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最近のこと

 時は忙しなく進む。世間でいう季節はもう初夏らしい。部屋のカレンダーは未だ5月。半袖短パンに薄手の布団で眠りにつける、心地良い温度で雲は流れていく。上京して3年目、原付バイクに跨って2年目。周りに居る人も部屋にある物も、今ある生活に溶け込んで、私の一部になって、少し消化されて。

 ちょっと前に部屋を掃除した。大きなゴミ袋に思い出のがらくたを詰めた。棚を作って紙袋に閉まっていた本をそこに並べた。やっと、この部屋に春が来た気がした。部屋は整頓されている方がいいし、お風呂には入った方がいい。できたら自炊もした方がいい。身の回りのことが整えば、なんとなく心も整う気がしている。

 毎日はできないし、朝起きて仕事に行って夜眠るだけで精一杯だし、できる時だけでいいんだ。今日だって雨だから、私は1日中ベッドでゴロゴロしてた。五月病とか感じる暇もなく過ぎ去った日々、きっと充実していたんだと振り返って思う。好きな人に会ったり、実家に帰ったり、地元の親友と遊んだり、映画を見たり。

 余計なことを考えて落ちてしまう時って必ずあって、それはいつも何もない時間なように思う。だからオーバーワークでも暇な時間がないことは、良かったのかもしれない。かといってこうして何か書いたり、部屋を掃除したりする時間を、私はずっと欲していたのだ、とも思うし。好きな人たちと過ごすことで保っていた精神状態を、ひとり時間の今、守るべく立ち向かうのは自分自身でしかない。

 とは言え、今の私を強く生かしてくれているのは、新しく増えた家族の存在だ。今私の部屋には、1匹のトカゲの生命がうごめいている。彼と生活する決心をして(正確にはまだ性別が分からない、が、なんとなく男の子な気がしている)私は荒れ狂った部屋を綺麗にし、彼のお家を準備して、まだ見ぬ家族をお迎えに行くと、とんとん拍子に事が進んだ。この間3日間ほど。いつも締め切りギリギリを駆け抜ける私が、ごくたまに見せるこの行動力と決断の速さは、なかなか興味深いと自分で思う。

 あっという間に彼との生活が決まり始まったものの、一時的な衝動とか、生半可な気持ちではない。1日中彼のことを考えて、夢にまで見るほどで。彼が来てからというもの、私はなるだけ早寝早起きをして、仕事が終われば直帰して、部屋を清潔に保ち、餌用のコオロギを飼育している。

 止まっていた時間を正常に動かさなくては。そして、しっかりしなくてはと思う。「私はこの子のパパ・ママになります。」というショップでもらったチェックシート。付けたレ点を心に深く刻んでいる。

 未知の世界を教えてくれるこの小さな命が、今私の生きる灯火だ。まだたくさんの知らないことがある、初めての経験がある、そんな希望で満ちている世界を教えてくれたのは君です。

 ”生”を肌で感じる君との時間、大切にしたいと思っている。トカゲとの生活を始めて1年目。ピカピカの1年生。まだまだこれから、知らない事が溢れている世界で生きていける喜びを噛み締めて。君がおうちに来てから毎日幸せです。

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