Une Semaine à Zazie Films 週刊ザジ通信【3月24日㈬~3月30日㈫】
弊社と縁の深い監督、と言って筆頭にあげられるのは、やっぱりアニエス・ヴァルダ監督。3月29日は、そのヴァルダ監督が亡くなって丸2年の命日でした。2019年3月29日のことは、当noteのザジフィルムズの30年を振り返る連載“Histoire De Zazie Films”の6回目で詳しく書きました。よろしければ読んでみて下さい。また連載の19回目にもヴァルダ監督との、買付けの際のやり取り(『顔たち、ところどころ』が高過ぎて手が届かなかった話など…)の思い出などを書いていますので、こちらももしご興味ございましたら。
話は突然変わります。私事で大変恐縮なのですが30代の頃から私の趣味はマラソン。コロナ禍でほとんどの大会が中止になっているこの一年ですが、27日の土曜から28日の日曜に渡って、大江戸ナイトランという大会が開催され、出走してきました。夜22時に埼玉の川越をスタートして、往路は川越街道を延々池袋方面に向かって下り、新宿都庁~東京タワー~皇居~日本橋~スカイツリー~浅草∼本郷・東大赤門~赤羽~高島平を周り、復路は荒川に出て、河川敷を上り川越バイパスに出て、ふたたび川越目指して走る、という全長115キロのレース。制限時間は19時間です。
夜通し走るので体はもちろんツラいですし、行けども行けどもゴールに近づかないので精神的にもしんどいのですが、子供の頃は許されなかった真夜中の街探検を堂々とやっているような非日常感があって、無事ゴールすると「あぁ、楽しかった!」と辛さよりも楽しさのほうが勝ってしまって、また翌年出てしまいます(3度目の出走でした)。
ヴァルダ監督のドキュメンタリーの代表作の一本『落穂拾い』(’00)の後半に登場する、市場で野菜や果物を拾って食べ、夜は移民たちにボランティアでフランス語を教える青年アランさんは、登場するキャラクターの中でも印象的な1人ですが、『落穂拾い』の続編『落穂拾い・二年後』を観ると、そのアランさんも趣味がマラソンというのが分かります(現在IVCさんから発売中『落穂拾い』のブルーレイの特典映像として、『落穂拾い・二年後』も収録されています)。
『落穂拾い・二年後』の中には、アランさんがパリマラソンに出るシーンがあり(10度目だそう)、ヴァルダ監督がマラソンEXPO(大会前日、ゼッケンを受け取る会場)でのアランさんの姿を追ったり、大会当日のシャンゼリゼ大通りのスタート前の模様や、コース中盤のヴァンセンヌの森を通過する姿を捕らえたりしていて、ランナーとして観ても(そんなふうに観る人はそういないかもしれませんが。笑)、なかなか興味深い作品に仕上がっています。ヴァルダ監督の興味が、スタート時にランナーたちに脱ぎ捨てられていく防寒具と、ランナーが走り去った後にそれを拾う人々に向けられるのは、さすがヴァルダ!という感じ。ゴール時、シューズに装着されているタイムを読み取るチップに目が向くのもヴァルダ監督ならでしょう。
では、私と、ヴァルダ監督と、マラソン。この三題に接点はあるのか?というと、“接点”というほどのことはないですが、私が監督とお会いした際、世間話でマラソンの話をして、ちょうど出たばかりの大会(“チャレンジ富士五湖”というやはり118キロのウルトラマラソン)の写真を見せたら、「この写真のデータを寄越しなさい」と言われて、後に送ったことぐらいでしょうか。“富士山と桜と走る私”みたいな、なかなか風情のある写真だったので、次回作にでも使うつもりだろうか?(どんな次回作だ?笑)と、ちょっと本気で思ったのですが、ただコレクションしたかっただけのようで、亡くなった後、ダゲール街の事務所を訪ねた時も、プリントアウトした私の写真が壁に貼ってあった、ということもありませんでした(笑)。
もうひとつ、接点といえば接点なのは、長年ヴァルダ監督のプロダクション、シネタマリスでアシスタントを務めた後(『顔たち、ところどころ』のプロデュースも)、今は独立してプロダクションを立ち上げた女性が、毎年4月に行われるパリマラソンで、仲間たちとバンドを組んで、沿道で演奏しながら応援してくれていることですが、私も何度か出ている大会ですが、タイミングが合わず、まだコース上で会えたことがありません。コロナ禍が去って、無事に次のパリマラソンが開催された暁には、彼女の声援を受けて走っていみたい、と思っています。
最後になってしまいましたが、現在目黒シネマでは、2月のヴァルダ監督の特集上映に続いて、BONJOUR Agnes Varda Vol.2と題して、『幸福~しあわせ∼』と『ジャック・ドゥミの少年期』を2本立てで上映中。明後日、2日の金曜日までの上映となります。お近くにお住まいの方、ぜひ足をお運びください!
尚、ついでにお伝えしておきますと、目黒シネマでは翌3日からも同じくザジフィルムズの2本!『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』と『ハッピー・オールド・イヤー』の、チュティモン・ジョンジャルーンスックジン2本立てです!!こちらもぜひ\(^o^)/
texte de Daisuke SHIMURA