うまく酔えない
お酒が好きって何だか大人っぽい気がして、大学生の頃から自分は酒好きだとアピールしたことが何度もある。
本当は、私はお酒にそこまで興味があるわけじゃない。
美味しいとは思う。
特にビールの喉越しは普通に好きだ。
だけどそれって、単純に私がコーラとかジンジャーエールを好きなのと同列なのだ。
1回の食事で1杯飲んだら充分。
1回飲んだら、しばらくは飲まなくていい。
しかし酒好きは、通常のご飯の時にはそんなに水やお茶をガブガブ飲まないくせに、何故かお酒になった途端に浴びるように飲む。
その気持ちがよくわからない。
お酒は付き合いでしか飲まない。
お酒を飲むと私は陽気なハイになっているふりをするが、頭はそれなりに冷静なままだ。
普段と同じように頭を使いながら、お酒のせいに見せかけて、ちょっと大胆なことに挑戦してみる。
タメ口使ったり、甘えてみたり。
頭ではそこまで酔ってないのに顔は赤くなるから、酔っていると思ってもらえる。
なのに時折、頭はクリアだと思っていたのに泥酔ぐらい吐くことがある。
逆にシラフなのに、酔ってるみたいにハイになることもある。
不思議だ。
自分の恋愛を振り返ってみた時に、お酒みたいだと思った。
恋多き女ぶったりしてみるが、そこまでレンアイレンアイしてるわけじゃない。
1回に1杯で充分。
1回飲んだら、しばらくは飲まなくていい。
前の前に付き合っていた彼氏と今でもたまに連絡を取る。
私は基本的に別れた相手のSNSはブロ解するのだが、彼だけはしてない。
付き合っていた時に、
この人とは長く続かないだろう、と
心のどこかで思っていた。
それは彼が胸焼けしそうな程に魅力的な容姿をしていたことと、それに付随してかなりのナルシストだったためだ。
この人はいつか、きっと私なんかよりも綺麗で包容力のある大人な女性と付き合うだろう、という諦めがあった。
だから、関係がうまく行っていないと感じた時に私はすぐに身を引いた。
驚きの早さだった。
彼もすぐに頷いた。
しかしここで関係は終わらず、それからも会ったり、連絡を取ったり、電話をしたりしていた。
身体の関係はなく、友達でもない。
何となくたまーに接点を持つ、謎の関係。
こんな微妙な関係が続く中で、私はきっと心の中で彼に依存し続けている。
付き合っていた頃自分は冷静な気でいたのに、本当はベロベロだったのかもしれない。
自分が気づいていなかっただけでどっぷり泥酔、二日酔いが続いているのだろう。
まあそれは、私にはもったいないぐらい彼がいい男だからだ。
好きかといえば微妙だし、また付き合いたいかといわれれば否定する。
また付き合っても絶対うまくいかない自信がある。
なのに、また連絡を取っている。
この間振られた彼氏は真逆だ。
付き合いそうな段階になるにつれ、
この人と結婚したら良い家庭を築けそうだ
という思いが強くなった。
正直顔は好みではないが、体型が超好み、子ども好きで人畜無害そうなところも良かった。
この人が自分の、所謂運命の人なのだと信じていた。
だから、関係が上手くいかなくなった時に、私は必死に修復しようと努力した。
これも試練で、乗り越えればちゃんと良いパートーナーとして向き合い続けられるはず!
そう思って、彼のことを考えて行動したつもりだった。
だけど、別れを仄めかすような連絡を頂いた時に、私は酔いが覚めるのを感じた。
なんだ、この人じゃなかったんだと。
別れの電話は15分で終わった。
彼は自分の都合と私への言い訳をつらつらと述べ、私はそれをただ聞くだけ。
彼の話がすべて終わった時に私は
これからもお仕事頑張ってね、じゃあね
と言って、そのまま電話を切った。
その後、ラインはブロックしていないが(お仕事の関係で連絡せざるをえない場合があるため)その他のSNSは全てブロ解した。
今後、何かしらの接点を持ちたいと全く思わない。思い出して少ししんみりしたのは別れた数日だけだった。涙も流してない。
酔っていたと思っていたのに、本当は酔ったふりをしていただけ。
風に当たったら、急激に頭が冷えて、白けてしまった。
人の目を気にせずに、しっぽり、気持ちよく酔いたい。
悪酔いもせず、そっと眠りたくなるような心地の良さで酔いたいのに。
未だにお酒にも恋愛にも上手く酔えない。