シルバー人材センターへの補助金の事業評価を試作してみよう(その6)
1 各項目の検討
ア 補助事業の目的
当補助は「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」に根拠があります。
第三十六条『国及び地方公共団体は、・・・その希望に応じた就業の機会を提供する団体を育成し、その他その就業の機会の確保のために必要な措置を講ずるように努めるものとする。』
静岡市の交付要綱では、『高齢者の就業の機会を確保し、組織的に提供することにより、その就業を援助して、その能力の積極的な活用を図ることができるようにし、もって高齢者の福祉の増進を図る』となっています。
これらと前記事(その5)で述べた経緯から、
「シルバー人材センターを通じて、通常の労働市場を通じた就業を希望しない高齢者に就業機会を提供し、高齢者の社会参加や生きがいを増進する」
とします。
イ インプット
人件費(給与税負担を含む)、補助金額、事務所賃料の減免があればその相当額とします。シルバー人材センターは3号随契の対象になっていますので、これをどうするかが悩ましいところですが、対価性があるので一応除外しておきます。
シルバーへの補助金は、いわゆる、協調補助で市補助金が打ち切られると国庫補助も自動的に打ち切られる仕組みになっています。そのため、国庫補助も含めた総額で計算することも考えられますが、ここでは市の補助金額で計算します。
ウ アウトプット
アウトプットは「財・サービスの提供量」なので「補助金額」ということになります。しかし、団体補助の場合、これはインプットに他なりませんので、団体のアウトプットとするのが適当だと考えます。具体的には、次の2つとします。
A 実就業会員数(会員の内実際に就業した人数)
B 契約金額(売上高)
※ 会員数としなかったのは幽霊会員を除くのと。ミスマッチの解消に向けたセンターの努力具合を評価するためです。
オ アウトカム
アウトカムは「受け取った財・サービスに起因する成果」です。就業を通じた社会参加という観点からは、アウトプット数値ということになります。又、生きがい就労という観点からは高齢者の自殺率や健康寿命といったものが思いつきますが、こちらは他に影響する要素も大きく、施策全体としての指標にはなり得ても、個別の事務事業の指標にはふさわしくありません。
ところで、業績評価を企業経営で例えると、アウトプットは売上、アウトカムは利益ということが、しばしば、言われます。これを応用して、以下のようにしてみます。
A 60歳以上人口のシルバーへの加入率
B 売上金額の地域経済(第三次産業)に占める割合
アウトプットと大差がないような気もしますが、地域の高齢者や地域社会全体にシルバー事業がどれだけ支持されているか、必要とされているかをアウトプットよりは詳細に示す数値だと思います。
※ Aについては、アウトプットとの整合性を考えれば、実人員とすべきですが、正確な統計資料が手に入らないので、会員数としました。
Bについては令和元年度数値が最新なので、消費者物価指数で補正することとしました。
アウトカム指標の設定に苦労するような事業は意味なしとしても良いと思うのですが、事業をなんとか維持しようとする担当者の気持ちになって粘ってみました。
カ 目標値
人口規模で類似する政令指定都市、大都市(100万以上)に直接接しない人口50万以上の市にあるセンターの平均値とします。
※ 具体的には、以下の10都市(静岡、新潟、宇都宮、相模原、浜松、堺、姫路、岡山、熊本、鹿児島)としました。相模原は市民経済計算が公表されていないので、アウトカムBからは除外しています。又、5年前の資料はHP上では入手できないので4年前からとしました。
キ 評価結果
目標値近辺(95-105)をCとして、5%刻みで上下させます。
全体として、いわゆる執行評価に近いものになってしまいました。アウトカム指標で良いアイデアがあればコメントください。
2 評価結果
下表のとおり、静岡市シルバー人材センターは相対的にはダメな団体で、アウトプットでは就業会員一人当15%増しの税金を投入しているにも関わらず、平均値の80%の経済効果しか発揮していないということが明らかになりました。アウトカムでも、平均値の80%以下と劣っています。
私が事務をしていた時の印象では、静岡市はだめだけど、清水市は頑張っているという印象でしたので、合併した結果、悪い方へ統一されてしまったようです。
ちなみに、静岡市の評価結果は下表のとおりです。
事業執行をアウトプットに、アウトプットをアウトカムにしてしまっている見慣れた不適切例です。
次回、感想的なものを投稿して終了にしたいと思います。