エスコンフィールドの固定資産税免除における法人税の課税関係(寄附金・受贈益)
0.はじめに
全国のプロ野球ファンの皆様、こんばんは。
本日は今私が贔屓にしている日本ハムファイターズ(以下、「日ハム」とします。)を題材に法人税の寄附金・受贈益について解説する試みです。
なお、大変ミーハーな正確な故、松井秀喜選手在籍時は巨人を、星野監督・岡田監督時代はタイガースをラミレス監督時代はベイスターズを応援していた大変半端で軟派な性格をしております。
今回の記事の目的は単純明快で、流行りのネタに飛びついて、私の「事務所紹介」の記事につなげようという目論見です笑
なお、簿記の基本的な知識がないと、理解が難しいと思われますが、その点は予めご了承ください。
1.北広島市がエスコンフィールドの固定資産税を3年間免除
日ハムが札幌ドームからエスコンフィールドに本拠地を移転したことにより、北広島市は大盤振る舞いで3年間の固定資産税の免除、4年目以降は北広島市が補助金を出すことになったそうです。
https://www.city.kitahiroshima.hokkaido.jp/hotnews/files/00152100/00152109/20231201132212.pdf
固定資産税の免除ということは、日ハムは経済的な利益を受けるわけですから、その分は法人税の課税所得(法人税法上の利益)を構成しますよね?と疑問が湧く方が少なからずいると思われましたので、その解説を行いたいと思います。
先に断っておきますが、あくまで今回は固定資産税の免除についてのみ解説します。
2.日ハムの法人税の税務処理
結論として、日ハムは何ら仕訳を切る必要はありません。つまりは、免除された固定資産税を収益計上(法人税法上の益金算入)を行う必要はないということです。
それは、何故か??仕訳で考えてみるとその答えは出ます。
では、仕訳を切ってみて考えましょう!
仮に仕訳を切ってみた場合(面倒なので本来あるべき固定資産税を100とします。)
借方:租税公課(固定資産税)100 / 貸方:現金 100
これだけでは変ですよね?何故なら日ハムは固定資産税を免除されたわけですから(だって、免除されたので現金は出て行っていないはずですよね?)。辻褄を合わせるために、もう一本仕訳が加わります。
借方:現金 100 / 貸方:受贈益 100
この結果、収益100、費用100になるため、PL(損益計算書)への影響(我々は癖で「インパクト」と言ってしまったりします。)は0であり、資産の増減についても現金が100ずつ行って(往って)来いのため、0となります。
つまりは、収益と費用は相殺され、かつ、資産の増減は0(実際に資産の動きはない)と考えれば、この固定資産税の免除について、仕訳をわざわざ切る必要はない、と言えます。
2.北広島市の取り扱いは!?
北広島市ですが、こちらは法人税法第4条(納税義務者)第2項において、「公共法人は、前項の規定にかかわらず、法人税を納める義務がない。」とあり、法人税法別表第1に規定する「地方公共団体」であるため、課税関係が生じないこととなります。
3.北広島市の立場が、もし公共法人でなかったら(つまり自治体だからそこなせた技)??
ここから濃度が濃くなります。そんな税法理論はいらないよ!と思った方は、とりあえず「スキ」をタップなりクリック頂いて(タダです!)他のクリエイターが書いたNoteの記事に移っていただいて全く問題ございません。
まず、上記の補足ですが、日ハム側は相手が公共法人でない(つまり、普通の会社)から費用を免除された場合の取り扱いは、その相手との間で完全支配関係が成立していない限り(この太字は読み飛ばしてOK)、変わるところはありません。
北広島市側は、その立場が仮に公共法人はなく、普通の会社であった場合には大きく異なります。
例えば、A社(上記でいう日ハム)とB社(上記でいう北広島市ですが、公共法人ではなく、同じ立場の普通の会社としましょう)に置き換えて考えてみましょう。
A社は、上記の通り、何も仕訳を切らなくても上記2及び3の太字の説明の通り課税関係は生じません。
ここで問題となるのはB社です。
B社は、本来の売上を免除したことになるわけですから、法人税の処理は下記のとおりとなります。
借方:現金 100 / 貸方:売上 100
借方:寄附金 100 / 貸方:現金 100
寄附金が費用なら売上と相殺されるんじゃないか?と思われる方もいらっしゃいますが、税務上はそうはうまくいきません(勿論、会計上はこの取引しかないと仮定した場合の損益は0です。)。
法人税法は、寄附に対してすごく厳しいのです。
「法人は営利企業でしょ?何で寄附なんてしているの?それを税務上の経費(損金)とするっておかしいよね?ただ、一定程度付き合いなどで必要な寄附もあるけど、限度額を超える金額は損金として認めないよ!」としており、限度額を超える金額は損金の額に算入されないこととなります。
したがって、ここで限度額を仮に30とした場合、
会計上の利益は0ですが、税務上の所得(利益に相当する概念)は70となってしまうのです。
つまり、会計上の損益は0なのに、70×税率に相当する税流出が起きてしまいかねないということです。
4.おわりに
今回は北広島市が日ハムに対して行った固定資産税の減免にスポットライトを当てつつ、寄附金・受贈益について解説しました(完全支配関係が成立している場合を除いて)。
北広島市のように、頑張っている取引先などに、同じようなこと(売上、家賃、利息などの免除など)をすると、思わぬところ(今回で言えば税務)で足元をすくわれてしまう結果となりかねないため、誰かを応援したい、という気持ちはわかりますが、その際は事前に顧問税理士に相談するのがよろしいかと思います。