二十歳のころ 第十一章

長距離バスはどこかに停車したようだ。僕は窓の外の風景を見た。早朝だ。僕は車内で一夜を明かした。バスはガソリンスタンドに停車したようだ。
運転手が僕ら乗客に向かって何かを説明している。僕は運転手の言っていることが理解できなかった。僕は周囲を見回した。大勢の乗客がぞろぞろと降車している。ここで僕が降車しても問題はないだろう。
「モンキーマイア。」
僕は降車する際に運転手に尋ねてみた。
「あなたの名前は?」
「ヒロユキハガです。」
運転手は乗客リストらしき書類を確認して
「あなたはここで降りなさい。」
と指示をする。僕はバスを降りて、バスのトランクからバックパックを取り出してもらった。ガソリンスタンドを見回すと、同じバスに日本人が乗っていたようだ。僕はそれとなく日本人のグループに近づき、聞き耳を立てた。彼らの話を聞いてみると、ここのガソリンスタンドでモンキーマイア行きのバスとダーウィン行きのバスに分かれるという。そしてモンキーマイア行きのバスをここで待たなければいけないという。
僕は安堵してしばらく呆然と何となくバスを待っていた。周囲のバックパッカーがガソリンスタンドで飲み物や食料を仕入れている。僕ものどが渇き、お腹が減っている。バスが来るまでだいぶ時間がありそうだ。僕も飲み物や食料を仕入れよう。僕は周囲を見回した。感じの良さそうな白人のバックパッカーがいる。日本人のバックパッカーもいる。その時僕は何となく日本人に声をかけるのは、気が引けた。だから白人のバックパッカーに声をかけた。
「Can you watch may bag?」
すると彼はぺらぺらと僕に英語を喋ってくる。失敗した。素直に日本人に声をかけた方が無難だった。僕は英語が解らず、きょとんと立っていた。すると僕のやり取りを見ていた日本人が
「おい。それだと泥棒がお前のバッグを取っても俺は見ているだけだよ。と言っているんだよ。」
じゃあ。なんて言えばいいんだろう。僕はまごついていた。どこからか日本人の声で
「Keep.」
そう言うのか。Keepか。さりげない助言だった。
「Can you keep my bag?」
「OK.」
僕は売店に行き飲み物と食料を買った。そしてバックパックをキープしてくれていた白人のバックパッカーに礼を言った。僕は心細くなり日本人の集まっているグループに身を寄せた。やっぱり日本人同士の方がなんだかんだ言って安心できる。

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