二十歳のころ 第二十五章
バックパッカーズのラウンジで僕はパンフレットを眺めながらこれから何をしようかなと考えていた。するとイエンが声をかけてくる。
「おい。ヒロ。一緒にカヌーで川下りをしないか。」
イエンは僕にチラシを一枚差し出してきた。僕はチラシを受け取り眺める。
二泊三日のカヌーで川下り。
大自然の中五十五キロを走破する。
キャンプ用品を貸し出す。
出発地点と目的地の送迎サービス付。
と書かれている。値段もツアーと比べてかなり安い。つまりチラシを要約すると道具一式は貸すが、後は自分たちの手でカヌーを勝手にやってくれという内容であった。面白そうだ。しかし誰がこの川下りに参加するのだろう。僕は不安を感じ、即答は控えた。
「ちょっと考えさせて。誰が参加するの?」
「今参加者を募っているところなんだ。」
僕はどうしようかなと考えながらカナララの町を散歩する。すると町中でエクスマウスやポートヘッドランドで知り合ったワーホリ仲間のよし子さんとあゆみさんに出会った。
久しぶりだねと僕らは話をする。彼女らは日本人のワーホリ仲間とその川下りをやったという。カヌーツアーは面白かったよと彼女らは感想を述べ、是非やってみたらどうと勧めてきた。彼女らは本当に楽しそうな様子でカヌーツアーを勧めてきた。僕もだんだん参加する気になってくる。僕は礼をいい、彼女らと別れた。
僕はカヌーツアーに参加することに前向きになってきた。せっかくイエンが誘ってくれたのだ。カヌーで川下りなんてめったにない機会だと思った。バックパッカーズに戻るやいなやイエンに声をかけた。
「イエン。カヌーツアーに参加するよ。ところで他に誰が参加するの?」
「参加者は俺とヒロの他にスコットランドのおじさんが参加する。そしてロシア人が今参加するかどうか迷っている。」
そして夕刻になった。ロシア人はカヌーツアーに参加しないと僕らに告げた。
結局カヌーの川下りはイエンとスコットランドのタフそうなおじさんと僕が参加することになった。僕らは一緒にスーパーへ三日分の食料を買い出しに行った。
いよいよ明日か。カヌーで川下りなんてやったことない。しかも三日間で五十五キロの行程だ。不安だけど楽しみだな。僕は少し興奮しながらベッドにもぐりこんだ。