コンプレックス・かわいい♡
もう少しこうだったらいいのに、とか、なんでこうなんだろうと気になってしまう身体の部位やら癖やら。きっと誰しもあるのだろう。「コンプレックス」と言葉にすると何だか重たいが、悩んだことは事実であり、嘘ではない。
昔は目元のほくろが気に入らなくて、シャープペンでほじくった時代もあったが、今ではすっかりチャームポイント(と思えるようになった)になった。時間を経て受容できる部分もあれば、段々と気になってくる部分もある。
生まれた時から共に成長してきた私のおへそは、出臍ではないけれど少し不恰好だ。穴が浅く、中の模様がよく見える。ママは私のその模様を「バラのおへそ」って言って可愛がってくれたから、昔は何も気にならなかった。むしろ美しいおへそなのだと勘違いしていた。人の臍と見比べる機会なんてそうなかったし、小さい子供のお臍にそう違いはなかったと思う。
いつだったかはっきりとは記憶していないが、私のおへそが何か違うと気付いた時、衝撃であった。身体の成長と共に縦長に、深くなっていく皆のおへそは、なんだかとても格好良く見えた。大きくなっても、私の中心にあるバラは、綺麗に咲き誇ったままだった。
痩せて腹筋をつければ変わると考え、ダイエットしたこともあった。微かに縦に伸びたような気もしたが、あまり変化は見られなかった。私のおへそはなんと言っても、圧倒的に浅いのだ。いくらくびれを作っても、おへそのせいで幼児のようなお腹が恥ずかしくて、誰かとお風呂に入るときは守るように隠していた。
おへそをへっこませることは手術以外もう不可能。諦めて、このバラを私は一生抱えていくしかないのだ。いつも目に触れるところでもないし、海にもプールにも行かない出不精な私には関係ないだろう、そう思っていた。今日までは。
臍ピアスを開けた。駅前のクリニックに行き、やたら広い手術室に緊張した。麻酔は一瞬だけチクっと痛んだが、その後は皮膚が引っ張られるような感覚だけで痛みはなく、施術は10分足らずで呆気なく終了した。(朝ごはんをバナナだけにしたのが災いし、お腹の鳴る音を先生と看護師さんに聞かれたのが恥ずかしかった。)
鏡を持ってくださいと言われ、お腹を写すと、何一つ変わらない薔薇の花と、銀色に光る二つの丸がそこにはあった。
じんと目の奥が滲むような、きゅんと胸が締め付けられるような。それは圧倒的、かわいい。いつもと同じ不恰好なお腹が、とびきり愛おしく思えてくる。
身体に穴が一つ二つ増えたことで、私はこんなにも幸福になれるのか、と感動してしまった。ルンルンで上機嫌の私は、確かに戦闘力が上がっていた。いつでも一刻も早く家に帰りたい私が、一人インドカレー屋に行き、大きなナンを完食し、シーシャバーデビューを果たしたのだった。
人生初めての経験をしたら、もう一つや二つ、経験したくなるものなのだろうか。自分のフットワークの軽さに驚いた。初めての水タバコは美味しかった。ライチのフレーバーにレモン、それからアイス。煙の吐き方をお姉さんに教えてもらった。揺れる白い雲を見つめながら、かわいいお腹のことばかり考えていた。
コンプレックスの受け止め方って難しい。そのままを愛せるようになるには、時間もかかるし精神力もいる。それならばいっそ消してしまうことも正解だと思うし、諦めることも然り、それは人によって様々なのだと思う。
価値観は変化するし、なりたい自分も変わっていく。だからいつか、今は醜いと感じてしまう部分も、明日はかわいいと思えるかもしれない。
なりたい理想像が毎日変わる。私は、あなたもあの子も可愛いと思うの。みんな天才的に可愛いし、誰かの理想だよ。毎日毎日あなたになりたいくらい、可愛いって思ってる。
でも皆、きっとないものねだりだから、分かりあうことも難しい。悩みも人それぞれ、大きさもそれぞれ、誰も大っぴらに言わないだけで。
だけどきっと、今の自分が正解。今の自分が可愛いと思える人生が正解、でいいと私は思ってる。だから未来の私がへそのピアスに後悔したとしても、今の私はこんなに多幸感で満ちているので大丈夫。それでも跡が残るものは、慎重に、だけれど。
明日も明後日も、私とあなたが一番かわいくいられますように、願いを込めて。はやく絆創膏を剥がして、お腹を愛でたい、私より。
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