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控除対象外消費税と繰延消費税。消費税法ではなくて、法人税法等のお話。

年末の消費税の仕入税額控除方式(個別対応方式 or 一括比例配分方式)について書きました。

消費税額の計算上控除されなかった仮払消費税額は一体どこにいくのか?
それが「控除対象外消費税」と言われるものです。
こちらはあくまで税抜経理を前提としており、税込経理には控除対象外消費税は登場しない旨は強調しておきます。

今回はその控除対象外消費税にスポットライトを当てて解説していきます。


1.名前に「消費税」とついていますが、法人税(所得税)のお話です。

こちらは、上記の記事の抜粋です。

詳細は上記リンク先をクリックしてください

つまりは、この消費税の計算上控除されなかった4,000万円にスポットライトをあてていこう、というのが今回のお話です。

自分で作りました

フローチャートの一番上に「課税売上割合」というワードが登場しておりますから、ここで簡単に復習しましょう。

前回の記事より
「例えば、不動産販売業で、総売上が1億円、その内訳は建物売上が7,000万円、土地売上が3,000円だったとした場合には、課税売上割合は70%となることになる。」
不動産業の建物売上は消費税の課税売上になりますが、土地売上は非課税売上となります。理屈としては、土地は消費という概念になじまないため、消費税が課されない、ということになります。

この割合が80%以上で、控除対象外消費税を全額費用計上(租税公課などで処理。これを法人税法上では「損金経理」といいます。)している際には、法人税法上の費用である損金となります。つまりは、不動産業者がコストとして負担しなければならないものとなります(勿論、この控除対象外消費税は売却価格に転嫁すべきものであります)。

ここで問題なのは、課税売上割合が80%未満の場合です。
その場合でも、費用に係るものと棚卸資産に係るものは損金として認められます。
一方で、棚卸資産以外の資産に係る消費税額が20万円以上の場合には、減価償却のように一時の損金として処理することが認められないことになります。その際には、減価償却のようにアバウトにいうと5年で償却しないといけません。損金が翌期以降に繰り延べられることから、「繰延消費税」といいます。

20万円未満は損金算入できるわけですが、ここでは注意が必要です。
あくまで棚卸資産以外の資産に係る控除対象外消費税が20万円未満と言っているわけです。

その解説の前に、何故20万円未満なのでしょうか?
税法には少額基準という概念が色々なところで出てきます。
したがって、20万円未満は少額と捉えているわけですね。

それでは、前の解説に戻ります。
控除対象外消費税が20万未満とはどういうことか?ここでは一括比例配分方式を前提とします。

例題:
固定資産を購入しました。その購入金額は500万円であり、仮払消費税額は50万円です。課税売上割合は上記の例の70%としましょう。また、控除対象外消費税については全額費用計上を行っております。
この場合、繰延消費税の金額はいくらでしょうか?

回答:
0円です。
仮払消費税額は50万円ですが、このうち70%は消費税の計算上控除されます。
したがって、控除対象外消費税額は50万円×(1-70%)=15万円であり、20万円に満たないからです。

本体価格にして約670万円程度の資産の取得がない場合には、20万円以上となることはありませんね。

2.何で繰延消費税は一時の損金とできないのか。

端的に言いましょう。
税込経理とのバランスです。
税込経理の場合には、本体価格670万円の資産を購入した場合には、
取得価額は税込の737万円となり、ここに含まれる20万円以上の控除対象外消費税は、当然一時の損金となるわけではなく、減価償却を通じて費用化されるわけです。
税込経理を採用するか、税抜経理を採用するかで、法人税の所得金額に大きな影響を与えたくない、というのがこの繰延消費税の立法趣旨となります。
太字にしたここが一番重要なポイントとなります。

余談ですが、実際には税込経理より税抜経理の方がいいです。少額資産等(10万円未満、20万円未満、中小企業者の30万円未満)の判定は税込経理の場合では税込で、税抜経理の場合には税抜で行うこと。
つまり、本体価格98,000円の固定資産(税込:107,800円)を購入した大企業は、税抜経理ならば全額損金算入(落とせる)、税込経理であれば10万円以上20万円未満のため、3年での損金算入となるためです。
その他、シンプルに税抜経理の方が期中で損益を掴みやすい点も挙げられます。

本題に戻ります。
費用・棚卸資産については、全額損金算入を認めないと、逆に税込経理とのバランスが取れないことになります。
本体価格1,000円の消耗品を購入した場合に、税込経理では消耗品費で1,100円の損金、税抜経理では1,000円の消耗品費となるわけですから、別途租税公課での費用(この場合には、控除対象外消費税30円)を認めてあげないと差が生じることはご理解いただけると思います。
控除対象外消費税額が20万円未満の少額な固定資産については、税抜経理が有利に働くわけですが、少額だからで許して下さい、ということなのでしょう。

+αですが、繰延消費税額は資産の取得価額に乗せることも可能です。この場合には、繰延消費税額は減価償却を通じて損金化されるわけですから、上記の趣旨に照らして当然だということはご理解いただけると思います。
ただ、資産に乗せるはあまり知られていない印象を覚えます。個別通達まで読み込まないとなかなか理解できないところだからです。

国税庁HP

3.ステルス増税を見つけちゃった…

繰延消費税の基準である20万円以上って、消費税額が3%の時代は知りませんが、少なくとも5%になった以降は変わってないんですよね。私が所得税(法人税より先に受けました)を受講していた15年ほど前も20万円未満でした。

つまりは、昔は先ほどの例によれば、
本体価格約670万円で控除対象外消費税額が20万円以上になるというお話ですが、
5%時代は約1,340万円で控除対象外消費税額が20万円以上になるということだったのです。

今後、消費税率が上がるかはわからないですが、もし上げるのであれば、基礎控除を見直したようにここも改正して欲しいですよね。

4.資産に係る控除対象外消費税の規定って租税法律主義なの?

租税法律主義は大事なのは大原則です。
資産に係る控除対象外消費税は法人税法施行令第139条の4にはバッチリ書いてますが、法人税法ではどこに書いてあるのか・・・。

ありました!!えっ・・・?
「第65条 各事業年度の所得の金額の計算の細目
第2款から前款まで(所得の金額の計算)に定めるもののほか、各事業年度の所得の金額の計算に関し必要な事項は、政令で定める。」

敢えては言いませんが、これってどうなの?と思うところです。

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(ブログの内容についてのお問い合わせにはお答えできかねますので、ご了
承ください。)

<略歴>

  • 2011年:資格の大原 税理士試験社会人課程専任講師(所得税法)
    2014年 実力判定公開模擬試験(計算)の作問
    2015年 直前予想公開模擬試験(計算)の作問

  • 2015年:辻・本郷税理士法人 入所 
    主に法人顧問業務(中小企業から上場企業まで)に携わる
    2018年 川口東事務所の所長に就任

  • 2020年:KPMG税理士法人 入所
    資産流動化の部署を経て、M&Aの部署にて主に税務DD(デューデリジェンス)業務に従事

  • 2024年:独立開業

  • 2024年:TKC全国会 入会

<資格>

  • 税理士(合格科目:簿記論、財務諸表論、所得税法、法人税法、消費税法)

  • 2級ファイナンシャルプランニング技能士

  • 普通自動車運転免許(運転は下手なため、お飾りです笑)

<趣味>

  • 登山(低山中心です)

  • 家族で井の頭公園を散歩

最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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