事務事業評価によって見直された事業のその後を追ってみる(その1)
自治体の事務事業評価のページでは、”見直しにより〇〇億円の予算を削減しました”という言葉をよく見ますが、実際のところはどうでしょうか。
静岡市の平成25年度分事務事業評価によって廃止された事業に使われていた予算がその後にどうなったか、廃止理由と振替先事業に整合性はあるのかを検証してみます。
1 対象事業
住宅用太陽光発電システム設置推進事業 H26 予30,158千円⇒決25,885千円(0.7人工)評価A(S~C)評価指標co2削減量
2 廃止の経緯
H25年度分事務事業評価にてH26年度限りでの廃止を決定
3 廃止の理由
本制度を実施したことにより太陽光発電システムの導入状況は順調に推移している。 一方で、静岡市地球温暖化対策実行計画で掲げる温室効果ガスの削減目標の達成状況は厳しい状況にある。このことからも、太陽光だけでなくあらゆる温暖化対策を切れ目なく進めていく必要がある。そのため、普及の進んでいる太陽光発電システムへの補助を廃止し、新たな地球温暖化対策を展開していく。
具体的には、本市の二酸化炭素排出量の5割以上を占める産業部門(製造業)や民生部門を対象に、総排出量の削減に向けた事業者向けの事業や里地里山(中山間)に”おける、地域資源(再生可能エネルギー等)を活用した持続可能な地域づくりを進めていく。
要するに、”より効率にCO2削減するために、この事業を廃止し、新たな事業に着手するということでしょうか?
(参考資料)
4 H26→H27予算での振替先
H27年度予算での振替先
(1)中小企業者向け省エネルギー対策支援事業
H27 予11,500千円⇒決115千円(0.6人工)
(2)里地里山地域におけるまちづくり調査研究事業」
H27 予10,000千円⇒決9,969千円(0.5人工)
図にまとめると、次のとおりになります。総コストは若干の減少というところでしょうか。
(1)の内容は次のとおりです。①省エネアドバイザーの派遣、②省エネ設備導入への補助金
(2)の内容は次のとおりです。①策定支援業務の委託、②モデル地区の選定
さて、それでは、この2事業により、”より効率的”にCO2削減を達成”できたのでしょうか。
6 H27年度予算決算での検証
(1)中小企業者向け省エネルギー対策支援事業
この事業では、成果指標としてCO2削減量を採用しています。見直し理由との整合性は指標の上では確保されています。
(2)里地里山地域におけるまちづくり調査研究事業
この事業では、CO2削減量は成果指標として採用されていません。見直し理由との整合性はこの時点で放棄されています。
ということで、(1)の事業のみで検証してみます。その結果が下表です。
ある程度、予想はしていましたが、計算してみて、想像以上に悲惨な結果に正直”呆れ”ました。結果が伴わないのは、よくあることですが、予算の時点で効率性が約1/20というのはどういうことかと。振替先事業の指標を設定するにあたり、廃止理由など、まったく、考慮していないことがよくわかります。
7 推論(どうしてこうなった?)
他にやりたい事業があったので、そこに予算を回すために本事業を廃止した。そのためにそれらしい理由を記載した。しかし、振替先事業では、廃止理由や指標の整合性など”あまり”考えなかった。
要するに、この事業は、事務事業評価の結果、廃止されたのでは”ない”、と断言して差し支えないと考えます。