6月拝観法話『うさぎと亀が教えてくれる大切なこと』
入梅の折からご清福の由、お慶び申し上げます。
本年ももう少しで折り返しです。
本年の干支はうさぎです。
うさぎが飛ぼ跳ねるが如く、時間の経つ速さを実感しております。
限られた時間の中で、泰勝寺へお参り下さり有難うございます。
うさぎで有名なイソップ寓話『うさぎと亀』を一度は読んだり、聞かれたことがあるのではないでしょうか。
うさぎと亀は山の頂上を目指して競争をしますが、途中でうさぎが居眠りをしたことで、亀が先にゴールし、勝利をおさめるという話です。
そのことから自信過剰に対する戒めや、努力することの大切さを教えてくれる話として多くの人に親しまれています。
禅的に『うさぎと亀』を捉えると、他者との比較ではなく自分ができることに注力する大切さを教えてくれています。
うさぎは競争相手の亀の能力を踏まえて手を抜きました。
つまりうさぎは他との比較で自身の行動を決めました。
一方の亀はできることを真っ直ぐに見つめ一所懸命に取り組みました。
『うさぎと亀』の話は「相手に勝つ」のではなく、「己に克つ」ことの大切さを教えてくれているのではないでしょうか。
因みに本堂の縁側の上壁に石川丈山の「克己(こっき)復(ふく)礼(れい)」の額が掛けられています。
『六祖壇経』というお経の中に「常行一直心」(常に一(いち)直(じき)、心を行ず)という言葉が出てきます。
「直心」とは素直で嘘偽りのない真っ直ぐな心を指します。すなわち「常に純粋で真っ直ぐな心をもって何事にもあたる」という意味です。
亀は旗の立っている頂上だけをみつめ歩き続けました。相手であるうさぎの状況を見ていません。
一方のうさぎは亀のことばかり気にして、大切な目標を一度も考えていません。
「常行一直心」亀のように目の前のことに一所懸命に取り組んでいく姿勢が人生を切りひらいてくれるのではないでしょうか。
他者と比較せずに、精進を積み重ね、今を精一杯に生きていくことの大切さを『うさぎと亀』の話は教えてくれているのではないでしょうか。
時間はあっという間に過ぎ去っていきます。
過ぎた時間は取り返せません。
生き方を見つめるきっかけとして、御朱印やお月様を鏡とし自分自身の生き方を見つめ、調え、お互いに充実した時間を積み重ねていきたいものです。合掌
令和五年水無月四日