきません。しかしその後、毎年経費として一定額を計上できるからこそ、長期的な節税効果を見込めるわけですね。こうした事情から、不動産で等価交換をした方がいいケースもあるということです。