静岡市の施策評価シートを見てみる。
先日、静岡県内市町の事務事業評価のレベル分け地図を作ったので、施策評価も作ってみようと思います。しかし、施策評価の内容をじっくり見たのは浜松市が初めてだったので、レベル分けの基準が自分の中に、まだ、ありません。
県内各市町で行われている施策評価の状況を一通り見てから、レベル分けの基準をつくろうと思います。
浜松市は既に見ているので、静岡市から始めてみます。
1 静岡市の施策評価について
静岡市では、”政策・施策評価”として評価シートを作成しています。(なお、”政策”については評価の対象としないとするのが、行政評価の一般論です。)
政策(施策)とそれを実現するための施策(事務事業)を一組にして評価シートを作るという、目的-手段関係がわかりやすい手法をとっています。
具体的に検討する評価シートは、コロナの影響を受けにくかったであろう、農業関係を選んでみました。元データはこちら
2 政策-施策
まず、政策-施策の関係を体系図に落とします。
1つの政策を実現するために5つの施策が設定されています。いろいろ、言いたいことはありますが、本題の施策評価に進みましょう。
3 施策-事務事業
これも体系図に落としてみます。
1つの施策を実現するために5つの事業が設定されています。事務事業評価表を見ると、もっと、ありそうですが、ここでは主要事業に絞っているようです。各事業には、内容説明、予算決算額、人工数、達成状況が記されています。
施策-事務事業の体系化はおおむねできていると評価して差し支えないでしょう。また、各事業には優先度が設定されています。これはわかりやすくて良いです。しかし、じっくり見ていくと・・・
(1)なぜ事務事業の達成状況が事務事業評価シートと違うのか?
静岡市の事務事業評価は、S~Cで達成状況を判定しています。したがって、その判定結果がそのまま達成状況に転記されるはずです。ところが、施策評価シートでは、◎〇△の三段階評価になっています。なぜだろうと調べてみると、とんでもない事実が判明しました。
”主要事業”として記載されている事業が事務事業評価表に”存在しない”のです。達成度の横にある推定事業名を見ていただくとわかりますが、どうやら事務事業の一部を抜き出すなどして、施策評価用の主要事業として再編成しているようです(茶産地総合対策事業を除く)。
どうして、こんな、わざわざ手間がかかることをするのか?わかりません。
(2)施策の成果指標と同じ成果指標を用いる事業の優先度が”最低”
優先度5の”「静岡市お茶の学校」運営事業”の成果指標は施策の成果指標と実質的に同じものです。よって、施策を達成するためには、この事業に最も注力すべきです。それが主要5事業の中で最低の優先度。
どうして、こういう判断になるのか?本当にわかりません。
4 成果指標の妥当性
施策目的の「お茶の町静岡市のブランド力を高める」、「静岡市のお茶の新たな需要創出に繋げる」の成果指標として「一世帯当たりの年間緑茶購入数量における静岡市と全国との比較」が妥当なのか考えてみましょう。
ブランドと言うものは自認すれば成立するものなのでしょうか?他者が認めてこそ”ブランド”ではないでしょうか。また、静岡市民がお茶を飲む量を増やすことで増加する静岡市のお茶の需要は大きいのでしょうか。
目標-成果指標がかみ合っているとは到底思えません。
5 成果指標と事務事業の目的-手段関係の検証
成果指標に直接貢献しそうなのは、「静岡市お茶の学校」運営事業と「お茶のまち静岡市」推進事業の内の⑤と⑥?です。他は指標達成に貢献しそうにない事業ばかりです。
目的-手段関係を考えて評価シートが作られているとはまったく思えません。
6 まとめ
一つの施策シートを検討した結果で断定するのはどうかとも思いますが、かなり問題があるなー、というのが感想です。特に、事務事業を施策評価用に分解・結合するというのは、行政評価に関する事務量をいたずらに増やすことになるので避けるべきです。