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手塚治虫感動の名作短編「雨ふり小僧」泣ける!なぜ読者の心を打つのか?

今回は手塚短編の名作「雨ふり小僧」をお届けします。

実は手塚先生、自身でも長編より短編の方が好きと語っておられ
数々の短編を残しております。
中でもこの『雨ふり小僧』は、
名作として高く評価する人の多い作品であり
かの立川談志さんが本作を「一番好きな手塚作品」として挙げております。
でも談志さん確か他の記事では「地球を呑む」とか「IL」が好きって言ってたんですけどね(笑)


まぁいいでしょう。
そして
手塚治虫名作集 (2) 雨ふり小僧では解説もしているほど惚れ込んでおります


そして「ブラックジャックによろしく」の作者、佐藤秀峰先生も
「漫画家志望者が読んだら降参したくなること間違い無しまさに名人芸」
本作の完成度の高さを絶賛しておられます


この短編の人気は民話を思わせる昭和のノスタルジー感と
愛らしいキャラクターが織りなす感動的なクライマックスにあります。

誰もが体験した忘れてしまった「子供時代」を思い起こさせてくれ
何十年経っても多くの方がまた読みたいと回顧してしまう作品なんですね。

そんなドストレートにいい話を今回はお届けいたしますので
ぜひ最後までお付き合いください。

それでは行ってみましょう。

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はいそれでは本編見ていきましょう。

本作は1975年に描かれたもので
カラ傘の妖怪・雨ふり小僧と少年の友情を描いた感動ノスタルジー漫画となっております。

手塚先生は水木先生の妖怪ものとは全く逆の
逆説的民俗性を描きたかったと語っており
本作では柳田国男さんや、そのほかの著者の民話から変形させた民話風短編になっています

リアリズムな妖怪ではなく民俗的妖怪ということですね


そして愛らしい手塚タッチが、古き良き昭和時代を彷彿とさせてくれ
読者が「子供時代」にぐいっと引き込まれちゃうんですよね
もうね井上陽水さんの「少年時代」をBGMで流しながら読みたいマンガですね。

それではあらすじ追ってきましょう
山奥の分教場に通う主人公の少年モウ太は
いじめられっ子で同級生がいません。
そんなある日、モウ太の前に突然、ボロボロの傘をかぶった小さな妖怪があらわれます。

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「雨ふり小僧」と名乗るその妖怪は、
モウ太の履いているブーツが欲しいと言いだします。

モウ太は大事なブーツだからイヤだと言うんですが
雨ふり小僧はブーツをくれたら代わりに3つの願いを叶えてくれると言うんです。

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半信半疑でひとつお願い事をすると願いがひとつ叶いました。
雨降り小僧も友達がおらず、友達がいない者同士仲良くなり
モウ太と雨ふり小僧は仲良くなっていきます。

そんなある日、分教場が火事になってしまい
モウ太は雨ふり小僧に、3つ目の願いとして、火事を消してくれたら
約束通りブーツをやるから橋の下で待っていろと言います。


雨ふり小僧は三つ目の約束を果たし
ブーツをもらうために約束の場所である橋の下でモウ太を待つんですね

しかしすっかりそんな約束を忘れてしまったモウ太は
直後に引っ越しすることになり突然村を離れ都会に住むことになります。

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そしてモウ太は中学、高校、社会人と成長し結婚もして子供もでき
会社社長にまでなり何不自由ない幸せな家庭を築いていきます。

あれから40年後、
ふとしたことからモウ太は雨ふり小僧との約束を突然思い出します。

「まさか?もしかして…」

モウ太は確かめるために約束の橋の下に向かうのですが
果たしてこの後どうなるのか?


…というのが本編のあらすじになっております。


この最後がねいいんですよ、感動的なんですよね
切なく読者の胸を打つ感動的なラストシーンを迎えます。


本作『雨ふり小僧』は、
妖怪と人間という設定で「約束」をテーマとしています。
大切な約束を守り続けた雨ふり小僧と、
約束を忘れてしまった少年。
妖怪と人間の儚くも切ない感動短編作品

読んでいないかたはぜひ読んでみてください。

そしてここからネタバレ含みますので聞きたくない方は
今すぐ退出してくださいね。

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本作がなぜ人の心を打つのかと言えば
誰しもが体験したことがある「子供時代」の思い出と
「忘れ得ぬ約束」というノスタルジーな切なさを秘めているからでしょう。

いつ来るとも知れない相手を何十年も待ち続ける姿と
相手はその気持ちを忘れてしまっているという真逆の情景…

そして40年ぶりに約束を果たし感動的な再会となるのですが
気づいた時には時すでに遅し…

モウ太は何か大事なものを失った喪失感を味わうというね…

いや~切ない

そしてせっかくの感動も一瞬の出来事に終わってしまう。
モウ太が大人になってしまったことで
大人には見ることができない「雨ふり小僧」が消えてしまうんですね。

その儚い想いに読者は胸を打たれるわけですよ。

そして自分との思い出と交錯させちゃう

小さな小さな約束だったかもしれないけど
期待して待っている人にとっては
それは決して小さなものではないんですね。

約束した方は、大したことじゃない事として忘れてしまうけれど
置き去りにされた相手はそうは思っていない

ほんの些細なドラマかも知れないけど
これって誰もが一度は経験しているであろう事なんで
読者は自分事として感情を揺さぶられちゃうんですよね

もうね、ドストレートにいい話です。

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毎日を忙しく生きる中で、忘れてしまった純真さ
何十年経っても多くの方が、また読み返したいと回顧する作品には
そうした思いが詰まっているのだと思います。

特に忙しい現代だからこそ読んでみてほしい作品でもあります。
単なる懐かしさというだけでなく
当たり前すぎて忘れてしまっていた大切なものに
気づかされる1冊になるかもしれませんよ。

そしてこういうノスタルジーな物語を現代の若い方が読むと
どう感じるのかも興味ありますね。

携帯社会になって人を待ち続けるといった概念そのものが
薄れていっているのではないでしょうか。
何でもかんでも電話で解決しちゃいますからね
待ち続けるなんて発想自体が無くなっているのかも知れません。

ムダな時間が無くなったことは良いことですけど
失ったものもあるのではと思います。
お若い方で読まれた方はぜひ感想をお聞かせくださいね

こちらは講談社漫画全集ではタイガーブックス3巻ですが
集英社文庫手塚治虫名作集 (2) 雨ふり小僧に収録されております。
冒頭にご紹介した立川談志さんの解説もありますので
併せてご覧いただくと面白いと思います。


そして手塚先生は「雨降り小僧」と同じく民俗妖怪マンガとして
「鼻たれ浄土」もお気に入りのひとつとして挙げておられます。

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こちらは
なにをやってもぱっとしない少年のもとに、鼻たれ小僧が現れて
優しくして貰ったお礼に少年の願いを何でも叶えるというもの
似たような作品ですがオチが全然違います。


こちらも講談社全集タイガーブックス8巻という同じ短編シリーズに収録されておりますのでご興味がある方は併せて読んでみてください。
他の収録されている短編も
手塚治虫の短編がお楽しみいただけると思います。


というわけで雨降り小僧ご紹介いたしました。
如何でしたでしょうか。

古き良き昭和のノスタルジー感動作品に触れてみてください
あなたの人生を変える1冊に出会えるかもしれません。

では!

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