R_B < Part 6 (epilogue) >
赭が病院に戻る頃には夕闇が迫ってきていた。
「先生、お疲れ様です。送り有難うございました」
「2人とも元気になって、本当に良かったです」
「山吹さんもそうでしたけど……何だか不思議な人達でしたよね」
「そりゃ扇の知り合いだし!にしても、みんな良い奴らだったよなー」
ラボに顔を出し、スタッフ達の声を笑顔で受け止め『皆さんにも沢山協力して頂いて有難うございました。明日からもよろしく』と労いの言葉をかける。と、そこへ廊下をバタバタと走る音。
ラボのドアが勢いよく開き、居合わせた者は一斉にそちらを見る。
「先生!戻られましたか!」
駆け込んで来たのは潤。頬が上気している。
「隣州のあの患者さん、週末に外泊出来る見通しが立ったと連絡がありました!」
わっとラボが歓声に包まれた。赭が何年も改良を加え研究をしてきたトクサ式での手術が真に成功した瞬間だ。
「すげぇ、マジだぜ!」
「うわーこの瞬間に立ち会えるなんて!」
「頑張った甲斐あったなあ!」
互いに手を取り抱き合いハイタッチ。ラボは一気にお祭り騒ぎとなった。その様子を嬉しそうに眺めてから、赭はそっと席を外し食堂へ向かった。
「……さてと」
灯りが落とされた食堂の片隅。赭は2人に渡したものと同じワインボトルを取り出しグラスに注ぐと、一緒に持って来たアルバムを開いた。
付箋がついたままのページにあるのは、敬と誠にも見せた、あの集合写真。
「そうですか……皆、無事に旅立ったんですね」
其処からは、扇に続いて芥の姿も消えていた。
「扇、本当にありがとう……皆の未来が幸せであるように」
自然と笑顔が溢れる。赭は自分の人生と交錯していった数多の奇跡に1人、乾杯した。
20231011
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