今キャンプ場の経営は儲かるのか
1月17日の日経新聞電子版にこのようなニュースがありました。
アウトドアギアメーカーのスノーピーク社がキャンプ場を運営する自治体向けに、運営支援事業を本格開始するということです。スノーピーク社は本社を構える三条市を始めとして各地にキャンプフィールドを展開しています。これらで培ったノウハウを元にコンサル事業をおこなっていくようです。
鳥取市にもいくつかキャンプ場があり、市の管轄になっているものがほとんどで、指定管理業者が管理をおこなっているという状況なのですが、正直全国的に有名なキャンプ場と比較すると行ってみたいと思わせる魅力には雲泥の差があり、ただキャンプできる場所があるだけ、というのが実情。そこでスノーピーク社がキャンプ場コンサル事業を始めた背景に何があるのか少し考察してみました。
キャンプ人口とキャンプ場の推移
キャンプ人口:
2000年代に入り減少傾向だったものの、2013年から回復傾向にあるようです。きっかけは女性誌でキャンプやアウドドアのアクティビティが特集されることが増えたことや、アウトドアファッション、グランピングなどのブームも影響しているようです。
2013年〜2015年のキャンプ人口推移
日本オートキャンプ協会資料より
■2013年 750万人
キャンパー平均年齢41.5歳
40–49 37.7%
30-39 37.1%
同行者 家族 63.2%
■2014年 780万人
キャンパー平均年齢41.4歳
20代 8.4%
30代 35%
40代 36.7%
50代 11.3%
■2015年 810万人
キャンパー平均年齢42.4歳
20代 5.6%
30代 31.2%
40代 42.8%
50代 12.5%
グラフ化してみると、2014年に若者世代でぐぐっと増加したものの翌年で少し落ち着き、40代以降が増加しています。2015年10月に星のや富士がオープンしており、2016年はグランピングというワードを見る機会もそれに伴いファッション誌や情報サイトで増えたので、2016年はまた20,30代の若者が増えているかもしれません。
キャンプ場:
こちらも日本オートキャンプ協会資料からの引用になりますが、2014年、2015年と比較するとキャンプ人口の増加に反比例して若干キャンプ場の数は減少しているようです。
2014年 1,291箇所
2015年 1,288箇所
ざっくり計算すると2015年は1施設あたり6288人に利用されたことになります。
キャンプ場経営の収支は?
1施設あたりの平均年間利用者数が出たところで疑問に思うのは「儲かるのだろうか?」です。
1施設の利用者約6,000人の構成として3人1組とします。お一人様や家族など様々だと思いますが、平均3人とします。すると2,000組が年間に利用していることとなり、テントサイトの利用料を平均4,000円とすると800万円がテントサイトの年間売上という計算ができます。スペース貸しのキャンプ場の場合、ゴミの収集、スペースの掃除をおこなう人件費と水道、電気などの公共料金がコストでしょうか。これに加えて、トレーラーハウスや常設テントの場合1万円以上の利用料を設定できるので、売上的には施設の数にもよりますが1000万円以上になりそうです。
また別の角度からの数字も日本オートキャンプ協会が出しています。まず平均稼働率は13.5%、収支状況は黒字、トントンをあわせて69.8%。13.5%の稼働率は高いとは言えませんが、約7割が経営出来ている状況です。収益源は区画の利用代、物販やレンタル品の代金が考えられます。利用代金の相場は1区画あたりシーズン毎の価格差をならして上の計算と同じく4,000円とします。これに加えて、ロッジ、トレーラーハウス、設置済みテントの利用代はまた別で1万円〜2万円以上まで幅が広いですが、通常の温泉旅館に滞在する位の金額はかかりますね。100区画あるフリーサイトだけのキャンプ場で考えると、4,000円×100×0.135×365=1,971万円です。一泊平均1万円のロッジ等が20室あるとしたら、1万円×20×0.135××365=985万5,000円。ここから人件費や管理コストなどを差し引くことになります。おそらく清掃やwebサイトの維持は業者に委託してプロパーの社員よりもコストを下げているでしょう。
いずれにせよ、これだけで見るとビジネス的にはあまり魅力的じゃないですね。※通年営業している場合の計算です
日本一のキャンプ場スイートグラスの場合
ここで軽井沢にあるSweet Grass というキャンプ場のインタビューを見つけたのですが、こちらは年間7万人が来場し、フリーサイトに加えて46棟のコテージなどが併設されているようです。
日本一のキャンプ場の経営者が語る、自然から「新産業」を創る方法
コテージなどの平均宿泊料金は3万円位。テントサイトの方もタープが常設されていたり、調理場が付いている等、付加価値をつけて価格を上げています。ただのスペースは3000円平均ですが、テントサイト全体の平均単価は5000円位になるのではないでしょうか。スイートグラスは全国的に人気のあるキャンプ場なので、常に先まで予約が入っている状態です。稼働率も80%位ありそうです。46棟のコテージが3万円/泊で8割稼働しているとすると、年間4億円超の売上となります。このレベルですとやり甲斐ありますね。※同じく通年営業した場合の試算です。実際は冬場の稼働は下がることが予想されるので最大でこの位、と考えるのが妥当かと思います。
利用料以外のビジネスモデルをつくることが重要
いままで試算したところで、キャンプ場のビジネスは1000万〜数億円規模までやりようによっては魅力的とも言えますが、場所の利用料・宿泊料以外のビジネスが近年盛り上がっているように感じます。
たとえば千葉の市原に一番星ヴィレッジというキャンプ場があります。毎年4月〜9月の期間限定で運営されているキャンプ場ですが、こちらはコテージなどはなく、ただの広場です。強いていうならばシンボル的にツリーハウスが1棟ありますが、遊具レベルのものです。このキャンプ場はGWや夏休み期間中にイベントを開催しており、日帰り客の集客に比較的力を入れているように見受けられます。毎年シーズンの終わりには音楽フェスティバルも開催しています。場所の運営維持コストをギリギリまで下げて、イベント集客で売上を上げるビジネスモデルは他のキャンプ場にも適用できますし、今後ますます増えていきそうな気配です。
まとめ
冒頭のスノーピーク社のコンサル事業の狙いに戻ります。キャンプ場というのはまだまだビジネス化のポテンシャルが高いと言えます。特に地方自治体の運営するキャンプ場は利用料も無料のところが多く、場所を提供しているだけのものが多いです。自然に富む魅力的な立地にある場合、コテージの設置やカフェ、手ぶらBBQプランの導入、イベント開催などにより売上を何十倍にも増やせる可能性があります。手付かずのビジネスチャンスが地方のキャンプ場には眠っているということではないでしょうか。
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