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036_ひとり温泉旅行 ~醍醐味~

足の腫れが引いて、まともに歩けるまで丸一日かかった。温泉が功を奏したのかと思ったが、この温泉。いわゆる入浴施設であった。温泉施設と入浴施設は違う。

温泉の定義とは以下の様である。

日本では、温泉は「温泉法」という法律によって「地中からゆう出する温水、鉱水及び水蒸気その他のガス(炭化水素を主成分とする天然ガスを除く。)で、別表①に掲げる温度又は物質を有するもの」と定義されています。

日本温泉協会

別表①については、リンクからすぐに確認できる。

それにしても、日本温泉協会のページが思っていたより充実していて、ネットサーフィン楽しかった。

私が宿泊した偽温泉は、麦飯石なるものに濾過したお湯らしい。鉄分やマグネシウムなどが溶出されているから、肩こり等に効果があると謳う。

肩こりに効果はあるが、しかし、温泉ではない。なぜ私は温泉と勘違いしたのだろうか。
宿泊施設を予約するとき、温泉施設のくくりに入っていたのである。旅館の公式ホームページには、温泉の字も無いし、なんなら旅館とも言っていなかった。ホテルだった。
圧倒的にリサーチ不足であった。

実体がよく分からない石で濾過されたお湯につかり、腫れあがったままの足で食事会場で夕食を済ませた。コロナが落ち着いてすぐの頃だったので、食事会場はパーティションで仕切られ、ゲストはほとんどいなかった。とても快適だった。
ホテルの料理は旅館のような会席料理だった(ちなみに、”かいせきりょうり”には、会席料理と懐石料理の2種類あるらしい)。
ゲストとのコンタクトを最小限に抑えるべく、配膳はすでに済まされており、指定された席に行くだけであった。お酒も自分で冷蔵庫から取り出す。焼酎ロックを所望であれば、会場前の廊下に氷セットが準備され、各々そのセットで作るようであった。

こういう固形燃料で煮込まれる料理もあった

隔離は朝食も同様であった食事会場への入場時間が指定されており、会場にはつねに2組程度しか在籍していなかった。私は遅めの7時となっていたが、ここの朝食、バイキング形式である。

私が料理を取るときには、すでに何品かの料理は無くなっていた。業務用炊飯器の米もかぴかぴに乾いており、とても満足には食べられなかった。結局、朝食バイキングのお盆には、コッペパンと昆布の佃煮、鮭、餃子、エビチリ、味噌汁とコーヒーという、和なのか洋なのか中なのか、まとまりがない状態になった。

隔離も良い面ばかりではない。

そこにあるもので済ませることを、私はずっとしている気がする


反骨精神が……いや、元を取ろうとする守銭奴的な私が牙をむいたのは言うまでもない。その日の夜から、私は3度、米のおかわりをした。周りにコンビニが無いホテルである。昼はおろか、間食もできないのだ。夜に満足するまで食べなければ、昼の活動が満足できるわけもない。幸いなことに、おかわりは無料であった。

4泊5日、そんな人里離れた旅館で、一体なにをしていたのか。それは、本を読むことだった。書店で購入したは良いが、それから興味が薄れてしまった本が何冊もある。購入したころは、面白そうだと思っていたのだ。だから、読む時間と場所さえあれば、薄れた興味も復活してくるだろう。しかし、これらの本、どれもおおよそ500ページを超える。いかも内容は重厚でエンタテイメントとかけ離れている。面白さを自ら見つけに行かないといけないのだ。
日常を送る部屋や会社に行きながら読むには、数日かかってしまう。そうなれば、また途中で興味が薄れるのが私だ。ならば、一気に読んでしまおう。そういうことで、朝8時から私は本を開き、その世界に飛び込んだ。

環境がすべてを決めるといっても、過言ではない。その環境をどこまでセッティングするか、それは自分のことをよく知らないと、できないことである。
結果、私は4冊もの本を読むことができた。私は足の腫れのこともあり、旅館風ホテルから一歩も外には出なかった。しかし、達成感は一入である。
ひとりだからこそ、旅行でなにをしても許される。

今回もまた、意味のない花を添えてみよう

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