解釈に矛盾あり⁉︎政治資金パーティーの課税関係


1.政治資金パーティーとは

政治資金パーティについて、もちろん私も詳しいわけではない。そんな大人の世界に足を自ら突っ込むんだことはないし(特に応援している政治家はいない)、パーティーに呼ばれるような人物(企業のお偉方など)ではない。
ただ、政治資金パーティの定義は政治資金規正法第8条の2に見つけることができた。

第八条の二 政治資金パーティー対価を徴収して行われる催物で、当該催物の対価に係る収入の金額から当該催物に要する経費の金額を差し引いた残額を当該催物を開催した者又はその者以外の者の政治活動(選挙運動を含む。これらの者が政治団体である場合には、その活動)に関し支出することとされているものをいう。以下同じ。)は、政治団体によつて開催されるようにしなければならない。

政治資金パーティーとは、8条の2を読む限り、
① 対価を徴収して行われる催物であり、
➁ 残った利益は政治活動に使用しなければならないもの
③催物を開催できるのは政治団体だけ
というように解釈するのが妥当であろう。

実際にイメージが湧かない人が大半なので、この動画が参考になると思われる。

【番外編】政治資金パーティー内部に潜入!(※秘書がチャンネルジャック!) (youtube.com)

ここでは、下記のような流れで進んでいる。
① パーティー券を受付で渡して会場入り
➁ 政治家と握手
③ オープニングにオペラ歌手の歌
④ 政治家の挨拶
⑤ 乾杯(このパーティーでは日本酒推しで、多くの日本酒が飲めたようだった)→歓談しながら(企業のお偉方にとっては親睦を深める場でもありそうだ。)の立食(ビュッフェの料理がおいしそうだった)
⑥ お土産をもらって帰宅

イメージがついたところで、実際に課税関係を見ていこうではないか。

2.所得税法編:政治資金パーティーのパーティー券の購入代は寄附金控除の対象となるのか??

結論はならない。国税庁の解説は下記のとおりである。
なお、所得税法において寄附金の全てが寄附金控除の対象となるわけではなく、国が認めた一部の寄附金だけが対象となることには留意いただきたい。(法人税との対比で記載している。)

国税庁HP タックスアンサー No.1154 政治献金と寄附金より

No.1154 政治献金と寄附金|国税庁 (nta.go.jp)

パーティー券を購入した費用は、あくまで「政治資金パーティーの対価として支払うもの」であることから、寄附金には該当しない、とのことだ。あの催物はかなり手が込んでおり、その対価として支払ったお金なのだから、対価性のない寄附金ではない、この説明には説得力がある。

3.法人税法編:政治資金パーティーのパーティー券は、寄附金なのか交際費なのか

政治資金パーティーは、その実態によって交際費又は寄附金のいずれかで処理をされているケースが多い。
① 交際費として処理するケース:企業のお偉方は議員又は出席者と親睦を深めることを目的としてパーティーに参加している場合
➁ 寄附金として処理するケース:パーティー券は購入したものの、参加はせず実質的に金銭の贈与となっている場合

※寄附金における所得税と法人税の違い:共に寄附金に対価性がないことは共通しているが、所得税の寄附金控除は税額を減らす規定であるため、特定寄附金は限定された狭いものになるのに対して、法人税の寄附金の損金不算入は、所得に加算されるものであるため、寄附金を広く捉える傾向がある。

4.消費税法編:政治資金パーティーのパーティー券は不課税一択??

国税庁は昨年の10月から施行されたインボイス制度に伴い、政治資金パーティーとインボイスの対応を公表している。
政治資金パーティーと適格請求書について|国税庁 (nta.go.jp)

結論は、政治資金パーティーは不課税一択。
私はこれを読んだときに、全く理解が追い付かなかった。何故なら整合性があまりにもとれていないからだ。

問はあくまでシンプルであり、下記の2点を簡潔に質問している。
① 政治資金パーティーを開催した際に受領する金銭について、インボイスを交付する必要があるか、
➁ 政治団体はそもそも、適格請求書発行事業者として登録する必要があるか?

答え(スクショします)

国税庁ホームページ 政治資金パーティーと適格請求書について(リンクは上記に貼ってます)


「消費税は、対価を得て行う「資産の譲渡」や「役務の提供」などの取引に課税されます(消費税は取引に課税される、ことを書いている。)。
消費税の課税関係については、各取引の実態に則して判断することとなりますが、政治団体が開催する政治資金パーティーが政治資金を集めることを目的としたものであり(目的を強調)、その政治資金パーティーを開催した際に受領する金銭が資産の譲渡や役務の提供の対価ではない場合には、消費税の課税対象とはなりません(不課税)(??
中略
したがって、政治資金を集めることを目的として政治資金パーティーを開催した際に受領する金銭(不課税)について、適格請求書を交付する必要はありません。」

1行目で「消費税は取引に対して課税」されるとしておきながら
「目的が資金集めであれば、パーティーにおける役務の提供とパーティー券の購入は切り離される」とでも言いたいのだろうか??
つまり、パーティー券の購入は「寄附行為」と「パーティー」とに分割され、寄附行為は不課税ですよとでも言いたいのだろうか??(切り離すのであれば、パーティーでの飲食・お土産代は、参加者が個人の場合には、一時所得、法人の場合には受贈益課税となってしまう。)
もしくは、資金を集めることが目的なことを強調したのは、出資に近い性質と言いたいのだろうか??(これも少々無理があるのではないか。)

最も厳しいのが所得税のタックスアンサーにおいて、政治資金パーティーのパーティー券が寄附金控除の対象とならない理由について、「政治資金パーティーの対価として支払うものであるから、寄附金にはあたりません。」との説明と整合性が取れていない(矛盾が生じている)。

5.おわりに

政治資金団体は、法人でない場合には、人格のない社団なのであろう。
衆議院議員稲田朋美君提出政治団体の法的性格に関する質問に対する答弁書 (shugiin.go.jp)
消費税法上は法人とみなされ、課税資産の譲渡等(非課税取引を除く、資産の譲渡、貸付、役務の提供)を行う場合には、消費税の納税義務者となってしまう。上記の苦しい説明は、それを避けたかったのだと思う。

私は下記の記事のように感情論ではなく、説明の整合性があまりにとれていなかったため、それはまずいのではないかと問題提起をしているだけである。
岸田よ、聞いているか…政治家の資金パーティーに「いますぐ課税」したほうがいい「これだけの理由」(現代ビジネス) - Yahoo!ニュース

やはり、ハッキリと消費税法の非課税規定に追加するのがよいのではないかと思う。
国税庁の方は賢いので、自己矛盾していることは絶対気づいている。矛盾していることを認識しながらそれを言わざる得ない状況を強いるのはあまりにも酷だ。

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