2月拝観法話『鬼も福も心次第』

節分が過ぎ、少しずつ春が近づいてきています。
本日は寒い中、泰勝寺へお参り下さり、有難うございます。

節分では「福は内、鬼は外」と掛け声がありますが、福や鬼はどこにいるのでしょうか。
福も鬼も自己の心の中にあると考えます。

地獄と天国を例えた話で、この様な話があります。
地獄での食事の内容は豪華らしいです。
しかし使える箸が一メートル以上あり、ご馳走を自分の口へ入れようとしても、箸が長くて口に入りません。
イライラして、怒りだす者や、隣の人が箸でつまんだ料理を奪おうとして、醜い争いが始まります。

一方の極楽も箸は、地獄と同じ様に一メートル以上もあり長いようです。
極楽の住人は長い箸でご馳走をはさむと「どうぞ」と言って、自分の向こう側の人に与えあいます。

同じ状況を前にしながら一方は俺が俺がと先を争い、傷つけあっています。
もう片方は相手を思いやり、相手からも思いやられ感謝しながら互いに食事を楽しんでいます。
同じ環境でも、心がけで地獄と天国は大きな違いです。

去年、亡くなられた稲盛和夫さんは、京セラや第二電電(現在KⅮⅮⅠ)を設立され、日本航空を再建されました。
65歳の時に泰勝寺にとって、寺の関係では親に当たる円福寺で得度もされていらっしゃいます。

稲盛さんは人生の方程式を「考え方×熱意×能力」とし、正しい「考え方」を持ち、強い「熱意」で誰にも負けない努力をし、持てる「能力」を最大限に活かし、目の前のことに精一杯に取り組めば、人生は必ず豊かで、実り多い素晴らしいものになると仰っています。

禅は『白隠禅師坐禅和讃』というお経の一番最初に出てくる言葉「衆生本来仏なり」とある様に、一人一人にある本来の自己、仏様の心をよりどころとします。
特定の神や仏を崇めるのではなく本来の自己を由りどころとし「自由」な境地を究明します。

お互いに心の中にある本来の自己、仏様の心をよりどころとして、自分を大切にするように、人や社会をも大切にし、「今」自分にできることを精一杯に積み重ねていくことが、「福は内、鬼は外」を実践することに、つながるのではないでしょうか。 合掌

     
   令和五年 如月五日


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