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【落語deざわざわ #第三席】『芝浜』に見る、エンゲージメント

【落語deざわざわ】とは、現代のさまざまな諸問題を古典落語の演目にこじつけて論じるコンテンツです。基本的に「若い衆(わかいし)」と「横丁のご隠居さん」との会話スタイルで展開(例外もあります)しますが、内容はいたって無責任ゆえ気軽な読み物(時々深いかも)としてお楽しみください。

年末といえば『芝浜』ですな! ということで、第三席は『芝浜』です。

あらすじ:
棒手振(ぼてふり)の魚屋、魚勝は酒好きで仕事よりも酒を優先してしまう怠け者でした。
ある朝、仕入れに向かった芝の浜で偶然、財布を拾います。中を見てみると、そこには大金が・・・
大金を手に入れた魚勝は、浮かれて酒を飲み仲間と遊びほうけます。
しかし、翌朝起きると財布はなくなっていました。慌てた魚勝に、おかみさんは「全部、夢だったのよ」と告げます。
おかみさんの言葉にショックを受けた魚勝は、これまでの自分を変えようと決意します。酒を断ち、懸命に働き、やがて店を構え奉公人を雇い、裕福な生活を送るようになります。
時は経ち・・・3年後の大晦日の夜。
おかみさんは魚勝の改心を見届けて安堵し、恐る恐る自分が財布を隠していたことを打ち明けます。魚勝は怒るどころか、おかみさんの深い愛情に感謝します。
そして・・・安堵したおかみさんは、魚勝に「飲んじゃいなさいよ」と、お酒を出しますが・・・
魚勝は手を止め、「よそう。また夢になるといけねぇ」とお酒を飲みませんでした。
こうして夫婦は新しい年を迎えました。
※「芝浜」といえば、故三代目桂三木助師匠の代名詞と言われますが、時代的にリアルなところでは、故立川談志師匠の高座でしょうか。他、さまざまな師匠方が高座にかけています。
ライブで観た中では、柳家権太楼師匠の「芝浜」も良かったです。泣けました。
五街道雲助師匠の「芝浜」では、おかみさんがとてもクールで、これはこれで味わい深かったです。

若い衆:
ご隠居ぅ・・・愛、ですねぇ、愛。

横丁のご隠居:
泣くな泣くな。
お前さんもお初っちゃんと、こんな年末年始を過ごしたいか?

若い衆:
そりゃぁ、そうですよぅ。
って、ご隠居!
化け物使い』とか『長屋の花見』の時みたいに、今回はチックリ言わないんすか?

横丁のご隠居:
そりゃぁ、まぁ、年の瀬も迫ってきてるしな。
こう見えて、わしも忙しいんじゃよ。
それにな、年末といえば“芝浜”、“芝浜”といえば年末じゃろう。
ご存じの方も多かろうが、【落語deざわざわ】としてはやはり、取り上げておかんとな。

若い衆:
そんなもんすかねぇ。
でも、ご隠居〜。
この夫婦の絆は羨ましいぐらい深いですね!

横丁のご隠居:
絆、ときたか・・・ならば聞くがの、
お前さん、エンゲージメントって知ってるか?

若い衆:
はぁ・・・
テンプレート的に「エンゲージメントの向上を目指す」なんて、よく言われるやつっすね。

横丁のご隠居:
おぉ、よく知ってたの。

若い衆:
“ざわざわ”の皆んなも「安易に使ってない? 「エンゲージメント」と「一体感の醸成」」で、何かざわざわしてましたからね。

横丁のご隠居:
その記事も読んどったか。
よしよし。

若い衆:
あれれ・・・
もしかして、やっぱりチックリするんですか? ご隠居〜。

横丁のご隠居:
まぁ、しかしな、“ざわざわ”の連中がざわざわしとったのは、
組織におけるエンゲージメントの話じゃがの。

若い衆:
でも、ご隠居。
エンゲージメントの根本は人と人の絆にあると思うんすけどね。

横丁のご隠居:
ほぉ〜。
言うようになったの、お前さんも。
しかしの〜、それじゃぁ根本とは言えんな。
表面だけなぞって、エンゲージメントエンゲージメント言ってるだけじゃな。

若い衆:
えぇ〜、またそれっすか?

横丁のご隠居:
この魚勝夫婦を見てみな。
この二人の絆の根本には何がある? え?

若い衆:
え〜っとですね・・・
まず、魚勝は本当は財布を拾ったのにおかみさんを信じて、
酒を絶って、一生懸命働きましたよね。

横丁のご隠居:
そうじゃの。

若い衆:
んで・・・
おかみさんは魚勝が心を入れ替えてくれるのを信じて、
嘘をつき通しましたよね。

横丁のご隠居:
そうじゃな。
あらすじには書いてないが、
おかみさんが、心を入れ替えた魚勝を河岸に送り出すとこなんざ、
名場面中の名場面じゃな。

若い衆:
そうでなくて! 何が言いたいんすか?

横丁のご隠居:
お前さん今、二人に共通する大事なことを言っとったぞ。
分かるかな?

若い衆:
え〜?
えっと・・・・・・あ!
魚勝はおかみさんを信じて・・・
んで、おかみさんは魚勝を信じて・・・
っと。

横丁のご隠居:
そうじゃな。
そこには信頼関係があったの。
つまりな、エンゲージメントエンゲージメント言う前に信頼関係がなきゃぁならんのじゃ。
人と人との間に信頼関係が築かれてなければ絆は生まれんのじゃ。
人と組織、組織と人も同じじゃな。

若い衆:
あ!
ってことは、信頼関係が築かれていれば、自然と絆は生まれるってことっすね!

横丁のご隠居:
まぁ、そういうことじゃな。
お前さんも分かるようになってきたの。

若い衆:
へへ・・・ありやとやんす。
ところで、ご隠居。
今回は炎上ネタはなかったっすね。

横丁のご隠居:
年末じゃて、わしも忙しいんじゃよ。
お前さんも、お初っちゃんと初詣の約束でもしておいでなよ。
そんでな、お初っちゃんとな、しっかりと信頼関係を築くんじゃな。

若い衆:
もう約束しましたよ〜!

横丁のご隠居:
お! なかなかやりおるのぉ〜。
来年が楽しみじゃな。

若い衆:
そんじゃご隠居、良いお年を!

横丁のご隠居:
はいはい、お前さんもな!

まとめ:前田


この記事について

“ざわざわ”は、ツールの使い方や社内コミュニケーションの最適解を教え合う場ではありません。道具が多少足りなくても、できることはないか?姿勢や考え方のようなものを「実務」と「経営」の両面から語り合い、共有する場ですが、【落語deざわざわ】におきましては、戯言に近しい話がほとんどですので、単なる「ボケ」とお考えいただいても一向に構いませんし、これを機に落語沼にハマっていただいても構いません。ただし、日常生活に支障を来たすほど寄席に通ってしまうようになっても、“ざわざわ”では一切責任を負いません。

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