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ジャングル大帝が凄すぎて語り尽くせない…


今回は前回の続き
ジャングル大帝のすごさを語っていくんですが、タイトルにもあるようにすごすぎて上手く表現できていない点、文字に起こせていない点はどうかご了承願います。ボクの好きという愛を受け止めていただければ幸いです。

前回はこちら


前回では、あらすじ、TVアニメ、マスコットキャラクターなどに
ついてご紹介しておりますのでぜひご覧になってください


さてこのジャングル大帝ですが
1950年の作品で今から70年も前のマンガなんですが
連載開始と同時に世の中を常識をひっくり返してしまいます。

見たこともない面白さ、心地よいリズム感
マンガから音楽が聴こえてきそうな荘厳さとスケール感
これまでに感じたことのない壮大なロマン

まだマンガという文化が成熟していない時代に
マンガを読む楽しさ、ページをめくる快感
そして「マンガ」という娯楽を日本国民に突き付けた伝説の作品として世間に知られるようになっていきます。

同時に手塚治虫という新人漫画家を本格的に世に知らしめた作品ともなっていくわけでもあります。

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なぜそれほどまでに人々を魅了したのか

ジャングル大帝の醍醐味とも言えるポイントは手塚先生の描く動物ですね。

なんといってもキャクターがかわいい
ほんと動物の描き方というのが秀逸だと思います。

今ではみなさん何の抵抗もなく動物マンガを見ていますけど
そもそも2足歩行で歩く動物ってあり得ないですからね
マンガとはいえ、
あり得ないことをあり得るように描くって
非常に高度なテクニックを必要とします。

ジャングル大帝以前にも「のらくろ」という野良犬を主人公にした
マンガがありますが、はっきり言って…

気持ち悪くないですか(笑)
田川水泡さんごめんなさい。悪気はありません。

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動物マンガの真骨頂というのは
動物の動作やクセを出しつつ
人間っぽさを表現する
ところにあるんですけど
そのサジ加減が手塚作品は超~絶妙なんですよね。

これらがミックスされたデザインだから
手塚先生の描く動物って可愛らしくて愛らしくて
親しみがあって誰からも愛されるデザインの秘密なんです。

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これはデイズニー作品からヒントを得ており
自身でも語っているようにディズニーの影響を色濃く受けており
あのバンビを100回以上見たという変態的な逸話は超有名です。

これらを踏まえて手塚タッチというのは
線のタッチが非常に柔らかく、なめらかで曲線が狂おしいほどに美しい。
とてもアフリカ最強の肉食獣を描いているとは思えないほどのタッチ。
何気ないことですけど
これって凄まじい技術といえます。


説明できない得体のしれない魅力、、胸の内からこみあげてくるような興奮
当時の人たちは、この新時代の画力に打ち震えたわけですよ。

なんせ今までは「のらくろ」みたいな絵しかなかったですからね。
(田河さんほんとすいません)

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そんな時代に
この手塚治虫の出現、凄まじいまでのキャラクターが出てきたら
みんな飛びついちゃいますって。
当時はみんなこの手塚タッチにやられちゃったわけです。

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多くの人々を魅了させた絵の魅力の秘密

これは
デイズニー作品からヒントを得て「球」「円」を意識しているからです

キャラクターの身体を分解していったときに最後に球が残る。
言い変えれば球の組み合わせで絵が成り立っているんですね。

(動画をご覧になっていただけると分かりやすいです 4:38~)

顔の造形も円、物体の運動も円、すべてが円が中心です。
まさに手塚作品のタッチは丸く円運動が基本。

なぜ手塚先生はここまで「円」にこだわりを見せているのか。

これは

「世の中にあるものはすべて円が基調」
「ボクのデザインは全部丸から発想される」

と語っているところから読み解けます。

円、丸とは生命の根源のデザインなんです。
赤ちゃんって「丸い」じゃないですか。無垢な生命って丸いんですよ。
赤ちゃんは最も神様に近い生き物といわれておりとにかく丸い

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そしてその赤ちゃんが飲むおっぱいも丸い
生物として丸いものを求めているんです
自然物も全部丸です。
水も、水の分子も丸い、太陽もこの地球も丸い

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丸こそは生命の象徴
愛を育んでくれるものこそが丸、
そして人は丸に安心感を寄せる

直線は人工物、自然物に直線はない。

こういう生命の根源原理を手塚先生は意識してデザインしているんです

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人間には決して作れないデザイン、それが丸
その丸に、いかに近づくことができるかが究極のデザインであり
この丸の秘密こそが
手塚キャラクターが観る人を魅了する秘密であると言えます。



そして
手塚治虫の凄まじさを物語るエピソードとして
手塚先生はフリーハンドでコンパスより丸い円をかけたそうなんですね。

コンパスなんぞ使わなくても
完璧な円を書けた特殊な才能を持っていました
これは
「ドオベルマン」という作品に
手塚先生がフリーハンドで描いた円が載っています。

(動画6:08 からご覧にいただけます)

どうですかこれ。
凄まじいまでの特殊技能ですよね。

晩年、手塚先生は「円」が描けないと言ってひどく悩む時期があります。
とにかく円が描けないんだそうです。
最初は勢いがついていていいんですけど振り下ろしてきたペン先が
上手く「くるん」ってならないんですって。
これを信じられないくらいめちゃくちゃ悩むんです。。
これこそが手塚治虫なんですよね。

やはり手塚先生にとって丸というのは一種のバロメーターであり
これが描けないと「絵」にならないんでしょうね。
「本当に描けない。イヤになる」と漏らしているように
この丸こそが手塚治虫の原点であり手塚治虫たらしめた創作の秘密であることは間違いありません。

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手塚先生本人も語っているように
調子がいい時というのは
恐ろしいほどのスピードで書き上げるくらいペンが走りまくるんですって。
それはアシスタントや編集の人が信じられないと口を揃えて驚くほどのスピードです。

普通週刊連載って20ページくらいなんですけど
手塚先生はそれを1日で書いちゃいます
もう本当に凄まじいまでのスピードです。
この手の、とんでもエピソードってマジで死ぬほどあるんですけど
長くなるので今回はやめておきます

この乗っている時のペン捌きがマンガ表現にも表れているからこそ
手塚マンガってスピード感と迫力が尋常じゃないんですね。

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まさに絵が動き回っているイメージ。躍動感がハンパない。
この頃の手塚作品ってコマの中でキャラが踊っているイメージ。

今にも飛び出してきそうな疾走感が感じられるんですよ
その曲線美たるや
愛くるしさと普遍的な美しさとが共存したシンプルでいて究極のタッチ。

当時はみんなこの手塚タッチにやられ
世の中は手塚タッチだらけになっていきます。
藤子不二雄先生も石ノ森章太郎先生も今のレジェンド漫画家たちも
最初はほとんど手塚タッチですからね。
いかにこの手塚タッチが日本中を駆け巡ったかが分かります

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しかし

残念ながら高度経済成長期に入りマンガも一般化してくるようになると
劇画タッチというものが台頭し
リアルな描写が世間で受け入れられたり
巨大ロボットなどに代表される直線の時代になったことで
円運動が否定される時代がやってきます
そして手塚先生はとんでもなく大スランプに陥るわけですけど…

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この時代の流れというものもね
ある種、時代を築いた宿命でもあるんですけどね
自らが作り上げたマンガ表現というものを新しい勢力によって駆逐されていく苦悩といいますか…

とにかく手塚先生はこの丸を基調とし「生命のリアリティ」を絵に落とし込みました。
そして丸で「生命のリアリティ」を描くことで作品を立体的に構築していったんですね

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そしてマンガ的表現にも深いこだわりを見せていました。

動物が立って歩く、服を着て二足歩行しているのような
今まで見たことのない世界、非現実的な世界を
小説や文字では想像させることが難しい分野を
マンガという視覚効果によって表現することに
強くこだわりを持っていました。

マンガの持つ独自の世界観というものを常に意識していたんですね。

この世界観というものを非常に大事にされている作家でしたが
だからといって「絵」が上手くないといけないとは一言も言っていないんですね

(動画の10:22 からご覧ください)

むしろ手塚先生はマンガは「全く絵が書けなくていい」と言っています。
デッサンや「技術論」ではなく落書きみたいなものでいいって言ってるんですよ。
それこそがマンガであると。

ここにも手塚先生のこだわりがあって
手塚作品の特徴として骨格を無視したデザインがあります。
手や足が伸びたり縮んだり、背が大きくなったり小さくなったり
いわゆる骨格がない動きをするという特徴があります。

リアルな描写もいいけどあくまでマンガは読者の「欲望」をかなえるもので
画がうまいとか、ヘタとか、画の矛盾とか、リアリティなんて関係ないよって感じのことを言ってます


おそらく手塚先生のリアリティというのは画のリアリティというより
そのキャラクター自身の「生命」のリアリティのことを指しています。

これは後にアニメに没頭するんですけど
手塚先生は動くアニメを見ると自らが生命を吹きこんだ感覚になることが楽しいと言っていることから伺えます

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ちなみに画がヘタでもいいって言ってますけど手塚先生のデッサンハンパなく上手いですからね
これ写真か?ってくらいリアルなデッサンしている人ですから。
学生時代に書いた昆虫の標本なんてヤバイですよ。
図鑑レベルですからほんと変態です。

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話を戻しますと
マンガをマンガたらしめたマンガ表現こそが
誰からも愛される普遍的な
キャラクターの秘密であると言えるとともに
マンガでしか味わえない醍醐味ってものを追求したからこそ
今のようにマンガの描き方というものがいろんなものに派生していったわけです。


ある意味で手塚先生の骨格を無視した技法、
マンガ的な表現方法があったからこそ
日本のマンガの質が高くなっていったわけですよ。

この功績というのはあまり知られていませんがめちゃくちゃ大きいです。

現に手塚先生が憧れたディズニーは素晴らしい作家でしたが
アメリカでは日本ほどマンガという文化が育ちませんでした。

なのに日本でこれほどまでにマンガというカルチャーがここまで世界的に広まったのは間違いなくこの手塚治虫がいたからだと断言できますね。


そしてマンガをさらに文化的に高めた理由のひとつとして
物語の面白さにあります。

これまでおとぎ話や寓話といったものが主流だった時代に
創造性豊かなSFや教養性の高いドラマであったり
子供だけでなく大人をも魅了するストーリーを織り込んでいきます。

マンガなんて子供の読むもの
頭が悪くなる
稚拙な本は教育に良くない…など
教育者や知識人に批判されながらも
現実の残酷さ、人間の愚かさ、醜さ、時にはエロスをも描き
マンガという枠を次々と打ち破りマンガの表現の可能性に常にチャレンジしていきます。


このジャングル大帝も
人間の愚かさ、身勝手さを描いています。
動物たちを殺す残酷なシーンも描かれています。
しかしそれこそが異文化との交流であったり
人間との共存、文明の衝突、自然への警告であったり、
善と悪、人間と動物、戦争と平和、理想と現実を描くことで
これまでになかったドラマ性を描いています。

なんせ冒頭で王者が死んじゃいますからね。
ネタバレしますがレオも死にますからね。
主人公が死んじゃうんですよ。
当時、少年を対象としたマンガの中において、「悲劇」なんて考えられない展開です。

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でもこれは単なる主人公の成長ドラマではなく生きて死ぬ運命劇を描くことで次世代に生命を紡いでいくという運命のドラマを描いているんです。

こんなのナンセンスと批判もありましたが
結果、大衆が求めていたのは手塚治虫の出現だったわけです。


マンガという文化が成熟していない時期に
このストーリーを描いていたのはもはや脱帽です。


今日の日本マンガ文化の発展の歴史は
間違いなく手塚先生の功績といえます。
マンガ表現の可能性、マンガの在り方
これらの原点ともいえる作品こそがこの「ジャングル大帝」であるとボクは思うわけであります。


ちょっと興奮しすぎて
段々難しくなってとっ散らかってきた感があるんですけど
この後もね、山のように話したいことあるんですよ。ほんとは…。

冨田勲さんによるフルオーケストラサウンド
アニメオープニングと本編の違い
当時としては恐ろしく完成度の高いアニメオープニングだったこと

レオは本当は黄色だった(なぜ白いの秘密)
ライオンキングがなぜ白くないか

このジャングル大帝の本当のラストは手塚先生も分からなくなったとか

複数のラストが存在する幻の作品だとか

最終回の原稿にはデビュー前のあの藤子不二雄が描いたページがあるとか

アニメ版は海外に売る用にストーリーをどこで切り取っても使えるように
短編にしているとか


ほんとネタが尽きません

でもまた次の機会にしておきます。


最後に単行本の紹介だけしておきます。
ジャングル大帝は複数の出版社から出ておりかなり修正も入っております。
一番読みやすいのは手塚先生本人が修正した

講談社の手塚治虫全集版、全3巻ですね。

すでに初版の面影がないくらい修正が入っていますが
今ならこちらばベストだと思います。


どうしても70年前当時の初版を読みたい方には
光文社発行の復刻版があります。

これは未復刻だった超レア・バージョン=1958-59年のハードカバー版・全4巻
独自のカラーページも完全再現された逸品です。

作者描き下ろしのカバー・表紙・見返し・総扉などに加え、手塚治虫の貴重なエッセイや奥付なども復刻。
昭和30年代の書物ならではの再現は一見の価値ありです


そして
漫画少年版 ジャングル大帝 普及版 1
初出版を読むことができなかった名作を、
発表当時のカラーもふくめて忠実に再現し話題を呼んだ「豪華限定版」というものが発刊されており好評だったのですがちょっと高くて手が出なかったところも考慮してその廉価版を1巻、2巻に分けて刊行
『漫画少年』に1950年11月号~'54年4月号まで連載されたオリジナル作品の完全復刻もの
発表当時の構成、カラー、手書きのセリフ文字など、すべてが「豪華限定版」と同様、オリジナルに忠実に再現されています。

とにかくこのジャングル大帝、なんとか版がものすごく多い作品ですが
どれでもいいのでぜひ一度手に取って伝説の作品に触れてみてください



今回はジャングル大帝の偉大さをもっとシンプルに的確にお伝えしたかったんですけどまとまりのない感じになりすいませんでした。
次回から短くシンプルに行きますんでよろしくお願いします。

というわけで今回はジャングル大帝のすごさ、
後編ということでお届けしました。

最後までご視聴くださりありがとうございます。

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