二十歳のころ 第十八章
翌日僕とヘイケイは一緒にビーチに行くことにした。どちらから声をかけるというわけでもなかった。このリゾートで選択肢はそう多くない。ビーチに行くか、カフェで飲むか、バックパッカーズでうだうだするかだ。僕らはビーチに行くことにした。
僕はバスタオルとシュノーケルを持っていった。ヘイケイはサングラスをかけ、一冊の本とバスタオルを持っていった。
ビーチに出てみると人が少なかった。それでも尚僕らはなるべく人気のないところを探した。ただでさえコーラルベイは辺境なリゾート地なのだ。ビーチを少し歩けばプライベートビーチになる。
僕らは適当な所でビーチにバスタオルを広げた。そして場所を確保した。ヘイケイは日焼けクリームを体に塗り、横になった。僕はヘイケイに荷物を頼み、シュノ―ケリングに行った。僕はヘイケイにシュノーケルを勧めたがヘイケイは
「私はいいわ。ビーチでゆっくり過ごしたいの。」
と断った。僕とヘイケイはビーチの楽しみ方が違うのだ。僕はサンゴ礁に囲まれたビーチでシュノ―ケリングを楽しみたい。ヘイケイはプライベートビーチのような場所で読書と日光浴を満喫したい。各々干渉せず好きな時間を楽しむ。それが僕らの流儀だった。
僕らがバックパッカーズに戻ると部屋に欧米から来た一組のカップルがいる。
「やあ。君らはこの部屋の仲間かい?俺はヨーロッパから来たんだ。この子は旅の途中で知り合って今一緒に旅をしているんだよ。君らとここで会えて嬉しいよ。」
「私もヨーロッパから来たの。最初は一人で旅をしていたんだけど彼と途中で知り合ってね。そういうわけなの。あなたたちは?」
ヘイケイは彼らに僕らのいきさつを話した。僕はヘイケイと彼らが何を話しているかほとんどわからなかった。しばらく彼らが談笑した後に彼は僕に声をかけてきた。
「一緒に飯を食ってその後ダーツをやらないか?このバックパッカーズにはダーツがあるんだ。ダーツはやったことあるかい?」
「了解。ダーツはやったことがない。」
僕は答えた。
「簡単だよ。やればできるよ。じゃあ、まず飯に行こう。」
僕らはTake Awayに行き各々注文を頼んだ。僕はフィッシュ&チップスを頼んだ。フィッシュ&チップスはタラの切り身を揚げたものでチップスはポテトフライだ。フィッシュ&チップスはオーストラリアのどこのTake Awayにもあった。ライムがあればライムを絞り、レモンがあればレモンを絞る。単純な味付けだけに癖になる逸品だ。
僕らはテーブルに買いこんだ品々を広げて談笑しながら食事をした。何を話しているのかほとんどわからないが僕は気分がとても良かった。一ケ月前に語学学校で欧米から来た同級生と交流できていなかった自分が嘘のようだ。二組のカップルで仲良く食事をしている。そして二組に分かれてダーツをする。ダブルデート。僕が日本で夢描いていた光景。これが旅なんだ。