5月拝観法話『かけがえのない存在』
木々の若葉が目に鮮やかな季節になりました。
泰勝寺へお参り下さり、有難うございます。
世界を代表する企業グーグルが「心理的安全性が高まると組織やチームのパフォーマンスが向上する」と発表して以降、組織の在り方において「心理的安全性」が注目されています。
日本中を熱中させたWBC日本代表チームはまさに心理的安全性の高いチームだったと思います。
心理的安全性とは、他人の反応に怖がったり、恥ずかしいと感じたりすることなく、自然体の自分を隠さず全てオープンにできるような穏やかな雰囲気のある環境のことです。
心理的安全性の高いチームを作るには、メンバーの存在を承認し、尊重や感謝の気持ちを伝えることでメンバーを受け入れる姿勢を示すことが重要であると言われています。
その他にも話しやすい雰囲気をつくることや、愚痴や不満よりも建設的な言葉を使うことなどがあります。
お釈迦様が生誕直後に発した言葉「天上天下唯我独尊」は仏教の教えの中でも重要なことを教えてくれています。
「天上天下唯我独尊」は自分ひとりが尊いというのではなく、この世に存在する全ての命が尊いという意味があります。
世界の人口は八十億人を突破したといわれています。
八十億の人がいる中で、私という存在は、私だけです。
そして過去にもおそらく未来にも、私という存在は私しかないでしょう。
また命の誕生には数えきれないご先祖様が居られます。
誰一人欠けても私は誕生しません。
その様に考えると私達ひとりひとりは、かけがえのない、有ることが難しい有り難い命を授かった存在です。
ゆえに八十億分の一として周りにあわせそれに従って生きるのではなくひとつしかない命、一度しかない人生、自身の心の感じることを大切に過去に捉われずに未来を憂えずに今を、一所懸命に生きていくことが、心豊かで充実した人生につながるのではないでしょうか。
かけがえのない命の尊さを自分のみならず、他の人の命の尊さにも気づき、自分を愛するように人や社会を愛する気持ちが、人や組織、社会をよりよくしていくことに繋がるのではないでしょうか。 合掌
令和五年皐月七日