オースにおけるアトラクサの価値についての考察
どうももすぎです。最新のセットである「ファイレクシア:完全なる統一」にて登場した「偉大なる統一者、アトラクサ」をヴィンテージで最も強く使用できるデッキはオースであると考えるのは、日頃からワークショップを使う私には至極当然のことであった。そこで、オースにおけるアトラクサの価値について考察する。
1,オースの流派
オースというデッキを考える場合、大きく分けて2つの構築に分けられる。
1つはコントロールオースで、ティムールカラーで組まれるのが主流である。3色目に赤を選択する最大の理由は、紅蓮破を採用できるからである。
コントロールオースの特徴として、メインから紅蓮破や狼狽の嵐といったソフトカウンターを採用して青系デッキに対する防御力を上げつつ、レンと六番や王冠泥棒、オーコといったレガシーで禁止されるような強力なプレインズウォーカーを軸に戦うデッキである。このデッキにおいてはオースは勝ち手段の1つにすぎないため、墓掘りの檻や封じ込める僧侶といったオース対策カードがそこまで苦にならない。またコントロールデッキではあるがオース1枚で盤面をひっくり返せるような他のPWコントロールや墓荒らしにはない強みもある。一方で、多色のカードを多く採用するためデュアルランドの色と噛み合わなかったり、ドルイドの誓いが無いにも関わらず禁忌の果樹園を使わざるを得ない場面が多く、各種プレインズウォーカーとの相性の悪さも目立つ。
もう1つがコンボオースで、スゥルタイカラーで組まれるのが主流である。
こちらはオースを解決してクリーチャーを踏み倒すのが明確なゴールとなる。また逆説的な結果を採用して大量ドローを狙うものや、死の国からの脱出と思考停止によるコンボを搭載したものもあるが、いずれもサブプランという側面が強く、オースから出てくるクリーチャーが獲得するカードアドバンテージ、戦闘によるライフアドバンテージがゲームに勝つためのウェイトを大きく占めることになる。スゥルタイカラーとするメリットとして、コンボの強い味方である悪魔の教示者や吸血の教示者、ゲーム中盤以降のリカバリーカードであるヨーグモスの意志を採用できることが挙げられる。またコントロールオースに比べて緑や黒のカードが少ないため、青マナさえ出れば何とか動ける場面も多く土地の管理が比較的楽ではある。
2.アトラクサとオース
アトラクサの能力は、7/7飛行、接死、絆魂、警戒、戦場に出たらライブラリートップ10枚を公開し、各カードタイプにつき1枚まで手札に加え、残りをライブラリーの下に無作為に置くというものである。
能力に関して言えばグリセルブランドと鋼の風のスフィンクスを足して1.5で割ったようなものである。
オースにアトラクサを採用する場合におけるコントロールオースとコンボオース、それぞれの運用について考えてみる。
・手札に来た場合の処理
コントロールオースではロングゲームになることが多いため、基本的にはゲームの途中でクリーチャーを引くことを想定しなければならない。アトラクサの場合は青であるため意志の力のコストとして使用できる、またデッキカラーと合わない色マナの要求が2つ(白と黒)なので、果樹園2枚から調達できるため素出しの難易度も果樹園に加えてブラックロータスを要求されるグリセルブランドに比べればかなり低い。一方でコントロールオースのもう1枚の定番クリーチャーであるパルン、ニヴ=ミゼットに比べると、あちらはデュアルランドでほぼ全てのマナを賄えるためニヴに軍配が上がる。しかしアトラクサにはもう1つ利点があり、緑を含むためコントロールオースではサイドボードによく採用される活性の力のコストとして使用できる。コントロールオースではグリーンカウントを意識する必要があるため、このメリットは小さくないと言える。
コンボオースにおいてはオース解決を速やかに目指すためあまりクリーチャーが手札にあることは意識しないが、ゲームプランによってはウルザの物語や各種教示者によりマナアーティファクトを揃えて手札からクリーチャーを素出しするプランをとることもあるため一概に手札にくることがデメリットであるとも言えない。素出しを考えるとデッキカラーと合わない色は1色のみであり、かつそれぞれの色がシングルシンボルであるためグリセルブランドに比べてかなり現実的に唱えることができる。また素出しができない場合でも青であるという点は意志の力のコストになるためグリセルブランドよりも優れている。
・「手札に来た場合の処理」のためのカードの採用について
オースでは手札に来たクリーチャーを出すための手段として、実物提示教育が採用されることがある。またアトラクサに関しては能力の性質上、閃光との相性と悪くない。
コントロールオースでは、対処の為のカードが単体で仕事をしないため基本的には採用されないが、コンボオースでは片方が手札に来た場合に各種教示者によってもう片方を探せるため、採用されることがある。
・戦闘能力について
本体の戦闘スペックについては文句のつけようがない。飛行によって果樹園が与えたトークンにブロックされることもなく、絆魂によってバザー系やワークショップ系のアグロデッキとの殴り合いにも強く、警戒によって相手に殴り負ける隙を与えない。さらに接死によって万が一相手の方がクリーチャーのサイズが大きくても相討ちをとれる。
・場持ちのよさ
場持ちのよさについては、あまり良くないと言える。呪禁やプロテクションのような除去耐性が無いため、剣を鋤にのような汎用的な除去呪文や王冠泥棒、オーコのような能力による実質的な除去は防げない。
さらに、伝説であるためカラカス引っかかっる。
コントロールオースでは不毛の大地や耐え抜くもの、母聖樹があるためあらかじめカラカスを破壊できればこの点は解決できる。
一方コンボオースではカラカスを基本的に処理する気がないため、この伝説であるデメリットは大きい。
また、青であるため紅蓮破によって容易に除去されるため、環境にジェスカイやグリクシスなどの赤をタッチしたデッキが多くなればこの欠点は大きく影響するようになる。この欠点はグリセルブランドにはないものであるため、留意する必要がある。ただし、見方を変えれば「戦場に出た時点でカードアドバンテージが確定するクリーチャー」に対して対青の有効牌である紅蓮破を使わせた、と捉えることもできる。
・戦場に出た時の能力
ライブラリーの上から10枚公開してその中から各カードタイプにつき1枚まで手札に加わるため、土地、ソーサリー、インスタント、アーティファクト、プレインズウォーカーあたりが捲れると考えると5枚前後は手札が増えることになる。
コントロールオースでは、オース解決後も相手にターンを渡さなければならないため盤面を有利にするカードや守るためのカードが必要であり、この能力で不毛の大地や状況に応じた有用なプレインズウォーカーそして、カウンターを手札に加えることが重要になる。ソーサリーはタイムウォークぐらいしか強力なカードがなく、定業や思案は意志の力のコストとしての側面が大きい。アーティファクトは基本的にマナアーティファクトしかないが、オーコで鹿にすることもできる。エンチャントはドルイドの誓いを拾うことで、不要牌を1枚でもライブラリーから減らせる上、サイド後なら活性の力のコストとしても活用できる。しかしコントロールオースにおいてこの能力の1番大きな欠点は、カウンターが1枚しか手札に入らないことである。特に相手がコンボデッキの場合は複数枚のカウンターが必要となる場面が多く、グリセルブランドと比べて明確に弱い点であると言える。
コンボオースにおいては、捲れるカードによっては相手にターンを渡さない、また渡しても次のターンにはほぼ確実に勝てるような状況にできるため、コントロールオースに比べて能力を遥かに強く使えると言える。例えば、土地はコントロールに強いウルザの物語、ソーサリーは修繕や悪魔の教示者やヨーグモスの意志、インスタントはカウンターが不要ならば吸血の教示者、アーティファクトはマナアーティファクト以外にもタイムボルトや多用途の鍵と、直接勝ちに繋がる選択肢が多い。また各種教示者等からタイムウォークを探して再度オースを解決しアトラクサの能力をもう一度使うなり、グリセルブランドを捲るなりすれば容易くコンボパーツを揃えたり逆転が困難な盤面を作ることができる。
・デッキ内のクリーチャーの選択
これについてはまだまだ議論の余地があると考えるが、私はアトラクサを選択する場合はクリーチャーを散らすべきではないと考える。
オースが複数種のクリーチャーを採用するメリットとしては、「リスクの分散」と「役割の分担」ができるからである。
リスクの分散で例えると、戦場に出ることだけを考えるとグリセルブランドは最有力候補であったが、コントロールオースにおいてはニヴと1枚ずつ採用されていた。その最大の理由はグリセルブランドを2枚採用すると、「引いたときに弱い」カードを引くリスク大きくなるため、ニヴの採用によってそのリスクを低減しているからである。(ニヴを採用する理由としてはグリセルと役割が似ていることと、グリセルのドローとシナジーがあるというのもある)
役割の分担で例えると、グリセルブランドとセラの使者を1枚ずつ採用したリストがあり、どちらも引いたときに弱いという欠点はあるものの、グリセルブランドはコントロールやコンボに強く、セラの使者はバザー系やワークショップ系のアグロに強いという明確な役割があるからである。これがもしセラの使者2枚であれば、アグロに対してはオース解決が実質勝ちにはなるが、コンボに対してオースを解決する意味がなくなってしまう。
ここでアトラクサの性質について考えると、カードアドバンテージを取れ、なおかつ戦闘性能が非常に高いためコンボデッキやアグロデッキに対する「役割の分担」が不要である。またマナコストの色シンボルの緩さやピッチスペルのコストとして活用できる点を考慮すると、「リスクの分散」も不要である。
したがって、アトラクサを採用する場合はクリーチャーの種類を散らす必要がないと言える。もちろん、クリーチャーが1種類であるとオース解決によるゲームプランが組みやすいというのもある。ただし、オースでのクリーチャーの選択はメタゲームにも当然左右されるため、カラカスや紅蓮破が環境に多く使われるようになるなどアトラクサに対して向かい風の環境となれば、採用するクリーチャーが変わることも十分に有り得る。
3.まとめ
アトラクサをオースに採用する場合について考察してみたが、オースを使うプレイヤーに対して少しでも手助けになれば幸いである。また、最新セットのパワーカードをヴィンテージでも活躍させてみたいのであれば、ぜひオースを使ってみてほしい所存である。
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