10月拝観法話「真の自信や心の強さについて」
実りの秋、いかがお過ごしでしょうか。
本日は泰勝寺へお参り下さり、有難うございます。
臨床心理士の河合隼雄氏が「自信や心の強さ」について以下のように述べていらっしゃいます。
人間、自分に本当の自信がなければ、謙虚になれない。
人間、本当の強さを身につけていないと、感謝ができない。
以上を踏まえ、表現をかえれば、このような考え方ができるのではないでしょうか。
他人に対して謙虚にしていくことを続けていけば、いつか深い自信が芽生えてくる。
他人に対して心から感謝する日々を積み重ねていくと、感謝は感謝をよび、自分の心が強くなっていく。
禅宗は修行を経て、ようやく僧侶になれます。
泰勝寺が属する臨済宗は坐禅以外の諷経・食事・掃除・入浴・睡眠、常住坐臥すべてが修行と考えられています。
修行を突き詰めると「有難う」の感謝の心、「お陰様」の謙虚な心にいきつくと私は考えます。
それを頭で理解するのではなく、自分の心や体に、感謝と謙虚を染み込ませていくために常住坐臥、徹底した厳しい修行をします。
ところで、もし願いが一つだけ叶うならば、どんな願いをされますか。
先日、四十代で旦那様を亡くされた女性から、父親を亡くした小学生の息子さんは即答で「お父さんに会いたい」と言っていた話を伺いました。
よく考えると、健康や家族等「当たり前」なものは、何一つありません。
失って初めて有難みを痛切に感じる人が多いのではないでしょうか。
変化が激しい社会の中で、時間に追われ生活をしている人が多いと感じています。
スピードを速くして運転をすると、視野が狭くなり周りの景色を味わう心のゆとりが
なくなります。
意識的に立ち止まり、足元にある有り難いこと、感謝することに目を向けることで見える景色は変化し、心にお陰様の謙虚な気持ちが生じてくるのではないでしょうか。
世界に目を向けると争いや病飢えなどによって、無念な死を迎えている人が沢山います。
意識的に立ち止まって己をじっくり見つめていけば「当たり前」と、思っていたものは有り難く、多くのお陰様で自分が生かされていることに気がつくはずです。
その様なことに日々、目を向けていくことが真の自信や、心の強さにつながるのではないでしょうか。 合掌
神無月二十九日