Chicago Booth Review: より良いサプライチェーンを構築するために④
原文
https://www.chicagobooth.edu/review/how-create-better-supply-chain
より柔軟に
複数のサプライヤーを持つことはレジリエンスと同時に柔軟性を高めることに繋がり、それは危機的状況にない平時にも役立つことができると、本学のYuan Zhong氏は言います。Yuan Zhong氏がひとつの製造業工場で二つの違う種類の車を製造するケーススタディを行ったところ、種類に対する需要は短期間で変わっていったことが判明しました。
もしひとつの工場で二種類の車とも作れて、絶えず変わっていく需要に対応できたらどうでしょうか?この柔軟性に対する考え方は、元々違うものを製造していた工場を、全く別の商品の製造のために転用する工場にも適応されます。コロナ禍で深刻なマスク不足に陥った際に、ジェネラルモーターズがミシガン州のウォーレン市の工場をマスク製造に使ったことと同じように。
もちろん、100種類の車を作る会社があるとしたら、全種類の車が製造できる一つの工場を作ることは費用対効果があるとは言えないでしょう。3~4種類の車を製造する工場を何セットか作ることが一般的であり、より良い費用対効果が見込めます。しかし、どの工場がどの種類の車を作るべきなのでしょうか?大切なのは、急激な需要増加を予測することで、これができるようになると企業は何年先をも見据えて計画することができるのです。
「柔軟性が発揮できるようシステム、設備などにほんの少し投資することで、需要にマッチした供給ができます」とYuan Zhongは言います。「サプライチェーンの一つひとつの段階で、需要と供給をマッチさせることを考える方法は、柔軟性を高めるのに有効です」
MITのDavid Simchi-Levi、Georgia TechのHe Wang、そしてDukeのYehua Weiによる共同研究で判明したことは、ひとつの工場が2種類以上の製品を同時に作ることができる場合、予期しない供給のショックが起きた場合に、影響を軽減することができるということでした。製造能力を調整できる企業は、危機的状況においてもうまく立ち回って需要と供給を管理できる傾向にある、と彼らは結論づけています。
ジャストインタイム生産方式(必要なものを必要な時に必要な分だけ生産する方式)からすると、余剰を持っておくという考え方は一笑に伏されてしまうかもしれません。しかし、Simchi-Levi、Wang、そしてWeiの研究結果は、倉庫に余剰能力を抱えることはサプライチェーンをより強靭なものにするというものでした。彼らは企業が違う工場で違う商品を製造する場合を想像した時、ひとつの工場で哺乳瓶を作り、他の工場では木製のおもちゃを作るケースを例としてあげてみましょう。この工場は基本的にはひとつの工場でひとつの製品を作るものの、状況に応じ生産体制を変えることができるものです。例えば台風がおもちゃ工場を直撃した時、哺乳瓶製造工場でおもちゃを製造するように再調整している間、確保していた余剰分の哺乳瓶を販売に回すことができるため、販売のロスを避けることができます。
「企業に在庫とプロセスの両方に柔軟性がある場合、不測の事態が発生した際に、余剰の柔軟な能力を完全に解放させることができ、そしてそれが究極的には企業のリスクを軽減することに繋がる。」そう彼らは研究結果に記述しています。併記して、通常高い費用対効果を見込むためには、ひとつ以上の製品を作る工場を作ることが効果的だが、企業が持つ全てに商品を作ることまでは必要とされていないとも彼らは述べています。
同じ考え方は、部材在庫を中間製品などの半完成品の状態に持っていって、あらゆる形の需要に応えるために受注確定時に完成させる、受注組み立て方式(半製品見込み生産とも)にも当てはまる。「このモジュラー型はサプライチェーンをより強靭なものにさせ、コロナ後のよりカオスになっていく不確定な時代に適応できるようになるひとつのやり方」と本学のLevi DeValveは語ります。
倉庫と部品保管において強靭性を高めることは、サプライチェーンのねじれを削減することにもつながります。Amazonが、複数の倉庫に保管されている商品の注文に対応していることを考えてみてください。しかし、柔軟性が増すということは複雑性が増すということでもあります。そのような場合には、効率的なアルゴリズムや同様の最適化ツールが役立ちます、と彼は付け加えます。
DeValiveは、「こうしたシステムの柔軟性は、日常的な需要の変動や昨今のコロナのような予想もできない事象など、不確実性に適切に対応するための重要なツールであることは以前から知られています。このことは、今後さらに注目されることになると思います」と述べています。
次回
次回は、『より近く』をテーマに、製造拠点の検討や課題に関する内容をお届けします。