手塚治虫 珠玉の99の「言葉」
今回は「手塚治虫99のことば」のお届けいたします。
手塚先生は生前インタビューや講演会など従来の漫画家さんには珍しく
沢山のコメントを残してきております
そんなコメントを数多く収録したこちらの書籍の中から
いくつかピックアップ致しまして
生涯追い求めたテーマや創作秘話に迫ってみたいと思います。
それでは本編いってみましょう
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それではまず手塚作品の「テーマ」についてのことば
ご紹介していきましょう。
「ただ一つこれだけは断じて殺されても翻せない主義がある
それは戦争はご免だということだ。
だから反戦テーマだけは描き続けたい
そういう点で裏切り者にはなりたくないのだ」
これはもう手塚先生の言葉の中でも非常に有名な言葉のひとつですね。
一貫して手塚作品の根底にはこのテーマが入っており…というより
もはやこれが原動力といっても過言ではないでしょう。
手塚治虫といえばありとあらゆるジャンルの漫画を描いてきておりますが
どのジャンルにおいてもこのテーマが入っております。
反戦、そしてそれに伴う差別など
手塚治虫は説教臭い、解りにくい、小難しいともいわれますが
その理由にはこのような背景があるからなんですね。
やはり現代人と違って「生きるという執着が凄まじい」
手塚先生って幼少の頃、
裕福だったんですけど、ある程度裕福に育ってきた環境にあって
何でも手に入る子供時代にあって
ある日突然、すべてを無くす出来事が起こるんです。
それが戦争
喰うものもなく、友達も目の前で死んでいく
そして何より大好きなマンガが書けない、絵もかけない
描いているだけで非国民と言われる耐え難い時代を経験してきたんですね。
それがある日突然、戦争が終わる
このトラウマ級の体験から
解き放たれた欲求が迸っているのが手塚マンガの神髄であります
だから正義が負けることも描くし、死も容赦なく描く
悪にもなる人間の苦悩も描く
すべては「生きる」という生命讃歌を描いているんですね。
これこそが手塚治虫作品の根底に流れるテーマであります。
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「ぼくがマンガとかアニメに凝っている一つの理由っていうのは
物の形が動いて見えるということでして
動きの中にすごい生命感みたいなものを感じるんですよ
ただ生き物がいるから動くということよりも
それが動いているからこそ生きているんだという
それを書くことで生きがいみたいなものを感じるわけであります」
出ました。これも手塚治虫の最大の特徴です。
とにかく動いているものに最高のエクスタシーを感じる作家なんです。
アニメを作りたいという衝動理由もコレ。昆虫好きなのもコレ
動いているものへの生命観がハンパない。
だから手塚作品には器に命を吹き込む描写が多く
人形とかロボットとか沢山出てくるんですね。
躍動感あるキャラクターが多いのもうなずけますよね。
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「とにかくぼくはまだ生きたいわけよ
ガンジーみたいに達眼しちゃうんじゃなく
手塚治虫のマンガなんか見たくないというやつから
手塚治虫の発想には全く関心がないというやつまで、
全部相手にして戦いたいわけよ
そう思ってる連中を根こそぎ切り崩したいんです」
超絶負けず嫌い発言炸裂!
根こそぎ相手したいんなんて普通じゃないですよ
それを裏付けるようにあらゆるジャンルの漫画を描き多様性という側面からみたらおそらく日本随一の幅広さ、信じられない守備範囲を誇ります
この尋常ならざる意欲、
情熱が生涯執筆枚数15万枚ともいえる爆発的な仕事量に繋がっていくわけですが亡くなる間際ですら連載3本かかえているという変態ぶり
おそらく今後この作品数を超える作家は出てこないでしょうね。
---------------作品について-------------------
続いては「作品」について
その創作についてのコメントを見ていきましょう。
「アトムはもともと女性のロボットとして考え出したのです。
はじめはお色気たっぷりな美人のアンドロイドとして
誕生したはずだったのです。
ところが誕生した場所がたまたま少年誌だったもので
「鉄腕」が付いちゃったのです」
出ましたね、衝撃発言(笑)
アトムの原型がお色気たっぷりの美人ロボットだったとは驚きですね。
でも手塚先生って
元々男とも女ともとれる男女共有の特徴を持つキャラクターを描くのが好きなんでね
決して珍しいことではありません。
アトムにしても見方によっては男女どちらともとれるキャラですから
この雌雄単体、両性具有というのは手塚治虫鉄板のキャラ設定であります。
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「作品としての評価は別として主人公の魅力の点ではいまだにアトムは
実の息子のように、いや、それ以上にぼくは好きです。
なぜならアトムは戦後二十数年をぼくの分身として同じような体験をし
おなじように育ってきたからです。」
いや~矛盾してますよね(笑)
過去記事を見ていただいている方であればわかると思いますが
手塚先生ってアトムに関して非常にネガティブな発言が多いんですよね
その一方でこのコメントですよ。
どっちやねん?って話ですけれどもこれが本心だと思います。
アトムの事めちゃくちゃ好きなんですよ、
嫌いなわけないんですよ(笑)
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「例えば「MW」という本の中に出てくるのは全部悪人なんです。
だけどぼくは登場人物みんなに愛着があるわけ、
彼らの心の弱さに愛嬌を感じるんですね。
逆にアトムのようなモラルに凝り固められた善人に、
ものすごく反発するんです。
(中略)だから「ブッダ」の終わりのほうなんか早くやめたくて、
こんなものなぜ書き出したのだろうと思うぐらい嫌悪感がありましたね。」
ここでも出ました。
本音か分かりませんけど暴言、失言。
ブッダの止めたい発言(笑)言わなくてもいいのに言っちゃうんですよね
実は手塚先生って飽き性なんで振り返ってみるとその次に描いた作風が
全く違った作品だとすると
「あ~飽きちゃったんだな」というのが分かります
だから正確には「嫌い」になったんじゃなく
「飽きちゃった」が正解です(笑)
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「漫画の場合、もちろん小説や戯曲でもそうですが
テーマになんらかの怒りが含まれなければならないと思うんです。
どんな情報にも必ず不合理性があるのですから
その不合理について憤りを感じなければおかしい
八方めでたしの理想的な情報では漫画にならないのです。
法律の欠陥、生命の矛盾、人間関係の蹉跌
それらへの疑問や怒りが主題にならなければ読み手は不満を覚えるでしょう」
これはあまり知られていないかも知れませんが
手塚作品って基本反逆なんです。
時代に迎合するんじゃなく抗う作品の方が多いです。
そしてそこには必ず強烈なメッセージが込められていて
その大半が反体制に対するものなんですよね。
ここまで大衆に受け入れられた漫画家であるにも関わらず
ここまで反逆的なものを描いてこれたのは描いてきたテーマが普遍的なものであり読者の心をつかむのが
上手かったと言えるのだと思います。
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「私の考えでは漫画の質の90パーセントはアイデアだと思うんです。
アシスタントたちに常に言っているのだが、
画技は十年も続けていれば上達するのは当然で
あとは職人的なコツの問題だが
アイデアの捉え方はプロになる以前に会得してみっちり
たたきこんでおかないと手遅れだとね。
それが漫画家の資質や寿命に影響する」
生涯枚数15万枚と
いうケタ違いの数字ばかりがクローズアップされがちですが
特筆すべきはそれ以上のインプット量にあります。
どんなに忙しくても年間100本以上の映画も見ていたし読書も欠かさない
人に会うことも多く、常に新しいことに貪欲だった手塚先生
一般人でも難しいこの習慣をずっと続けていたわけですからもう変態です。
業界の一線を走り続けてきた巨匠の核心を突いた言葉だと思います。
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…という訳で今回は「手塚治虫99のことば」ご紹介いたしました。
如何でしたでしょうか。
今回ご紹介したことばは本の中のほんの一部です。
物事の核心を突いたものから、勇気づけてくれることばまで
名言、暴言、失言ありますけど、
そのすべてが愛情溢れた「ことば」ばかりです。
ぜひ天才のことばに触れてみて欲しいと思います。
今回は最後に
天才の苦悩とも思えることばをもう1つご紹介して終わらせていただきます
それでは最後までご視聴下さりありがとうございました。
天才?とんでもない
私ほど苦しんでいる人間はいないんじゃない。
悩んで損と分かっているのに。つい(笑)
手塚治虫