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無力であることを知り、そして無知を恥じた

 暗殺も暴力もきっと他人事なんだ。

 街の騒めきを肌で感じた、午後2時。献血を呼びかける声が耳を刺す。決して目に見えるような情報ではなく、気とか気配といった感覚的な、不確かで信じ難い、故に説得力のあるそれだ。その騒めきが、自分を含めたそこに居る人々がどこかで感じている、そこ知れぬ不安や恐怖、悲しみから来ているものだと気づく。

 ストーリーは恐ろしいほど正常で、タイムラインは異常だった。南国の景色、爆発音と人々の悲鳴。その温度差に混乱する。

 誰かの日常と無関係の現実。地位名声の裏側にある戦争や紛争。生まれた命と消えていく灯火。それが世界の真理、今に始まった訳ではない。ただ僕が日々を淡々と消化しているうちに、いつの間にか忘れてしまっていたこと そう再確認する。

 僕は義務教育をとっくに終えた。だがしかしこの先も、何かを知り、学ぶことを辞めてはならないのだと、そう思った。無知は恥だ、そして時に武器になり得るのだ。そう深く胸に刻むのだ。

 誰の日常も否定せず、君の幸せを変わらず尊く思う。だけれども、完全な悪が存在しない世界に、一面の善悪だけで人が裁かれる現実に、到底抗うことができない大きな力に、きっとこの先も何度も絶望するのだろう。「誰かにとっての正義」が僕には生涯わかる気がしない。

 それでも、思考を停止させない。目を向けなくてはいけない。ただ今僕にできることは、日常と、生活と、誰かが向き合っている現実 それぞれが共存している事実を心に留め、忘れないことだ。

#エッセイ





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