全員出発

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最近の記事

チェスタトン名言集

 一般にはブラウン神父シリーズの作者として知られているG・K・チェスタトンですが、バーク、オークショットと並ぶ英国の保守思想家という一面もあります。   まずは比較的、人口に膾炙している言葉から 「民主主義は、どういうわけか伝統と対立すると人は言う。どこからこんな考え方がでてきたのか、それが私にはどうしても理解できぬのだ。伝統とは、民主主義を時間の軸に沿って昔に押し広げたものにほかならぬではないか。それはどうみても明らかなはずである。何か孤立した記録、偶然に選ばれた記録を

    • 宿泊税に関する興味深い論考を紹介

       全国各地で導入が進みつつある宿泊税ですが、仙台、松江、熊本といった観光振興のために観光客のコストを増大させるというアタオカな政策をしようとしている都市は論外として、現に「オーバーツーリズム」が生じていると思われる都市ではどのような効果が期待できるかについて、興味深い視点の論考を読みましたので紹介してみたいと思います。 (基本的に参考論文2を紹介します) ※ 筆者は公務員試験に受かるために仕方なく経済学を勉強した人間です。ガチ勢の方は誤りがあってもお手柔らかにご指摘願います。

      • 中村十作は宮古島に何をもたらしたのか(人頭税異説)

         8月3日の事務事業評価発表会で、新潟減税会のザッキーさんが中村十作を中心とした宮古島の人頭税廃止運動について発表しました。しかし、学会では宮古島の人頭税について様々な異説が提出されています。  その代表ともいえるのが来間泰男氏の「人頭税はなかった」という本です。関連論文も数本読んでみましたが、私は基本的に氏の説に賛同する立場になりました。中村十作に関係する部分について、その主張をまとめると概略以下の通りになると思います。 A 「人頭税」という言葉から直接連想できる「人頭税」

        • 「公平・中立・簡素」、スミス、ワグナー、マスグレイブ・・・様々な租税原則

           国も地方自治体も勝手気ままに取っているように見える税金ですが、一応、「税金というものはかくあるべき」という理念があります。財政学ではこれを「租税原則」と言います。現状の税制が「租税原則」を満たしているかというと、ものすごく疑問符がつくのですが、大きな税制改革の検討が行われるたびに「租税原則」から見てどうかという議論は行われています。  ”取る”側の理屈をざっと並べてみますので、頭の片隅に入れておいておきましょう。 1 「公平・中立・簡素」  現代租税原則として財政学の授

        チェスタトン名言集

          静岡県の事務事業評価シートの公開状況マップ(R6.6.30)

          1 前回(12月)との変更点 ・島田市 レベル1→2(一部事業の評価を公開) ・富士市 レベル1→2(一部事業の評価を公開) 2 静岡県内において確認できた動き ・島田市が主要事業について新たに事務事業評価を実施(島田市HP) ・富士市が一部事業について新たに事務事業評価を実施(富士市HP)しました。人件費どころか事業費の記載さえないものを、事務事業評価とするのは心苦しいですが、他市町との均衡から認定しました。 レベル分けの基準(静岡県の状況に合わせて渡瀬基準を少し変

          静岡県の事務事業評価シートの公開状況マップ(R6.6.30)

          課税免除、不均一課税、減免・・・様々な地方税の軽減措置

           6月9日に行われた「減税と規制廃止を実現する講演会」に私も参加してきました。その中で渡瀬氏が大阪府市の外資系金融機関に対する減税について話されました。  今回の記事は、その法的根拠についてのものです。 1 大阪市の条例を見てみる  この減税は大阪府と大阪市が協調して行っているものですが、まずは大阪市の条例についてみます。  条例の正式な名称は「大阪市金融系外国企業等の集積の促進及び国際競争力の強化に係る事業計画の認定並びに法人の市民税の課税の特例に関する条例」といいます

          課税免除、不均一課税、減免・・・様々な地方税の軽減措置

          全国交通税ハザードマップ

           2回にわたり交通税を題材にパブリックコメント手続きを見てきましたが、今回はその交通税の全国における議論の状況をまとめてみました。  切り口は以下の2つです。 1 地域公共交通計画において取り上げられているか 2 都道府県議会の質問で取り上げられているか 1 地域公共交通計画  この地域公共交通計画は、地域公共交通活性化再生法で各自治体に作成の努力義務が課されているものですが、本計画の策定が補助金の交付要件になっているため、令和6年6月までに大半の都道府県と多くの市町村で作

          全国交通税ハザードマップ

          「滋賀地域交通ビジョン素案」に対する意見募集から見るパブリックコメント制度(その2)

           今回は滋賀県のパブリックコメント手続きにおいて提出された意見の取り扱い状況やビジョンにおける真のテーマである交通税導入手続きにおける位置づけを見てみます。 1 提出された意見の内容と県の対応 (1) 県民意見  県民意見は全部で35件提出されました。(ビジョンに関係ない意見5を除く)詳しい内容はこちらから ア 県が進めようとする施策方向に賛同する意見 11件 イ 賛否に関わらない文章表現上の意見     4件 ウ 県が進めようとする施策方向に反対の意見  20件 エ そ

          「滋賀地域交通ビジョン素案」に対する意見募集から見るパブリックコメント制度(その2)

          「滋賀地域交通ビジョン素案」に対する意見募集から見るパブリックコメント制度(その1)

           現在、国及び地方自治体の多くで行政計画や法令の策定にあたって、パブリックコメントの実施を義務付けています。滋賀県の地域交通に関する行政計画である「滋賀地域交通ビジョン」の策定過程においても、令和5年12月末から約1ケ月に渡り意見募集が行われました。どんな意見が提出され、計画にどのように反映されたかを検証してみます。その前段として、パブリックコメント制度について、意義や制度的位置付けを整理してみます。 ※ 以降は基本的に地方自治体におけるパブリックコメント制度に対するものです

          「滋賀地域交通ビジョン素案」に対する意見募集から見るパブリックコメント制度(その1)

          宿泊税は観光振興のための特定財源か?

           現在、各地で導入されている(つつある)宿泊税はその多くが法定外目的税となっています。  東京都では宿泊税を以下のように説明しています。 「宿泊税の税収は、国際都市東京の魅力を高めるとともに、観光の振興を図る施策に要する費用に充てられます。」  他の自治体でも、宿泊税の使途について同じように説明しています。(例:京都市・福岡市)   これを財政学的に言うと、観光振興のための特定財源(予め使途が決まったもの)ということになります。しかし、観光振興費全体は宿泊税額より圧倒的に巨額

          宿泊税は観光振興のための特定財源か?

          宿泊税から考える租税の外部効果

           宿泊(ホテル)税は、現在、東京都、大阪府、福岡県(福岡市・北九州市)、京都市、金沢市、俱知安町、長崎市の7(9)自治体で課税されていて、宮城県(仙台市)や千葉県(浦安市)などで導入に向けた検討や手続きが進んでいます。  現行の宿泊税は税区分的には、”法定外目的税”(地方税法に定めがなく、特定の使途のために徴集される税金)になりますが、一般の地方税と違い、課税地に住所や事業所を有しない人や法人に対して課税されるのが特徴です。  このように地方政府が非居住者に租税負担を転嫁する

          宿泊税から考える租税の外部効果

          地方交付税入門-番外-(地方交付税の闇)

           地方交付税については研究者から様々な問題点が指摘されています。私は専門家ではありませんので、ごく一部しか取り上げることができないと思いますが、そのいくつかを紹介してみます。なお、紹介する論文の中には、後年にその内容を反駁されているものもあるかもしれませんが、そうしたことまで追い切れていませんので承知しておいてください。又、財政学者は地方交付税に厳しい財務省寄りの立場の人が多いので、そこも留意してください。 1 無駄遣いを促す交付税  地方交付税が財源保障を行っているため

          地方交付税入門-番外-(地方交付税の闇)

          地方交付税入門-その5-(特別地方交付税、地方財政計画、交付税の歴史)

           今回は特別地方交付税、地方財政計画、地方交付税の歴史についてです。 1 特別地方交付税  交付税の総額のうち”原則として”6%が「特別地方交付税」に充てられています。(当初の予定では平成27年度まに4%に縮減される予定でしたが東日本大震災対応を口実に中止されています。)  普通交付税が財源不足額に対して交付されるのに対して、特別交付税は「特別の財政需要」に対して配分されます。その対象は「特別交付税に関する省令」で示されており、大別すると下記の通りです。なお、普通交付税と

          地方交付税入門-その5-(特別地方交付税、地方財政計画、交付税の歴史)

          地方交付税入門-その4-(基準財政需要額その2)

           今回は「包括算定経費」と「いわゆる交付税措置」を中心に説明します。 1 包括算定経費とは  包括算定経費は、人口と面積に一定の補正を行って算定される経費です。これは平成19年度から導入されたもので、いわゆる「三位一体」改革の成果の一つです。それまで基準財政需要額はすべて個別算定経費でした。  このことには、次のような批判がありました ア 算定方法が複雑すぎる イ 算定過程がブラックボックス化しており、本当に衡平な算定がされているかが不明 ウ 地方公共団体が予算を組むとき

          地方交付税入門-その4-(基準財政需要額その2)

          地方交付税入門-その3-(基準財政需要額その1)

           今回と次回の2回で「基準財政需要額」について説明します。今回はその中の「個別算定経費」を特に解説します。  最初におさらいしておくと、「基準財政需要額」は各地方公共団体がナショナルスタンダードの支出を行った場合にどの程度の歳出額となるかを可視化するためのモデルです。 1 基準財政収需要額の計算方法  「基準財政需要額」=「各行政項目ごとの基準財政需要額の合算額」となります。行政項目がどういう構成になっているかは下表のとおりです。細かい内訳はこちらを参照してください。各行

          地方交付税入門-その3-(基準財政需要額その1)

          地方交付税入門-その2-(基準財政収入額と留保財源)

           今回は「基準財政収入額」と「留保財源」について説明します。  一応、おさらいしておくと、「基準財政収入額」は地方公共団体の実際の予算とは無関係に、各地方公共団体が標準的な歳入努力を行った場合にどの程度の税収が得られるかを可視化するためのモデルです。 1 「基準財政収入額」の計算方法  「基準財政収入額」=「標準的な地方税収入×75%(算入率)」+「地方譲与税等×100%」となります。話を簡単にするために今回は「地方譲与税等×100%」は考えないことにします。 ☆ 基準財

          地方交付税入門-その2-(基準財政収入額と留保財源)