二十歳のころ 第四十七章
ヨットの航海の後、僕は頭の中が空っぽになってしまった。僕はバックパッカーの生活に戻るが旅をする目的や意欲を失ってしまった。生活も乱れ始めた。僕は遅めの朝に起床し、朝食兼昼食を取り、昼間はショッピングモール等、街をなんとなくぶらぶらした。夜はワーホリ仲間とビールを飲み、夜中まで馬鹿騒ぎをした。僕もつるんでいたワーホリ仲間もオーストラリアの旅にもう新鮮さを抱いてはいなかった。僕らは酒を飲まなきゃバックパッカーの旅を送ることがやりきれなくなってきたのかもしれなかった。
仲間がいるうちはまだいい。お互いに馬鹿やって気分を紛らわせることができるから。そして自分自身の存在をお互いに確認しあえるから。しかし中にはどこのグループにも属さず一人ユースホステルで日々を過ごしているバックパッカーもいる。独りの世界に入ってしまったバックパッカーや輪に入れないバックパッカーはいったいどうしたものなのだろう。自分たちにはない何かを持ち合わせているのだろうか。僕らは疑問を感じつつも彼らに目を背けた。
また何故自分は日本を離れてこんな遠い所に辿り着いてしまったのだろうと自答することもあった。ワーキングホリデーのヴィザはまだ残っているけれども日本に帰ろうかなとも僕は少なからず考え始めていた。
そんなある日ユースホステルでインド経由日本に帰国するワーホリと出会った。彼女は航空券を買いに旅行代理店に行くけど一緒に行かないかと話しを持ちかけてきた。特に僕らは何もすることがないので暇がてら彼女に付いていき旅行代理店に入った。
ダーウィンからどうやって離れようかと考えていた僕はまずシドニー行きの航空券の片道切符の値段を受付に尋ねた。国内線でもなかなかの値段がする。ふと棚に置いてあるバカンスのパンフレットが僕の目に入る。ニュージーランドとバリ島だ。冬のニュージーランドでスキーを楽しむ。バリ島ではビーチライフを楽しむ。
自分はオーストラリアという国だけにこだわりすぎてはいないだろうか。お金をぱっとバカンスに使って帰国してもいいのではないだろうか。ニュージーランド経由シドニーの値段も聞いてみよう。シドニー行きの片道切符と比べると高いがそれほど価格差があるというわけではない。ならバリ島も加えてみたらどうだろう。するとバリ島を加えても二万円くらいの価格差だという。今の生活から抜け出すにはこれしかない。