見出し画像

巨大 蛇行剣 異形の盾形銅鏡

日本最大の円墳・富雄丸山古墳(奈良市、4世紀後半、直径109メートル)

蛇行剣と銅鏡が出土。 約1600年前頃製造(国産)

富雄丸山古墳は、東に奈良公園や東大寺、西に生駒山から東大阪へ通じます。⇓

長すね彦が治めていた地域と伝わる
世界遺産の百舌鳥・古市古墳群との位置関係

奈良市の西にある「富雄丸山古墳」、2023年1月に第六次調査で剣と銅鏡が発見された。
2mを超える剣、しかも蛇行している珍しい蛇行剣。
鏡、銅鏡もまた珍品、盾の形をした異形の盾形銅鏡。

2m37cm 蛇行剣

鞘を含めると、267cmもある巨大な蛇行剣。
鞘は木製で、漆などので豪華な装飾が施されていた可能性が高い。

富雄丸山古墳は、直径109mもある日本最大級の円墳。
この地は、古くは長髄彦(ナガスネヒコ)が治めていたと伝わる地、
神武天皇の大和入りに抵抗し、何度も神武軍を破った。

築造時期は、四世紀後半(古墳時代前期後半)頃。
そう、空白の四世紀と言われる時のもので、日本にはまだ文字が無く、
大陸にも倭国に関する記述が発見されていない時代。
歴史学では不明な時代、考古学が一筋の光を当てる。

資料が少ない空白の四世紀頃、100年~150年間ほどの期間、倭国の実情が
わかっていない。

空白の四世紀

他に類を見ない、2mを超える蛇行剣。
もちろん実用的ではない。

 巨大 蛇行剣

発見当初、2mを超える鉄剣ではなく、数本の剣が重なって出土したのではないかと言われたが、X線で確認したところ1本の鉄剣であることが確認された。

蛇行剣 X線画像

この蛇行剣も、これから更に調査が進められる。
稲荷山古墳から出土した、「金錯銘鉄剣(きんさくめいてっけん)」の
ように、文字が掘られていたら、さらに大きな発見となるだろう。

国内では過去にも幾つか蛇行剣が発見されているが、その多くが1m前後の長さ。
今までの最長蛇行剣は、広島県で出土した115cm。

蛇行剣:90cmほど

四世紀は呪術的な時代、五世紀からは戦いの時代となる。
この巨大蛇行剣は、祈り祀りなどの祭事で使用された物ではないだろうか?

そして、更に珍しい盾形銅鏡もは出土している。
鼉龍文(だりゅうもん)盾形銅鏡という、異形の盾形銅鏡。

鼉龍文(だりゅうもん)盾形銅鏡
文様が美しい!


神像と龍が頭を共有している文様
1600年の時を超えて、今蘇る!
だ龍文盾形銅鏡
だ龍鏡

今まで見つかっている「だ龍鏡」は、従来通り丸い。
円鏡で大型。
しかし今回出土した「だ龍鏡」は、盾の形をしていて、円鏡が二面あるような文様を持ち、更に大型。
鈕(ちゅう:つまみ)も中央辺りにある。
鈕は、穴が開いていて、紐などを通すものと考えられている。
文様面は絵柄も素晴らしく、技術レベルの高さが伺える。

「だ龍」とは、古代中国の想像上の動物、ワニに似ているので、この名が付いたとされる。
日本で発見される「だ龍鏡」は、中国製の画文帯環状乳神獣鏡などを模倣した仿製鏡だと言われている。
が、盾形のだ龍文銅鏡は、中国にも出土例はない。
(仿製鏡ぼうせいきょう:中国鏡を中国周辺地域で真似て製造したものをいう)

この「だ龍文盾型道鏡」は、今のところ世界で唯一の存在。

強大な「蛇行剣」と、異形の「だ龍文盾形銅鏡」、これの意味するものは何か?

次に、この富雄丸山古墳のどの辺りから出土したかを見てみよう。

三段の通路には、円筒埴輪が並べられていた。
富雄丸山古墳図

円墳とされているが、造り出しと言われる、祭壇の部分から出土した。
蛇行剣と盾形銅鏡の下に、木棺が確認されているので、被葬者と共に
埋葬されたものだろう。
円墳の中央部分には、盗掘された埋葬跡が確認されているので、この古墳の主は、円墳の中央に埋葬された、大和王権に関わりの深い人物と推測できる。
前方後円墳や八角墓でないことは、大王家に繋がるものではなく、有力豪族、しかも相当な権力を持つ人物でないと、当時にこの大きさの円墳は造れない。
その主、被葬者と関係が深い人物が、この円墳の造り出しに埋葬されている。
祭祀を行うであろう祭壇部分に埋葬される人物。
しかも、「巨大蛇行剣」と「だ龍文盾形銅鏡」と共に埋葬される人物。
私の勝手な想像だが、祭祀に使用する道具と、それらとと共に埋葬されている人物となると、女性なら卑弥呼のような人物を想像してしまう。
男性だとしても、シャーマン的な人物ではないのか?

この造り出しの部分は、未盗掘であったので、これから始まる木棺内の調査に期待したい。
装飾品を含め、未知との遭遇が待っているかも知れない!


被葬者の木棺
蛇行剣&銅鏡と木棺の位置関係⇧

現在、全国で見つかっている古墳の数は?
実は、16万基以上!

ため池の数が、全国で15万ヵ所ほどなので、古墳の方が多い。
しかも、人知れず破壊されたり、まだ未発見のものを合わせると、
さらにその数は、増える。

我が国は、古墳大国なのである。
この築造力は相当なもので、人も多く国力は高かった。

四世紀は、まだ呪術的な時代で、五世紀ごろからは戦いの時代へ移る。
発見される出土物でそれがわかる。
四世紀は、非日常的な祭祀を中心とする物が多く出土し、五世紀頃からは、
鎧や兜、槍、弓矢、剣など、実戦向きな鉄製品が多く見つかる。

まだまだ全国には、未盗掘で未発見な古墳や埋葬墓は多数あるはず、新たな発見を期待し、胸躍る毎日を過ごしている。
私も専門家の端くれなので・・・(笑)('ω')ノ

*追伸
下記の画像は、ChatGPTが描いた円墳のAI画像です。
実際の円墳のイメージとは少々異なりますが、なかなか良く描けていると思います。
今後は更に進化するでしょうから、古代史などの解説用に多用するつもりです。( ◠‿◠ )v

ChatGPTが描く円墳A
ChatGPTが描く円墳B



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?